第29話 ダンジョン緊急事態発令


”え?”

”は?”

”したの!?!?”

”嘘”

”浮気じゃん”

”ああ、唐突なNTRに脳が破壊される……”

”手○ンはしたってことは、チ○ポ挿入れてはないってことだよな!? 暁は処女のままなんだよな!?”

”手○ンしたのにチ○ポ挿入れてないってどんな状況だよ……”

”44444444444444”

”偽善者ニキ殺す……と思ったけど俺に殺せるわけないから俺が死ぬ”

”懸命な判断で草www”

”聖女を堕天させたあなたには必ず神罰が与えられます”

”¥78800 お願いします。どうかその時のハ◯撮りを売ってください”

”¥78800 僕もお願いします”

”¥78800 どうしよう、俺、暁のファンなのに、今すごい勃○してる。そして、暁を寝とった男に金を貢いでることにものすごく興奮してる”

”¥78800 とんでもない性癖のやつ出てきててワロタwww偽善者ニキ様、どうぞお納めくださいボキ”

”¥78800 語尾で勃○すんな”

”¥78800 もうなんでもいいからハ○撮りはよ”

”¥78800 じゃあ俺の一人ハ○撮りでもいい?”

”¥78800 一人ハ○撮りってなんだよwwww”

”¥78800 おっさんのオ○ニー動画なんて誰が見たいんだよ”

”¥78800 あ、一応男子大学生です”

”¥78800 くれ”

”¥78800 おいwww”



「何普通の顔してんの!? 浮気じゃんそれ!!」


 ヒステリックに怒鳴り、俺の胸ぐらを掴もうとして、布がないことに気がついて、恐る恐ると言った様子で俺のパンツを掴んだ和泉。怒る時になんかを掴まなきゃいけないってわけじゃないぞ?


「いや。それは違うだろ。竜胆に手マ○したのはお前と別れた後……元から付き合っちゃいなかったんだが、ともかく、問題ないだろ?」


「ある!!! 私もまだされたことないのに!!」


「おお……」


 なんかすごく怒り出したなぁ……そんなことよりと、二階堂の配信に視線を移す。



”おいおいおいおい!? どうなってんだこれ!?”

”二階堂の指がうねうね伸び始めた!?”

”きっしょ”

”どんな魔法だよ”

”え?”

”ドラゴン!?”

”なんで一階層にドラゴンが!?”

”これ、二階堂が生み出してんのか!?”

”はぁ!? なんで二階堂がドラゴン生み出せるんだよ!?”

”ひとまずこれって本当に二階堂なのか? 二階堂の形したバケモンじゃね!?”

”これ、やばいよ……”

”おいおいおいおいおいおい!?”

”なんだよこれ、なにが起こってる?”



 チャラン~チャラン♪ チャラン~チャラン♪ 

 

 すると、聞くだけで身の毛がよだつような不気味な音が、スマホから



”!?”

”ヒェッ!?”

”なんだ!?”

”うるせぇ!?!?”

”【速報】ダンジョン庁、ダンジョン緊急事態発令”

”マジか!?”

”ダンジョン緊急事態っていつ以来だよ!?”

”十五年前。その時は十万人が死んだ”

”嘘だろ!?!?”

”武蔵野ダンジョンから大量の魔物が一気に噴き出たあの時と同じかよ!!”

”終わったああああああああああああああああああ!!!”

”おい、俺武蔵野市民なんだけどどうすればいいんだよ!!”

”この警報音怖すぎんだろwwwww”

”でもFPSやめられないんだけどwwww”

”馬鹿、とっとと逃げろ!!!”

”おい、武蔵野ダンジョンギルドのダンジョンへと続く階段が忽然と消えたらしいぞ!?”

”は?”

”!?”

”マジかよ”

”マジ。なんなら消える瞬間の映像偶然撮ってた人いる”

”あ、そうなんだ。だったら地上に魔物湧いてこないし別にいっか”

”はぁ!?”

”ダンジョンに取り残された奴らはどうすんだよ!!”

”人の心とかないんか?”

”おい、そんなことよりハ○撮りは!?”

”この際二階堂でもいいからハ○てくれ!!”

”草wwwwww”

”誰得だよ……って思ったけど、二階堂がダンジョンテロリストなら普通に国得か”



「ふむふむ……」


 どうやら二階堂のやつ、さくらちゃんの魔物因子を取り込んだみたいだな。確認したいことは確認できたので、和泉のチャンネルのコメント欄に切り替えて、驚く。



”¥78800 偽善者ニキ、助けに行ってあげて!”

