第59話 報酬アイテムを、量産型にまで小型化する幼女

「アトキン。ほんとにあなたは、人間のような戦い方をしますね」


「元々、人間やさかい」


【荒野エリア】のアジトに戻って、ウチは装備の見直しをする。


「どうして、そんな戦い方を? あなたがバケモノになれば、イーストエルフとの戦闘だって、もっと有利に進められたはずです。なのに、あなたはそうしない」


 よく見ているなあ。さすが、頼りになるお隣さんだ。


「とはいえ、怪物になるのを恐れているのではない。意図的に、怪物になる選択肢が、ないように思います」


「ないよ。ウチは、魔法使いやからな」


 魔法使いにとって、魔法は「精霊からの借り物」だ。自分の力ではない。


 たとえ精霊と同じような力を得たとしても、魔法使いは驕ってはならないのだ。


 そんなヤツから、道を踏み外す。「自分最強」と思い込んで、魔物への道へ進む。


 ウチは魔物になったが、魔法使いとしての一線は越えないつもりだ。


「【葡萄酒の魔女ソーマタージ・オブ・ヴィティス】の称号を守ってらっしゃる? あなたらしくもない」


「いや。魔道に堕ちたやつを、何人も見てきただけやで」

 

 力に溺れるやつは、力に振り回される。


「バケモンになったからこそ、バケモンゆえの限界も見えてきたんや」


 ウチだって、有り余るパワーを思う存分ふるいたい衝動はあった。


 しかしいろんな魔物と戦うにつれ、その感情は抑えられている。


 いたずらにパワーを振りかざすだけでは、勝てない。


 相手も、同じようなパワーをもって、ウチを潰しに来ているからだろう。


「それにアレや。ハイエンドやと、修理費がシャレにならんのよ」


 ハイエンドは、魅力的と言えば魅力的だ。

 しかし、修繕にどれくらいの費用や物資が必要なのかわからない以上、下手に手を出せない。


 どういった物資が必要なのか、費用は?

 一日二日で直せるのならともかく、何ヶ月もかかるようなアイテムなら、持っているだけ無駄である。


 ならば、取り回しのきく量産型アイテムにまでダウンサイズしたほうが、自分たちで直せるから安全だ。


 実際ウチはアイテムの一つである【半永久気管】を、容量も重量も八分の一サイズまで小さくした。

 今回のボス戦で手に入れたアイテムと、融合させるためである。


「これは【フルオート・リアクター】っちゅう、自立型の兵器や」


 自分の周りに浮かばせて、脳波でコントロールして攻撃する射撃武器だ。


「【邪神ショット】は、これで撃ったらええかなって」


 ウチの肩のそばで、中型サイズの邪神ショットが浮かんでいる。


「これから先のことまで考えて、アトキンは取り回しに気を使うんですねぇ」


「最初のライバルが、あんたでよかったわ。あんたやなかったら、そんなことに気づかんかった」

 

「それって、ワタシのファイトが雑だといいたいのですかぁ?」


「でやろ? アハハ」


 二人して、冗談を言い合う。

 

 その瞬間だった。


 アジトに、地響きが。


『先生! 敵襲です。イカのバケモノが、空から【荒野エリア】を狙い撃ちしています!』

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