第27話 死神からの招待状
「とうとう来たか……こいつが……」
カレンとほとんど毎日一緒にニコラスと仲を深める作戦を実行して三ケ月が過ぎた。
そしてジークが殺害されるイベントの招待状が届いた。
あれから、ジークは何度か賊に襲われたようだが、全てを撃退。舞台でも身体に傷を多く作り満身創痍だが、今日までジークは無傷で過ごしている。
さらに言うと、カレンとニコラスの仲もかなり良好だ。
最近ではお茶会の時間が伸ばされ、カレンの学院が休みの日は半日も二人は一緒に過ごしている。
正直、見ている俺は砂糖を吐きそうな甘さで、胸やけしそうだ。
まぁ、俺がそうなるように仕向けたのだが……
それと同時に、ニコラスが女性不特定多数の女性を相手にしていると言う噂もほとんど聞かなくなった。カレンと不仲を理由にカレンを出し抜こうと考えていた令嬢がカレンと毎日のようにお茶を飲んでいると聞いて、様子を見ているのだろう。
――そんな時。
俺たちの前に、舞台ではジークが殺害され、カレンを婚約破棄を告げられることになる親睦パーティーの知らせが届いたのだ。
俺たちはジークとカレンと三人でジークの部屋に集まり、届いた招待状を真ん中に置いた。
そしてジークが口を開いた。
「レンの話では、ここで私が殺害され、私の殺害後、カレンの婚約破棄と聖女殺害を企てた罪で捕えられる……だったか」
俺は頷くことで返事をした。
「ですが、私は聖女とは話をしたこともないですわ。レンに言われた通り、徹底的に接触を避けましたもの!! それにニコラス殿下も一切聖女には接触していないように思いますわ」
カレンは俺の言う通り、彼女は聖女リディアとは一切接触していない。
もちろん揉め事一つない。
それに俺も学院でニコラスがリディアに接触するか見張ったが、特に接触はなかった。週に何度かリディアと共に昼食を摂って探りを入れてみたが、リディアもニコラスとは大茶会以外は接触していないと言っていた。
さらにリディアは舞台の台本通りに、第二王子のアルバート殿下と仲良くしている。
一方、アルバート殿下は俺が男だと知った時から全く会っていない。もちろん、俺が避けたなどはなく、元々王子との接触なんて、向こうから来なければ、ほとんどない環境なのでアルバート殿下がただ単純に俺に会いに来ることを止めただけだ。
「ジーク。俺、またジークのパートナーとしてパーティーに行くからドレス作ってくれ!!」
俺がジークに言うと、ジークは眉を寄せながら言った。
「……今回はレンは……置いていく」
「はぁ~~!! なんで!?」
俺が思わず立ち上がると、ジークは「どうしてもだ」と言った。
「それで納得すると思っているのか?」
俺がジークに掴みかかると、ジークは無表情に言った。
「とにかく、お前は今回は連れて行かない。ドレスも必要ない。話は以上だ。私は軍に行って来る」
そしてジークは部屋を出て行った。
「くっ!! こんな大事な時に、なんでだよ!!」
俺がドンとテーブルと叩くと、カレンが冷静な様子で言った。
「わからないの? レン? なぜお兄様があなたを連れて行きたくないって言ったのか?」
俺は大きな声で言った。
「わかんねぇよ!! 大事な場面で頼って貰えないとか……信用ないってことなのかよ……」
最後の方は声が小さくなって項垂れていると、カレンが真っすぐに俺を見ながら言った。
「私にはわかるわ……あなたのおかげでね」
「え?」
顔を上げるとカレンは切なそうな顔をした。
「もう一度、お兄様に今のあなたの言葉を伝えてみなさいよ」
そう言ってカレンは「ほら、そろそろお茶会に行くわよ」と言って立ち上がった。俺は「わかった」と言って、ニコラスに会うための準備をしたのだった。
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