第19話 S級魔物を一刀両断からの帰宅



”え”

”へ?”

”えええええええええええええ!?!?!?”

”うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!”

”死ん、だ?”

”え、え、え、え?”

”また見えなかったぞ!?!? マジで偽善者ニキの戦いにはスーパースロー必須だな!?”

”制作者として鼻が高い……と言いたいところだが、スーパースローでも見えねぇんですけど!?”

”!?!?!?”

”ファッ!?”

”何が起こったんだこれ!?”

”……わからん”

”とりあえず、偽善者ニキには暗澹龍の踏みつけが全くノーダメージで、地面から飛び出てきたのは見えたよ”

”そっからどう見ても、暗澹龍が一人でに真っ二つになってるよな!?”

”なんじゃああああこりゃああああああ!?”

”おい待て。映像止めたら、暗澹龍の方に、うっすい布みたいなの飛んでない?”

”あ、ほんとだ”

”え? 見えないけど?”

”A級探索者の俺でギリ見えるレベルだから、一般人には見えないかも”

”あっ!? 確かに見える!?”

”なんじゃああああこりゃああああああ!?!?!?”

”おそらく、魔力を刃状にして飛ばす、『魔刃』魔法なんだろうけど……薄っぺらすぎないか!?” 

”こうやってスーパースローで斜めから見てギリ見えるくらいだから、真正面からこのスピードで飛んできたら絶対に視認もできずに真っ二つ不可避だぞ!?”

”暗澹龍って竜種の中でもめちゃくちゃ硬いよな!? てことは、大抵の竜種を真っ二つにできるってことにならないか!?!?”

”わらけてきたwwwww”

”偽善者ニキツヨスギィ!”

”てか偽善者ニキ普通に魔法二個持ちなの!? その時点でA級探索者レベルじゃん!?”

”いやもうA級探索者とかそんなレベルじゃねえって!?!?”

”S級でもこんな芸当できるやつ上位陣くらいのもんだろwwww ”

”てことは偽善者ニキ、S級上位陣と同じレベルってことじゃん!?!?!?”

”武蔵野純一最強! 武蔵野純一最強!”

”武蔵野純一最強! 武蔵野純一最強!”

”武蔵野純一最強! 武蔵野純一最強!”



「……武蔵野くん!」


 竜胆が駆け寄ってきて、俺の口に回復魔法をかけてきたので、「ああいいって」と断る。しかし、竜胆は完全無視だ。体質上、怪我とかすぐ治るから回復魔法とか必要ないんだけどな。


 俺は暗澹龍の血の海からドロップアイテムを拾い上げ、水の渦からこちらを確認していたサーニャに差し出す。


「S級探索者サーニャ、これでお前を救助したってことでいいな?」


「……もちろんにゃん。ありがとナリ」


 サーニャはしばらくの間、暗澹龍の残骸を見ていたが、俺に笑顔で手を差し伸ばしてきた。しかしその目は、随分と好戦的だ。穏やかじゃないなぁ。


 ともかく、二階堂と違ってあっさりと認めてくれたのはありがたい。俺はその小さな手を握り返したのだった。



”うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!” 

”すげえええええええええええええええ!!!”

”ヤバああああああああああああああああ!!!!!!”

”拍手!!!!!”

”これはエグい!!!!”

”マジでS級探索者を救助しちゃったよ!?!?!?”

”同じ日本人として誇らしすぎる”

”海外ニキにも絶賛されてんぞ!!!

”Holy Shit!!!!!!!”

”CRAZY!!!!!!!!”

”Badass!!!!”

”URYYYYYYYYY!!!”

”お前日本人だろwwwww”

”S級魔物を討伐したってことは、偽善者ニキ国民栄誉賞もらえるんじゃね!?”

”探索者資格よりも先に国民栄誉賞ってどういうことだよwwww”

”マジで見ててよかった”

”なんか泣いてるわ俺。二十九時間テレビのマラソンでも泣いたことなかったのに”

”それは普通で草”

”感動した!!!”

