第60話 幼女と、報復のイーストエルフ

 弟子のカニエから報告を受けて、ウチは外に出る。


 超高度から、イーストエルフがこちらに向かって光芒を放っていた。この間倒した個体と、色が違うだけだ。あとはすべて、同じ形態である。


 冒険者が対処しているが、攻撃がまったく届かない。


「これは、ウチの出番やな」


「アトキン。ワタシは、冒険者の避難を先導しますね」


「頼むで」


 ウチの意図をわかってくれているようで、クゥハが率先して人払いを引き受けてくれた。


「おーっ、こっちだぞー」


 メフティも駆けつけて、クゥハといっしょに住民を避難させる。


 それでも、イカのバケモノは攻撃をやめない。


「【フィールド・プロテクト】!」


 ウチは魔法で屋根を作って、広範囲をカバーする。


 それでも、自律兵器の一つが障壁をすり抜けて攻撃を放つ。

 

「【ガード・スキン】」


 ウチは触手で、ピンポイントのバリアを張る。

 

「クソが!」


 一旦結界を解き、自律兵器のところまでダッシュで接近した。妖刀で、敵の自律兵器を切り捨てる。

 

「カニエ、来てんか! ウチの代わりに、防護障壁を頼むで!」


「はい。【フィールド・プロテクト】」

 

 カニエが避難民の元に駆け寄って、上空に防護障壁を展開した。さすが我が弟子、ウチより防護範囲が大きい。


「あんたも守ったるさかい、防御に専念してや! メフティは、カニエに襲いかかる魔物がおったら対処してんか!」


「はいなー」


 デカい斧を担ぎ、メフティが周囲に目を光らせる。


「おお、デカいのが来た!」

 

 さっそく、魔物が現れたか。身体がメカメカしい、大サソリである。


 冒険者が束になって攻撃しているが、硬い装甲をぶち抜けない。

 

「どりゃ!」


 メフティが、その甲羅ごと斧で粉砕した。力技っぷりが、クゥハの影響をモロに受けているなあ。


 あっちは、メフティに任せていいだろう。


「おまっとさんや。派手に行こうやないか」


 バイオジャケットの推力を利用して、ウチも飛ぶ。


「空を飛べるんは、アンタだけとちゃうんやで」


 まあ、ウチは飛ぶといっても「浮く」に近いのだが。


「我が領域に、触れるな」


 イカ魔物の頭部から顔が現れて、言葉を発する。

 

 ダゴンの上位種も言葉を話していたが、あちらはカタコトだった。


 こちらは流暢に、言語を発している。それでも、抑揚がない。話すというより、「対話用の音波を、言葉に翻訳している」印象を受けた。彼らにとって、言葉はあまり意味をなしていないのだろう。「話しても、わかり合えない」ことだけは、わかった。

 

「お前こそ、ケガしたくないんやったら、ウチらの領土に入ってくんなや」


「ここは本来、闇の者の領域。部外者が立ち入ってよい場所ではない」


「侵略してるん自覚は、あるで。せやけど、外に出て領域を拡大し始めたんは、あんたらが最初やねんで」

 

「言葉は不要か。ならば、どちらかが倒れるまで続けるのみ」

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