第20話 奥多摩ダンジョンコラボ配信4
ボス部屋にいた人型の何かは目をよく凝らしてみると小さめの背丈をした赤髪赤目の少年だった。
その少年は私たちを見るなりその自信満々な顔のまま言葉を発した。
「よくぞここまできた!俺は深淵層の入り口の番人不死鳥フェニックス!この先にお前たちがふさわしいか見定めてやろう!」
と、そして飛び上がったと思えば炎に包まれその中から燃え盛る火の鳥が出てきた。
鈴音たちを見ると威圧感に耐えるために歯を食いしばっているようだった。
「鈴音たちは私が張る結界の中にいて、強くなったとはいえあいつはあなたたちにはまだ荷が重い」
「...っ!...わかりました」
そう言って後ろに張った結界に鈴音たちを押し込む。
「...さて、やろうか」
『pyrrrrrrr!!』
戦いの合図はなくお互いにぶつかるところから始まった。
フェニックスは私に向かって炎に包まれた翼を振り下ろし、私はいつもの大鎌でそれを受けとめる。
「...!まさかその羽を腕みたいに使えるなんてね!『エンハンス』『ハイエンハンス』『エンチャント・絶海』『マジックエンチャント・水』!」
私は身体強化と大鎌に炎の有利属性水属性の上位エンチャントと水魔法を纏わせ残像を残し人にはもう捉えることができないスピードで移動する。
フェニックスはEXランクという事もあり捉えられたようで私の進行方向に燃え盛る羽を飛ばしてきた。
私はそれをジャンプすることで避け、フェニックスの羽を切りつける。
水属性の斬撃はとても効いたらしく、羽は切り落とされ炎の勢いが弱くなった。
それでも不死鳥の名の通り一瞬のうちに炎の勢いは戻り羽は再び生えてきた。
『pyrrrrrrrrrrrrrr!!』
フェニックスはスキルを発動させたらしく蒼白い炎が勢いよく飛んでくる。
私はそれを受け止めるつもりは一切なく当たらない位置まで走り抜けた。
「範囲ひっろ。あれ普通なら決壊かなんかで受け止めるんだろうけど普通の結界だと融解しそう」
炎が当たった場所は地面が融解していた。
あそこもう踏めないな...
「また行くよ!移動術『瞬動』!」
移動行動のみという限定付きだが効果倍率が五倍を超えるバフを自分にかけ、さらに加速する。
音すらも置き去りにし、フェニックスに近づいていく。
「今回は鈴音たちがいるからね!いつもならもっと楽しめる先頭をするように心がけるんだけど、今日は鈴音たちの安全が一番!これでおしまい!大鎌術奥義『死ヲ導ク死神ノ鎌』!」
頭からしっぽに向かって振り下ろし一瞬のうちにフェニックスを切り裂き、その場所に空間の裂け目が現れフェニックスを亜空間に消し去る。
フェニックスを吸い込み終わった裂け目は私の役目は終わりとでもいう感じに何事もなかったように戻っていった。
「ふぅ...あーあ、鈴音たちを助けるのは本音だけどあんまり強くなかったからさっさと終わらせちゃった。あのくらいなら自分にデバフかけて戦った方が楽しいかもしれないなぁ」
《EXランク不死鳥フェニックスの討伐を確認。討伐者:白雪真白。クリア報酬をワールド開放します》
私がちょっと落ち込んでいると鈴音たちが近づいてきた。
「しろちゃん!大丈夫⁉」
「大丈夫だよ。EXランクにしては弱くてあっけなかったけど」
「あはは...それは鈴音ちゃんが強すぎるだけな気がするなぁ」
そんな会話をしていると再び始まりの声が聞こえてきた。
《世界防衛機構を起動。これより深淵層、星層、神層を開放。それに伴い特殊ダンジョンの名称を変更Sランク以下特殊ダンジョンを封印ダンジョン、SSランクを真・封印ダンジョン、SSSランクダンジョンをラストダンジョンに名称変更。人類に目標が与えられます。中間目標、封印ダンジョン、真・封印ダンジョン、ラストダンジョンの攻略。最終目標、邪神軍の討伐。現在、名称:地球は邪神に狙われており、神々はすでに敗北し封印ダンジョン、真・封印ダンジョン、ラストダンジョンに封じられています。神々を開放し神々と協力して邪神軍を滅ぼしてください。猶予、邪神軍到着までおよそ三か月》
おー!なんか楽しそうな奴らが攻めてきてるのか!本気出せそうでとてもいいぞ!
「あわわわわ、ど、どうすればいいんでしょうか⁉」
「ん、まず落ち着いてまだ猶予も三か月ある。だから視聴者も落ち着こうね」
突然の情報にあわあわしていた鈴音たちと加速しまくってるコメントをたしなめる。
「で、でも!」
「大丈夫だってみんながしっかり訓練して特殊ダンジョンとか攻略すればいい話でしょ?ダンジョンを攻略するために鈴音たちも鍛えてるんだから。それに私だっているよ」
「...確かにしろちゃんがいるなら何とかなるかもしれない。今だってEXランク簡単に討伐したし...」
「それに慌てすぎはよくないよいらないところでミスするからね」
「確かに...すぅーはぁー...よし!落ち着いた。それでこれからどうすればいいと思う?」
「私の意見でいいの?」
「多分世界で一番強いのしろちゃんだしそれに従った方がいい気がする」
「ん、なら言うけど。まずは探索者のみんなBランクくらいまで鍛えようか。そうじゃないと手も出ないと思うからね。で、今Bランク以上の人はS行けるくらいの武器は持っておこう。実力がそこから上がるかは個人次第だから任せるけどね。鈴音たちはスキルの見習いがはずれればいいかな。その間に私は深淵層、星層、神層を攻略する。みんなは自分の実力より上のダンジョンの下層で鍛えて、それが一番早く実力が上がる。ただ潜る時の難易度は少し上くらいにしてね。そうじゃないとただ死ぬだけになるから」
「け、けどそれだと白ちゃんの負担が大きくない?だってダンジョンいくつもあるんだよ?」
「これは予想だけど、精霊層以降はどのダンジョンも同じ空間につながってる。だってこの上の層に前の精霊さんの気配が残ってるし。それに今気配探ってみるとそれぞれ十層ずつで神層に至っては一層しかないからね。そこまで負担じゃないよ」
「そ、そう?ならいいんだけど...」
「それじゃあ精霊層にもどって地上に帰還するよ」
「「「「うん!」」」」
本来入ってくるはずの扉から出て階段を上る。
『あら、しろちゃんじゃない...そちらは味方さんかしら?』
「こんにちは。マイヤさん。私たちのこと地上に送ってくれませんか?」
「さっきのアナウンスで早く戻りたいのね。いいわよ送ってあげる」
「ありがとうございます」
マイヤさんが私たちに向かって手をかざすと景色が変わり最初の山奥の景色に戻っていた。
「じゃあここからは別行動。私は会長に報告しに行く。配信も終わり」
「わかりました!」
「じゃあまたね」
「しろちゃんまたね!」
「ありがとうございました!」
「ありがとう!またな!」
「今日はありがとうございました。また会いましょう」
そう言って配信を切って鈴音たちとも別れ協会へと向かった。
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