第31話 デス指スマ
デス指スマ。指スマとは少しルールが違う。
本来指スマは、プレイヤーが立てた指の本数と、宣告した数字が一致すれば、手を一つ下げることができる。二つ消せたら抜けられて、勝利だ。
しかし、デス指スマは、指の本数と宣告した数字が揃ったその瞬間、死ぬと言うルール。
よって、自分の親指の合計本数以下の数字を宣告することはできず、また、プレイヤーの親指の合計本数より上の数字も宣告できない。
「ああ、当然、これから指を増やすのも禁止だ。今ある手だけで勝負しろ。元から親指がたくさんあるやつは、それは使ってもよし……わかったか?」
和泉以外のプレイヤーが頷く。俺も頷いて、両手を前に出す。この緊張感、指スマでしか味わえない。
「指スマ……十二!!!」
もちろん、和泉以外の連中は、立てる親指の本数を宣告前に悟られるようなヘマなしない。
立った親指の数は……十一! ひゅぅ! すごいスリルだ!
続いては手マ○スライムその2の番だ。
「ユビスマ……ニジュウ!」
立った指の数は……20だ!!
「テマ!?!?!?」
すると、そのスライムの身体が弾け飛んだ。
おいおい、早速場が動きやがった!! こりゃ、とんでもない戦いになるぞ!!!
”!?”
”え!?”
”爆発四散した!?”
”おいおい、マジでデスしてんじゃねぇか!?!?”
”それじゃああの魔道具、マジであのことわりの天秤なのか!?!?!?”
”二階堂よりよっぽど危険なもんが出てきてて草www”
”これ、二階堂に奪われたらめちゃくちゃヤバない?”
”いや、この魔道具はとんでもない魔力量を使うから個人じゃ運用はできない”
”拳大の魔石で一万個いるらしいからな”
”いやでも、実際に使えてんじゃん!? なんで!?”
”わからん!!!!”
”え、つまり偽善者ニキもデス指スマで負けたら爆発四散しちゃう…ってコト!?”
”¥78800 偽善者ニキマジでやめて! お願いだから普通に戦って!”
”武蔵野純一アホ! 武蔵野純一アホ!”
「ほら、和泉、お前の順番だ!! とっとと宣告しろ!!!」
「え? え? え? え? ナナも参加してたの!?」
和泉は混乱しながらも、皆のサッサとしろよという苛立ちの視線を感じてか、恐る恐る「ゆ、指スマ、24!」と言う……セーフ。
”ああっ”
”よかったぁ……”
”あぶなぁ!?!?”
”一瞬マジでドキッとした!!!”
”てかなんでナナちゃんがこんなデスゲームに参加しなくちゃいけないの!?”
”まぁ、デスゲームって基本強制的に参加させられるもんだからな……”
”それはそうwww進んで参加するやつなんかいねぇよwww”
”偽善者ニキはノリノリなんですが……”
”偽善者ニキは主催者だから……”
”主催者が参加するデスゲームってなんだよwww”
”そんな主催者なら好感持てるわwww”
”いや笑ってる場合じゃねぇ!! 普通にやったら余裕で勝てんのに、なんでわざわざデスゲームなんかにしてんの!?”
”お前偽善者ニキ配信初めてか? 偽善者ニキはこんなの当たり前だからさ、力抜けよ。俺たちが緊張でぶっ倒れた時、お前が見届けんだからな”
”玄人ぶってると思ったらぶっ倒れるんかいwww”
”まぁ、偽善者ニキの無茶苦茶さは、どんだけ配信見ようが慣れるもんじゃないからなwww”
”¥78800 もう仕方ないから、偽善者ニキ絶対勝ってくれ!!”
続けて、他のスライムどももセーフが連続する。本来、そんな簡単に決着がつくゲームじゃないからな。
「さてさて……指スマ、8!!!」
指を見る……八本だ!!! やばっ!!!
俺の身体が爆発する、その瞬間。
ひゅん。
俺は、一匹のスライムの手をもぎ取っていた。
「テマアアアアアアアッッッ!?!?!?」
おかげで、指の数が減り、俺は無事生き残ることに成功したのだった。
”うわあああああああああ、終わったああああああああああ……あれ?”
”あれ、指、八本、だったよな?”
”え、一匹のスライムの腕が消えてない!?”
”あ、本当だ!”
”あ、もしかしてだけど、偽善者ニキが切ったとか!?”
”はいスーパースローで見ました!! 完全アウトです!!”
”うわぁ、マジでやってる!?!?”
”はぁ!? 何それずっこい!”
”やっぱ全然好感持てない!!!”
”武蔵野純一卑劣様! 武蔵野純一卑劣様!”
