第31話 芸術と機能は同居する
「へえ~~このドレス、落ち着いてるのに華やかでカッコイイな」
俺はジークがデザイナーに依頼して仕立ててくれたドレスを見ながら声を上げた。
なんと、すでに俺の採寸は済んでいたため、全てをジークがオーダーした。
つまり、これがジークの好みのドレスというわけだ。
(見た目はネイビーでクールな雰囲気などに、スカート部分に可愛らしさもあって、可愛い。かなりバランスいいな。これがジークの好みか……ふむふむ)
今回のドレスはホルダーネックのドレス。スカート部分はティアード型で、何重にも布が重なっていた。濃紺の重厚感もスカートの少しずつ色の違うグラデーションのティアードのおかげで暗くなり過ぎず、とても美しい。
「レンに似合いそうなものに……してもらった。気に入ったか?」
ジークが少し不安そうに言うので俺は笑顔で答えた。
「ああ。すげぇいいじゃん。気に入った。ありがとう、侯爵様」
結局俺は、第二王子アルバート殿下の招待客ではなく、ジークのパートナーとしてパーティーに行くことになった。
しかもドレスも殿下ではなく、ジークが作ってくれることになった。
ジークとベッドで愛し合った次の日、ジークはアルバート殿下に俺をパートナーにすることと、ドレスは自分が作ると言い放ったらしい。
ジークからそのことを聞いた時は、かなり恥ずかしかったが、アルバート殿下も納得してくれたそうなので、ほっとした。
「レンちゃん~~。このドレス、見た目だけじゃないのよ~~~。ほら、見て見て~~このドレスねぇ、ここを外すとねぇ~~ほら~~」
デザイナーが楽しそうにドレスのスカート部分を手に取ると、するりと紐を抜いた。
「おお~~~!!」
スカートのティアード部分は外れるようになっていて、中はタイトな袴のようになっていた。
「これ、紐を抜けば動きやすくなるわ。レンちゃんたら、逃げなきゃいけないかもしれないんでしょ? いざをなったらこの紐を引き抜いて、スカート部分を投げ捨てて逃げるのよ!?」
俺は嬉さと感動と、素晴らしい仕事ぶりに尊敬の念を送りながらデザイナーをじっと見ながら言った。
「ありがとう、嬉しいよ。こんな短期間でここまで……」
「いいのよぉ~~その代わり……今度、閣下ってベッドの中でどんな風になるのか教えてねぇん。きゃは!!」
前言撤回。セクハラ親父、いや、オネエ様だったわ。
俺は、妖艶に微笑みながら煽るようにデザイナーの顎に指で触れながら言った。
「俺の男、言葉じゃ伝えられないくらい、凄いけど? ……――どうやって伝えてほしい?」
するとなぜか、ジークがよろけて椅子の背もたれに両手をついて身体を支えた。
そしてデザイナーは真っ赤な顔で言った。
「ふざけるなよ!! ああ、今の下半身にストレートに来た。マジで、抱きてぇ! レン、お前、小悪魔過ぎんだろ? 襲うぞ?」
(あ、オネエ様……抱く方なんだ……)
俺が斜め上なことを考えていると、ジークが俺を後ろから抱きしめながら、鼻息荒く俺に迫って来るデザイナーの前から退避させて、デザイナーの頭に手刀を入れた。
「落ち着け」
「痛ぁ~~い。閣下、今の本気だったでしょう? 酷ーい!! でもいいわ。楽しい物が見れたから、それじゃあ、私は帰るわ!! またね~~」
デザイナーが出て行くと、ジークが俺を後ろから抱きしめ、首に唇を当てながら言った。
「レン……あまり煽るなよ」
俺はジークの頬を撫でながら言った。
「ははは、ごめんって……ところで、ジーク。そのままでいいの?」
俺が首だけ振り向いてジークを見ると、ジークに食べられそうな勢いで唇を奪われた。そして、ジークが熱のこもった瞳を向けながら言った。
「最近全く抑えがきかない」
俺は目を細めながら言った。
「……――俺も」
「っく!!」
そして俺たちは再び唇を合わせたのだった。
◇
数日後、パーティー当日になった。
カレンは第一王子ニコラスの婚約者として朝早くから王宮に行くので、王家の馬車で先に向かった。俺はジークと二人で会場入りすることになっていた。
俺はジークに貰ったドレスを着て、化粧をして完璧に身なりを整えて、鏡を見つめた。
「絶対に死なせない」
そして鏡の前から立ち上がると、ジークの待つエントランスに向かったのだった。
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