第63話 幼女、本命エリアに殴り込む

 どおりで、おかしいと思っていた。

 あそこまでの仕掛けなら、トラップだろうと。


 やはり、抜け穴はあったのだ。


[【高山エリア】の裏面、【超高山エリア】に突入しました。このエリアボスを倒すことにより、すべての高山エリアを制覇したことになります]


 ほらあ。


[ちなみに、超高山エリアの支配者【大天狗エンシェント・イーストエルフ】の強さは、イーストエルフの三〇倍です]


 わお。

 天狗イーストエルフ二〇匹倒すより、大変やんけ。


「どないなっとんねん」 

 

 とはいえ、二〇体倒すために高山を登るより楽だろう。高山一つだけ登って攻略するほうが、退屈しなくて済みそうだ。


「アトキン、現れましたよ」

 

『先生、お気をつけて』


 今回は、なにがあるかわからない。


 クゥハや、フェアリードローンからカニエ、ゴーレムを遠隔操作するメフティも連れている。


 これだけでも、まだ不安が残った。


 それくらい、警戒している。


「ほほう。久々の客人と思えば、ダゴンの奴ら……ではないな」


 全身メカメカしい、ややマッチョ気味のイーストエルフが、大木の切り株にあぐらをかいて座っていた。 

 これまでの魔物と違い、ちゃんとした言葉遣いである。


「下等生物が、よくも瘴気の溢れるこのテネブライに入れたものだ。何用か?」


「あんたをシバキに来た」


「シバく……ほほう。我を討伐に参ったというわけか」


「言葉がわかるんやな?」


「だいたいのニュアンスを読み取っておる」


「ほな聞くけど、なんであんたらは、全身機械なん?」


「イーストエルフ族は、テネブライや外界との環境に適応できるよう、全身を金属で改造しておる」


 有機体の装備で固めた【海洋エリア】のダゴンとは、まったく逆の発想だな。巨大戦艦は金属を使っていたが、ヤツらは七割がた有機生命体で、全身を作り変えていた。


「おかげで、無敵の力を手に入れた。これなら他のエリアにも侵攻できると思って負ったが、お主たちが来た。下等生物ながら、我々の侵攻を妨害するとは」


 まだ、ウチらを下等生物呼ばわりするか。


「だが、その快進撃も終りを迎える。我相手に、それだけの軍勢で挑むことを後悔するがいい」


「お前こそ、イーストエルフ全員、連れてこい。お前一人では、しょうもない」


 そう。しょうもないのは、事実だ。

 

「予定変更や。あんたらは、手を出さんでええからな」


 こんなやつ一人を倒しても、なにも面白くない。

 もっと悲惨な状況が必要だ。


 ウチはさらに、自分を追い込む。


「フォフォフォ。面白い。ならば我がしもべすべてを相手にするがよい!」


 大量のイーストエルフが、こちらに飛んできた。


「アトキン、大丈夫なんですか? あのすばしっこいヤツラが相手だと、邪神ビームだってまともに当たらないじゃないですか」


「ええんや。これくらいの敵と戦わんと、次のエリアで苦戦してまうかもしれんやろ?」


 ウチがいうと、大天狗の身体がさらに膨れ上がる。イーストエルフを数体、体内に取り込んだのだ。


「貴様に次はない! 死ね!」


「【邪神ショット】、誘爆!」


 攻撃させるスキすら与えず、ウチはイーストエルフ共に邪神ショットを見舞った。


 撃墜されたエルフが吹っ飛び、身体を集団にぶつける。


 これなら、群れていても仕方がない。密集してるほうが悪いのだ。

 

「死ぬんは、お前や。大天狗」

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