第18話 奥多摩ダンジョンコラボ配信2
「Aランクダンジョン初めて来たけど思ったより威圧感が強い...」
「だってここ上位Aだから一番上のランクで下位Sランクのモンスターまでは出るからね。威圧感が強いのは当たり前だと思うよ」
「え、私たち下位Sランク相手にするの?」
「最初は下位Aからだけど最終的にはそこまで行くつもりだよ」
『しろちゃんって結構スパルタ?』
「スパルタではないよ。そもそも戦いの実力は自分よりも少し上のやつと戦った方が上がるからね。これは基礎ができてるっていう前提だけどね。結局どの練習法も基礎ができてないとうまくはならないよ」
「うんうん!私たちも基礎は大事だと思う!」
「何事も基礎からですわ!」
少し視聴者と雑談しつつ進んでいくと少し開けた空間に出た。
そしてそこには数体のモンスターが寝ていた。
こちらにはまだ気づいてもないんだろう。こちらを見る様子が一切ない。
「鈴音たちにはあの中の一体下位Aランクのチャンピオンコボルトと戦ってもらうよ。それ以外は中位以上だから私が処理しとくから戦いに集中してね」
そう言って私はチャンピオンコボルト以外のモンスターを創造で空間ごと葬り去り瞬時に空間を修復する。
「じゃあ、あとは任せた。危なくなったら助けるから思う存分自分の最大限の力で戦ってみて」
「「「「はい!(おう!)」」」」
そう言って鈴音たちに戦い始めるように促した。
鈴音たちのフォーメーションは一番前にタンクの健人と剣士の鈴音、中衛に魔法使いの輝夜、後衛に弓術士兼探知役の真。バランスがとってもいい。
「我が魔力をその刃に宿し、全てを貫く光を放て!『クリスタルランス』!」
その隊形になるとまず輝夜が魔法を放った。多分おびき寄せと初撃ダメージを取るためだろう、基礎氷魔法スキルで最大の火力のクリスタルランスを放っていた。
チャンピオンコボルトはまだ寝ていたので確実に直撃、さらに狙いが良かったので頭に直撃していた。
チャンピオンコボルトは少し吹き飛び、体を起こすとその目に怒りの感情を灯していた。
『GRRRRRR!』
「来ますわ!」
チャンピオンコボルトはその起こした体を少し低くして勢いよく踏み込んで突っ込んできた。
健人はその動きをとらえ盾で突進を止める。
「チィッ!思ったよりも速いうえに力がつえぇ!気をつけろよ!」
「「「了解!」」」
「おらぁ!いつまで盾に張り付いてやがる!『シールドバッシュ』!」
盾に張り付いていたチャンピオンコボルトを盾を思いっきり振ることで吹き飛ばす。
「少しダメージは低いけど遠距離から斬るよ!『飛影斬』!」
「『雷矢』」
鈴音が吹き飛ばされ硬直したチャンピオンコボルトに三連撃の見えない刃を飛ばし確実にダメージを与えていく。
それに続くように真も雷属性が付与された技で着実にダメージを増やしていく
「いい連携だね。それにきれいな戦い方をする。さすが基礎スキルだけで個人C、パーティーB行ったまではある」
『やっぱりあの戦い方は安定してるね』
『けどきれいすぎて崩されるとやばいんだよなぁ』
そう視聴者の言う通りきれいな戦い方というのは安定はするがその陣形を崩されたときにヤバい。
乱戦...というにはあれだが崩された陣形で戦う経験が少ないと隙を突かれて誰かが死にかねない。
だから今回はそれを解消するための戦い方を覚えてもらうのと個人を強くして近づかれても何とかするために鍛える。
そのまま戦っていくとチャンピオンコボルトのHPが残り二割を切って狂化状態になった。
『GROOOOOOOO!!!』
「何この状態...もしかして狂化⁉気を付けて!ここからは攻撃力とスピードが段違いになると思う!」
「おお、よく知ってたね」
『あれが狂化か...初めて見たけど結構恐ろしいんだな』
確かに始めてみると恐ろしく見えるだろう。
体からは赤い靄がでており目には赤い畝脳のようなものを纏っている。