”¥8000 いや、これでこそ偽善者ニキだよ!”
”¥78800 クズすぎて好き♡”
”¥50000 避難民を救うために卑怯な手も辞さない偽善者ニキマジカッケェ!!!”
”¥2000 完全に自分が楽しむためだけにやってる感じするけどなwww”
「おいおい、何言ってんだ。こっからがデス指スマの面白いところだろうが……和泉、もういい! 引っ込んでろ!! デス指スマの邪魔してんじゃねぇぞ!!!」
「ひぇっ、は、はいっ!!!!」
和泉が離脱したことにより、手マ○スライムその3に順番が回る。手マ○スライムその3はダラダラと汗にも見える体液を流しながら、叫んだ。
「ゆ、ゆ、ゆ、ユビスマ……98!!!」
立った指の数は79。俺は即座に飛び回り、立っていないスライムどもの指を手で掴み、無理やり立たせる。98本にするまで、当然0.01秒もかからない。
「テマァ?!?!?!?!」
結果、スライムは爆発四散。
よく考えたら、こっちの方がよっぽど体力を使いそうだ。まぁ、楽しいからいいか!
「テマァ?!?!?!?!」
「テマァァァァ!?!?!?!!?!?!?」
「テマァァァァァァンッ?!?!?!?!
「いやこれおかしくね!?!?!??!」
最後のスライムは随分と日本語が堪能なのには驚いたが、引っかかったのはそのくらいだ。
結果、スライムどもは俺に完全敗北し、全匹爆発四散したのだった。
「ったく、これだから指スマは最高だぜ!!!」
”wwww”
”wwwwww”
”wwwwwwwww”
”草www”
”なんじゃこれwwwwww”
”これは酷いwwww”
”最低過ぎるわwww”
”偽善者ニキ、側から見てる分にはおもろいけど、絶対に友達にはなりたくねぇwww”
”¥78800 何はともあれスライム撃退ないすぅ!”
”¥42000 B級探索者の赤松を瞬殺したスライムの群れを全滅させたのはマジでデカい!!”
”¥51000 ヤバい、二階堂の勢いが全然止まらん! 偽善者ニキ今すぐ助けに行ってくれ!”
”¥78800 偽善者ニキクズなとこも含めて愛してる♡”
”武蔵野純一最強! 武蔵野純一最強!”
「さて、結構熱中しちゃったし、竜胆でも助けに行くか……あれ?」
『ことわりの天秤』がボロボロと崩れ落ちていく。大方、俺に死を強制した負担がたたったのだろう。ま、今の今まで存在を忘れてたくらいだし、別にいっか。
”え?”
”おい、有害指定魔道具がぶっ壊れた!?!?”
”これ、壊せないから国が厳重に保管してたってやつだよな!?!?”
”いやこれ、ある意味暗澹龍ぶっ殺すよりすげぇことしてないか!?!?”
”これ偽善者ニキどうなっちゃうんだ!? 世界ダンジョン機構から褒められるのか!? それとも国際指名手配!?”
”少なくとも独裁者とかヤバげな宗教団体からは恨まれそう”
”¥78800 いやこれマジですげえよ!? なんなら暗澹龍討伐よりも全然すげぇ!!!!”
”¥60000 偽善者ニキ、とんでもないことサラッとしでかすから頭バグるわwwwww”
”¥78800 マジで普通の価値観で見てたら頭追いつかないよなwww”
”¥78800 それが偽善者ニキ配信のオモロイところよwwww”
”¥78800 これで自分の配信チャンネル持たないのって勿体なすぎんだろwwww”
「ま、いいか。よく考えたら俺の部屋にはデカすぎるし……っと」
その時、避難民が逃げていった方から、魔物の気配を察知。
手マ○スライムで間違いないが、あっちは行き止まりのはずだが、どうやって回り込んだ?
……なるほど、スライムの柔軟な身体なら、岩壁の割れ目にも入ることができる。
俺と指スマに興じたスライムたちが異様な殺気を放っていたのは、回り込み隊の連中の気配を誤魔化すためだったのか。
曲がり角から、スライムたちが現れた。
”え?”
”おい”
”は?”
”なんだよこれ”
”マジ”
”嘘”
”ヤバい”
先方組と比べると大きく強い個体。そして何よりの違いは、その身体の中に先ほど逃げていった避難民を保持しているということだ。
「たぅ、ごけ……」
スライムの身体から、必死にもがいて顔を出したのは先輩だ。その口の奥に、スライムの核が光っているのを見た。
「なるほど、人質ってわけね……」
スライムを殺すにはあの核を破壊しないといけないが、その核を破壊するには、先輩もまとめて破壊しなくちゃいけないもんなぁ。
「はてさて、どうしたもんか……」
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