第58話 今度は幼女の番

[テネブライ【高山エリア】のボス、【イーストエルフ】、討伐完了しました]


 脳内に、アナウンスが流れた。


 さっきの魔物って、【イーストエルフ】って名前だったのか。日本語でいうと、『天狗』ってわけか。


「アトキンって、ボスを倒した後に、必ずアナウンスが流れるんですね?」


 今回は、クゥハにも聞こえたようだ。 

 

[これにより、高山エリアの所有権は、【アークゥハート】のものとなります]

 

「あ、いりません」


 クゥハはあっさりと、高山エリアの所有権を放棄した。


「なんでよ? もらってええんやで?」


「もう一匹いるので」


 たしかクゥハは、あのイーストエルフはツガイだと言っていた。つまり、同じ魔物がもう一体存在する。


「ソイツは、アトキンが倒しますから、そうなったら、アトキンのエリアにしてあげてください」


[……承諾しました]

 

 ウチは「ちょっとまった」と、ダメ元で運営に問いかけた。


「あのやあ? 経験値……っていうんかな? イーストエルフとの戦闘経験は、クゥハの強さに反映されるんやろか?」


 そういう概念がこの世界に存在するのかは、謎だが。 


[反映はされます。アイテムも、手に入ります。ただし、エリアの所有権を得るには、ボスとの再戦が必要です]


「ほうほう。ご丁寧にどうも」


[では、イーストエルフとの戦いを再開します]


 さあ、はじめようやないか。


 細い金属質のボディを持つボスが、再度現れた。肩の上に浮いている自律兵器も、同じだ。


 まずは、肩の自律兵器がウチを取り囲む。


「ダッシュ!」


 ウチは全身のスラスターを稼働させて、回り込まれないようにした。


「ついてきおった!」


 さすがに素早い。


 敵が、レーダーを撃ち出す。


 今度はスライディングで、敵のレーザー攻撃をかわした。


 足で攻撃を滑り抜けながら、【邪神ショット】で、自律兵器を撃ち落とす。


 邪神ショットなんて、数撃ちゃ当たる【マシンガンモード】だ。当たれば壊せる。当たればそれでいい。


 とにかく、この手の当てにくい相手には、継戦能力の方が大切。「一発で当ててドヤァ」なんて戦法は、それこそクゥハに任せる。

 ウチは腐っても、一般人だ。転生者ではあっても、超人ではない。


 まだ、結構な数が残っていた。


「せやったら! 妖刀・丹亀尼タンキニ!」


 ウチは蛇腹刀の、丹亀尼を装備する。

 蛇腹を伸ばし、ビットの一つに突き刺す。


「そりゃそりゃあ!」


 刺したビットを振り回し、他のビットに攻撃した。


 面白いように、自律兵器が壊れていく。


「回転斬りがきます!」


 イーストエルフが舞い上がり、降下してきた。


 腕に黄色い閃光が、ほとばしっている。


「おおおお!」

 

 根性で、ウチは回転斬りを回避した。


 これはローリングや、スライディングでかわすのは難しい。もし速度を落としてしまえば、硬直を狙われて真っ二つになる。


「あっぶな! 殺意マシマシやんけ!」


「アトキン、相手の硬直を狙って、剣を突き刺しなさい!」

 

「簡単に言うなや!」


 そんな芸当ができるのは、お前だけだ。


 とはいえ、相手のパターンはだいたいわかってきた。


 チマチマとなるが、反撃できるかも。


 回転斬りを、キワキワで回避する。


 硬直はたしかに、一瞬だけ存在した。


 そこをどう攻めるか。


「邪神ショット!」


 ヘタレなウチは、邪神ショットで少しずつ相手の体力を削ることにした。


「小心者ですね。勝負なさいよ」


「できるかっちゅうねん!」


 なんとか、突破口を。


「丹亀尼!」


 続いての硬直で、丹亀尼を蛇腹状にして突き刺す。


「大ダメージが出ましたよ!」


「お?」


 これは、パターン入った?


 どうやら、魔法攻撃より、物理のほうが効果がありそう。


 その後、丹亀尼で突く作戦に移行した。


 数分かかったが、どうにかイーストエルフに土をつけることに成功する。



[高山エリアの所有権が、アトキン・ネドログに移りました]


 なんともしまらない戦いだが、勝てばいいのだ。


「もう、三体目とかは、おらんよな?」


「今のところ、気配はありませんね。ですが、リベンジされる可能性は高いです」


「せやな。きばっとこ」


 


 クゥハのいうとおり、その機会は唐突に訪れた。

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