その状態になると攻撃力、スピード共に二倍に能力が跳ね上がる。
下位Aだからその程度で収まってるがこれが上位AやSになってくると強化倍率は五倍、十倍まで跳ね上がる。
それでも鈴音たちは慌てず落ち着いて戦い続けた。
それにしても本当にバランスがいい。ここまで安定した戦いを見たのは初めてだよ。
鈴音たちはそこからも安定した戦いを見せ見事勝利を収めた。
戦闘時間はおよそ三十分。初めてにしてはかなりいい方だろう。
「討伐おめでとう。まさか狂化状態のやつを倒せるとは思ってなかった」
「やっぱりあれ狂化だったんですね...」
「そう。それで反省点伝えるけどいい?まあ反省点というかこれから鍛えていく内容みたいな感じ」
「お願い!」
「まずは個人の力を鍛えよう。理由はもし陣形が崩されても死なないためだね。あとパーティーでの戦いに慣れるんじゃなくて個人で戦うことに慣れよう。これも理由は同じ。鈴音たちはパーティーとしてはかなり強い方に入る。けど、安定した戦いをしてるせいで個人の力がやっぱり足りないように感じるから。そこの訓練しよう」
「「「「はい!」」」」
「次は狂化しないのを一対一で戦ってみよう。四体同時にやるから気を付けてね」
そう言ってまた歩き始めた。
そうしてしばらく歩くと先ほどの部屋より広くはないがちょうどいい狂化しない下位Aランクのモンスター四体がいた。
そのモンスターはエルダーソードスケルトン二体とエルダーマジックスケルトン二体だった。
ちょうどいいね。鈴音と健人はマジックスケルトンを一体ずつ、輝夜と真にはソードスケルトンを一体ずつやってもらおう。
自分とは役割が反対のやつとやることである程度個人の力も付くだろう。
「それじゃあ鈴音と健人はエルダーマジックスケルトンをやって、輝夜と真はエルダーソードスケルトンやろう」
「自分とは反対の役職のマジックか...難しいかもだけどやってみる!」
「近づかれないように...いや無理ですわね。避けながらやるしかないですわ」
「俺鈍足なんだがいけるかぁ?まあやるしかないんだが!」
「僕は近づかれないようにひたすら撃って牽制しつつやるしかないですかね」
「それじゃあ始めて。危なかったら助けるからそこは安心してね」
そう言って戦い始めた鈴音たちを観察し始めた。
鈴音は遠距離攻撃を交えながら少しずつ近づいていって斬ってる。
健人は...あれはアサルトシールドかな?考えたね。確かにあれならすぐに近づける。
輝夜は結界で的確に防ぎながら隙を探して詠唱破棄で撃ってるのか。とっさにあそこまでできるのは才能だね。
真はもう近づけてすらないか、戦い方という面では一番うまいかもね。
そこから四十分ほど戦い続けて一番最初に火力が一番高い鈴音が戦い終わった。
それから十分後輝夜と真がほぼ同時にとどめを刺した。
さらにそこから十分後健人も戦い終わった。
全員快勝とはいかないけど倒すことはできた。上出来じゃないかな。
個人で下位Aを十分以内に倒せたら個人Aはあるから今はBの中位くらいかな?
「ねぇねぇ!しろちゃん!スキルが進化したよ!」
「俺もだ!」
「僕もですね」
「私は新しいスキルを手に入れましたわ!」
「おお、おめでとう。それぞれ何に進化したの?」
「私は見習い剣聖術だよ!」
「俺は見習い盾聖術だな!」
「僕は見習い弓聖術と探知術です」
「私は魔法剣魔法と植物魔法ですわ!」
「.........」
「どしたのしろちゃん?」
「まさか全員が上位スキルと中位技能を発現するとは思ってなかった」
「やった!しろちゃんの予想の上を行けたっ!」
「すごいよ。多分もうみんな中位Aとは戦えるからどんどん奥に進もうか」
そうして鈴音たちと進んでいった。
しばらくモンスターにも遭遇せずおかしいなと思い始めた頃だった。
前を歩いていた鈴音たちが突然消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます