第24話 俳優プロデュース悪役令嬢の逆襲?
「レン、あなた……本当に別人ね……」
学院が終わり、俺はカツラを付けて高い靴を履き、カレンに借りた化粧で簡単に顔を変えた。
「褒めてもらえたと解釈するよ」
「そうね、感心しているわ」
そして放課後、カレンと一緒に護衛として馬車に乗り込む。
ジークは馬で周囲に賊が出ないかを隠れて探り、城に着いたらそのまま周囲を調べると言っていた。
◇
「お待ちしておりました。従者の方は同席されますか?」
城に到着すると執事が出迎えてくれた。俺の時はジークは問答無用で別室待機だったが、今回は俺の同席を尋ねてくれた。
カレンは「連れて行くわ」と答えた。執事は「かしこまりました」と答えて俺もカレンと一緒にこの間の応接室に案内してくれた。
今回俺は、扉近くに立って待機だ。
カレンはお茶を「殿下がいらしてからでいいわ」と断った。なるほど、こんな風に先に出すと言われても待つという選択肢もあったのか、と思った。
そしてしばらくすると、ニコラスが現れた。彼は困惑しているのか、警戒しているのか少し固い表情であいさつも何もなく、「今日はどうされたのですか?」と尋ねた。
そんなニコラスにカレンは優雅に淑女の礼をした後に言った。
「殿下、お会いできまして光栄ですわ。殿下とゆっくり、お話がしたかったのです」
カレンの言葉にニコラスはかなり動揺していた。
「そうですか、では話をしましょうか」
ニコラスがカレンの前に座ろうとすると、カレンは俺をチラリと見た俺は心の中で叫んでいた。
カレン、行け!! 今だ!!
カレンは俺を見て小さく頷くと、ニコラスの隣に移動した。
「カレン? なぜ隣に? 君はいつも前に座るではありませんか?」
ニコラスはかなり驚いている。
カレンは、その問いかけには答えずに、驚く殿下の手を取って、恋人繋ぎをした。
しかも、顔が真っ赤でいつもより格段可愛い!!
「カレン!?」
ニコラスもすっかり動揺している。
カレンは上目遣いで、彼を見ながら言った。
「今日はこのままでもいいでしょうか?」
カレンの言葉に、ニコラスは困惑を隠せない表情から、はっとして大茶会で見せた作ったような笑顔になった。
「カレン、もしかして抱いてほしいということですか? いいですよ」
実は俺はこの言葉が飛び出すも予想済みで、事前にカレンにアドバイスをしていた。カレンは、ニコラスを見ながらはっきりと答えた。
「いえ、ただニコラス殿下と手を繋いで話がしたいのですわ」
ニコラスは作り笑顔を消して再び動揺を見せた。
そして、ニコラスは何かを思ったのか、これまでは全く違う表情を見せながら言った。
「話? ……――何を話しましょうか?」
カレンは、顔を上げて微笑むと、「では先日の大茶会でのお話を」と言った。
そして二人はなんだか、業務連絡っぽくはあるが話を始めた。
少しずつニコラスの表情も柔らくなり、最後は業務連絡っぽくはあるがとても楽しそうだと思えた。
俺は二人を見ながら目を細めたのだった。
「では、カレン。明日もこの時間に……」
「はい、楽しみにしていますわ」
カレンとニコラスは時間ギリギリまでずっと手を繋いでおり、二人は手を離した時名残惜しそうだった。
「では……」
ニコラスが手を離した時、カレンが思い出したように言った。
「ニコラス殿下、嬉しかったです。私、殿下と手を繋いでお話出来て……とても……嬉しかったです……」
「え? ……嬉しい……ですか?」
ニコラスはカレンを見ながら固まり動かなくなった。
そしてニコラスを呼びに来た側近が、「殿下、次のご予定が……」というと、殿下はカレンの手を再び繋いだ後に言った。
「カレン、また明日」
「ええ」
そして手を離すと、部屋を出て行った。
カレンはどこかぼんやりとしながらニコラスの出て行った扉を見つめたのだった。
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