第62話 幼女、エリアの仕様に軽く殺意を覚える

 ウチの弟子であるカニエが、分厚い資料を手に持ってウチに報告をしに来た。

 

「アトキン先生、我々セルバンデス騎士団による調査の結果、悲惨なことがわかりました」


「もう何を言われても絶望するさかい、遠慮せんと言うてくれ」


「高野エリアの所在ですが、一七箇所確認されました」


 うわー。あと一七個もクリアせんとあかんのかいっ。


「それだけではありません。以前、クゥハさんが領地占拠を断りましたよね? それによって、ボスが復活しました。よって、全部で一八箇所となっています」


 うっぎゃあ……。


「すいません。アトキン。そんなことなら、領土を占拠しておけばよかったですね」


「ええって。あんたが領主になっても、大したことはできへんやろ?」


「はい。腐らせて終わりかと」


「だったら、もうええやん。また取り返したらええ話やさかい」


 とはいえ、杞憂な気もする。


「別に全部の領地を奪っても、仕方ないんよなあ」

 

 あのまま放っておいても、よさそうだが。


「ダメですよ、アトキン。また襲われますよ」


「そっかー」


 どうせ、地道に攻略していかねばならんと。


「あーあ。軽く殺意を覚えるなあ」


 まさか、高山エリアがそんな仕様になっていたとは。


「山の一つ一つに、支配者がいたとは」


「おそらく、全領土を取られることを見越して、ああいった仕様にしたんかもしれん」


「なるほど。あなたのような侵略者の心を折ろう、というわけですね?」

 

「せやねん」


 地味だが、効果的すぎる。


 現にウチは、すっごいめんどくさい。


 潰すべき拠点は、まだまだ多くある。

 かといって放置すると、開拓したくても度々襲撃される。

 いちいち拠点を潰しにいかないと、平穏は訪れないわけだ。


「はあー」


「手伝いますよ、アトキン。こうなれば、一蓮托生です」


「どうやろうか?」


 なんかもっと、効果的な方法があるはずだ。

 テネブライが、こんなクソ仕様を放置するはずがない。


 どこか、抜け道があるはずだ。


「カニエ、ちょっとええか?」


「なんでしょう?」


「なんかさあ、この拠点が多いって仕様は、どうもフェイクくさいねんよ」


 そこで、拠点別に規模の違いはあるかどうか、尋ねてみた。


「さすが先生ですね。目の付け所が違いますね。たしかに高山エリアは、大小や高い低いなどの特徴がそれぞれありました。やはり先生は、天才です」


 やめてくれ、めんどくさがりなだけだっての。


「実はですね、ちょっと妙な拠点がありまして」


 カニエが、地図を広げた。【テネブライ:高山エリア】の具体的なマップである。


 星の部分が、高山エリアのボスがいる拠点だ。

 

「この星を線でつなぐと、特殊な魔法陣っぽくなるんですよ」


「ほおーん」


「で、その中心となるのが、ここなんですよ」


 高山エリアで最も高い山が、中央に位置している。

 

 どうも、ここから高山エリアのボスが産まれているそうなのだ。


「このポイントさえ攻めてしまえば、ボスを一網打尽にできそうや、と?」


「そうなります」


 ならば、やることは一つだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る