”同接も五十二万人突破!!!!!”

”登録者も三百万人行こうとしてんぞ!!”

”トゥイッターのトレンドも偽善者ニキが独占してる!!!”

”そりゃそうだろ!! S級の魔物真っ二つにしたんだぞ!!!!”

”みんな忘れてると思うけど、ここ竜胆のチャンネルだからなwww”

”暁ファンの俺でも忘れてたわwwww”

”暁めちゃくちゃ棚ぼたで草wwwwwww”

”武蔵野純一最高! 武蔵野純一最高!”


 

「おいお前!! 何してやがる!!」


 すると、俺とサーニャの間に二階堂が割って入ってきた。うわ、う○こついたんだけど。マジでテンション下がるわ。


 二階堂はというと、う○こまみれのくせにまともみたいな顔をして、俺を睨みつけた。

 

「お前、この方を誰だと思っている!? お前が金をたかっていい相手じゃないんだよ!!!」


「いや、たかるも何も、助けてやったんだから当たり前だろ」


「はぁ!? お前がサーニャさんを助けた!? ついに頭がイカれたのか!?」


「いやいや……」


 俺が真っ二つになった暗澹龍を指さすが、二階堂は納得いかない様子だ。


「お前ごときに暗澹龍を殺せるか!! サーニャさんがやったに決まってる!! お前マジで死ねよ!!!」



”はぁ”

”こいつ”

”チッ”

”マジ”

”しょーもな”

”…………”

”ダル”

”きっしょ”

”マジでなんなんこいつ”

”感動に水さすなや”

”もう無視しようよ”

”人の心とかないんか?”

”普通に誹謗中傷で訴えてほしいわ”

”このまま深層においていってほしい”

”それ絶対にバズるわwww”

”マジで金払ってでも見たいそれ”



「まぁまぁ、落ち着きたまえ。彼の言っていることは本当にゃん。ていうかチミもうんこまみれだけど、もう終わりだよこの国!」


「そんなわけがない!! やつが何か汚い手を使ったに決まっている!! 騙されないでください!!」



”裏工作で偽善者ニキ試験から落としといてよくこんなこと言えるなこいつ”

”ブーメランすぎて草”

”ブーメランさん、お願いだからそいつの首掻っ切って”

”汚いのは(二重の意味で)お前だろ”

”それなwww”

”マジで嫌いだわこいつ”

”日本の恥”

”Foolish”

”Fu○k”

”CK”

”サーニャのチャンネルでも海外ニキたちにボロカス言われてて草”

”最近はAIで即座に翻訳音声が聞ける時代だからなwww”

”AIで仕事を失うってこういうことだったのか……”

”草”

”AI有能すぎるwww”



 サーニャの言葉も二階堂には届かない。めんどくさいなぁ。手頃な魔物もいないし、いっそのこと俺が殴って気絶させちゃおうかなぁ。 

 いや、二階堂の場合、どれだけ手加減しても殺しちゃう可能性がある。プライベートならともかく、配信中は流石にまずいだろう。


 それに、二階堂はうんこまみれだから触りたくないので、竜胆にやったみたいに担いで地上に出ることもできない。しかし、ワープ魔法を使うのは、この場合ハイリスクローリターンだしなぁ。


 ……あっ。


 俺はポンと手を打つ。


「そっか、上空に出たらいいんだ」


 上空に出れば、少なくとも即死はないもんな。


 俺は魔法を展開する。二回目というのもあって非常にスムーズにワープ魔法を展開することができた。


 瞬間、眩い太陽の光に目がかれる。やはり、偽物と違って、本物の光は強烈だなぁ!!


 下を見ると、厚い雲の隙間から武蔵野の街並みがちらりと見えた。


「ふぅん。上空4000mってとこか」



”ん?”

”え?”

”は?”

”ほ?”

”む?”



 本当は2000mくらいをイメージしてワープしたんだが、ま、成功ってことでいいだろうな!!!

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