第26話 カップル配信者デビュー


「おい、おかしくないか和泉。なんでこんなとこでよぉ……」


 三連休の最終日。


 俺は和泉の家に来ていた。流石は有名探索者だけあって、俺が殴ったらどうすんだってくらい高い高層マンションの上階の部屋だ。


 本来は今日、魔石採掘のアルバイトがあったのだが、和泉のわがままで断ることになってしまった。まぁ、より金になる仕事なんだから別にいいっちゃいいんだけどな。


「ほんとにね! どうせなら純ピのお家で撮りたかったのに! あの乳だけ女が居座ってるせいで集中できないんだもん!」


「ふーん」


 居座ってるってか、妹が居座らせてるんだがな……まぁいい。せっかく金持ちの家に侵入できたんだから、早速漁るとするかな。


 俺は巨大な冷蔵庫を開け、巨大な割に中身が少ないことに落胆しつつ、スト○ング缶などを片っ端から飲み干していると、和泉の「純一、撮影部屋はこっちだよ〜」という声が隣の部屋から聞こえてくる。


 行ってみると、複数のカメラと多量のライトがあって、眩しさにうっとなる。なんでこうも地上の連中は、太陽なんて貴重なもんがあるのに、人工の光を好むんだ?


「なぁ和泉、やっぱおかしいって。俺はともかく、お前はダンジョン探索者なんだろ? なのになんでこんなただの部屋で配信すんだよ。俺、世の中の連中に馬鹿だと思われたくないんだけど」


 俺が当然の疑問を口にすると、和泉は鼻で笑った。


「ダンジョン配信者で、馬鹿正直にダンジョンばっかで配信してるのって、それこそ竜胆暁くらいだよ。その竜胆も、回復魔法持ちだからできてわけだしね。ダンジョンに行くのなんて一ヶ月に一回で十分だよ」


「いやいや、魔石採掘のバイトとか多い時週七で行ってたぞ俺。なのに俺がダンジョン探索者じゃなくて、一ヶ月にいっぺんのお前らがダンジョン探索者っておかしくないか?」


「もう、そんなのどうでもいいじゃん!」


 ピンポーン。


 と、チャイムが鳴ると、和泉が立ち上がる。


「あ、ウーバ来たみたい!」


「ウーバ?」


 和泉がドタドタ部屋から出ていくと、手にいっぱい袋を持って帰ってくる。中を確認しなくても、強烈な食いもんの匂いに腹が鳴った。


「おい、これって運んでもらった分金かかってんじゃないか?」


「え、うん、そうだよ?」


「…………」


 腐っても探索者なんだから、その身体能力を活かせよと言いたいところだが、俺の金じゃないので口出しもできない。しかし、和泉って日本人だよな? なのになんで韓国料理ばっかなんだ? 


「じゃ、食べながらいっぱいおしゃべり配信しようね!」


「あ? お前、食べながらって……食いもんを食べる時はもくもくと食べるもんだろ。喋ったら口の中が見えちまう。マナーが良くないよマナーが」


「へ? 何言ってるの? ウーバ頼んでトークするのって、配信界じゃ鉄板なんだよ?」


「は? 待てよ。この持ち帰りの食いもんだけじゃ、ウーバで運んできたもんかわかんないだろ。だったら運んできたやつもここに呼んで、一緒に話さなきゃダメなんじゃないか?」


「待てよ、だって! もう、キムタ○みたいでかっこいい〜♡」


「いや、キムタ○、実際はちょ待てよとか言ってないらしいぞ」


「あ、それデマだよ。実際にラブジェネレーショ○で松た○子に言ってた」


「あ、そうなんだ……」


 なんか論破されたみたいな感じでちょっと恥ずかしい。俺ダンジョン育ちだからあんまドラマとか詳しくねぇし。


 しかし、配信者って魔石採掘者よりも圧倒的に変な仕事だよなぁ。仕事ってのは人にメリットを与えるから金が貰えるって構造のはずだが、一体俺たちがただ飯を食ってるのを見て、誰がメリットを感じんだ? 変なの。


「それじゃあ早速配信始めよっか!……あ、ナナはピのこと純ピって呼ぶから、純ピはナナのことナナてゃって呼んでね?」


「え? あ、え? なんだって?」


 日本語か今の? あ、なるほど、やっぱこいつ韓国人だったのか。通りで韓国料理が多いわけだよ全く。


「それじゃ純ピ、カメラ回すよ〜」


 もう考えるのも面倒なので、俺は少し冷めた韓国料理を机の上に並べるのを手伝ってから、

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