”¥20000 頼む偽善者ニキ!!”

”¥1000 助けて!!”

”¥30000 お願い!!”

”¥78800 偽善者ニキ!!!”

”¥40000 まさか、金にならないから手○ンした女を見捨てるとか、そんなこと言わないよな!?!?”

”¥30000 竜胆以外にもダンジョンの一階層にはたくさんの人がいる!! 助けてあげて!!”



 すると、和泉がハッとなって、カメラ目線で態とらしく悲しそうな顔をする。


「悔しいけど、ナナたちにはどうにもできないよ! だって、ダンジョンの入り口は塞がれてるんでしょ!?」


「いや、俺のワープだったらいけるだろ」


 自分でそう言って、なんでわざわざそんなことを言うのかと自分で驚いた。

 これじゃあまるで、俺が一階層の奴らを助けたがってるみたいじゃないか。


「ダメ、危険だよ。彼女として、そんな場に彼氏を行かせられない! 一緒に避難しよ? てか避難しなくてもいいけどナナが守って!」


 一階層の連中なんか、底辺ばっかだから助けたところで金にもならない。

 てか、ちょっとチ○ポ出しただけで稼げるんだから、救助なんて面倒なこと自体コスパが悪すぎる。


 まさか、竜胆みたく金よりも人命ってな善人にでもなったつもりなのか……いや、それはないな。金>人命なのはこの地上の常識で、俺はそれに従ってるだけなんだし。


 にも関わらず、俺は金が簡単に手に入るカップル配信者の仕事を放り出して、一階層に行き、人を救助したいと思ってる。一体全体、どんな理屈なんだ。


 ……そういえば竜胆、人間とは不条理なもの、とか言ってたっけな。


 竜胆の言葉を鵜呑みにするのなら、今の俺のこの状態こそが、人間らしいと言えるのかもしれない。


「よし、別れるか!」


「……へ?」



”!?”

”!?”

”!?!?!?”

”へ?”

”は?”

”ファッ!?”

”純ピ?”

”何言ってるの?”

”聞き間違いだよね?”

”おい、だからハ○撮りはどうすんだよ!!!!!”

”ハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮りハ○撮り”



「なんか他の女に手マ○した程度でうだうだウルセェし、鬱陶しいわお前」


 少なくともこれは事実なので、はっきり言っておく。すると、和泉の顔色がみるみるうちに青ざめていく。


「ま、待ってよ!? 何言ってんの純ピ!? ナナたち、赤い糸で繋がれてんだよ!?」


「赤い糸? なんだそれ、新手の拷問かなんかか?」


 二人の人間を糸で繋いで生活させるなんて、かなりストレスがかかることだろう。さすが殺戮兵器を生み出しまくってる地上の連中、うまいこと考えるもんだ。


「ともかく、糸程度じゃ俺を縛れねぇからさ」


 俺がワープ魔法を使おうとすると、和泉が「待って!!」と俺の腰にしがみついてくる。おいおい、このままじゃ確実に一緒にワープしちゃうけど大丈夫か?


「わかった! ハ○撮り、ハ○撮りしていいから! だからお願い、別れないで!」


「えぇ……」


「なんで引いてるの!? 純ピがやりたいって言ったんだよね!?」


「いや、女の方からハ○撮りを要求するって変じゃん」


「古い!! 考え方古いよ!! 最近は女性も積極的な時代なんだよ!」


「古いってか、俺、ダンジョンで育ってるからなぁ」


「何その嘘!? 斬新すぎでしょ言い訳!!」


「嘘じゃないんだけどなぁ……」


 ともかく、これ以上会話しても意味がなさそうだ。どのみちこいつも一緒に連れてくつもりだったしいいか。

 当然、今回の救助も配信してお金に変える。竜胆にやらせてもいいが、その竜胆が死ぬ可能性もあるので、スペアはあったほうが安牌だ。


「あ、そうそう。別れるのは別れんだけど、今回の出演料は絶対に貰うぞ。払わないようだったら訴えるから、そこんとこよろしくな」


「ハ○撮り撮ってええええええええええええええ!!!!」

 

 和泉の奇妙な雄叫びを聞きながら、俺はワープ魔法でダンジョンの一階層へと飛んだのだった。

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