第48話 幼女 対 巨大戦艦

クジラ型巨大戦艦が、大きく口を開けた。


「特大の魔力砲射が来よる!」


 高熱の魔力が、クジラの口から放射される。


 魔力砲は岩を削り、地上まで突き破った。


 しばらく、クジラは動かない。

 

 この姿で泳ぎ慣れてないウチは、回避するのがやっとだった。


 もうちょっと、触手の動作を理解しないと。


 カパカパと、クジラのヒレが広がる。


 ヒレがブチブチと、クジラの体から離れた。


 一つ一つのヒレは、ウチの体くらい大きい。

 

 ヒレがカッターとなって、渦を巻いてこちらに突進してくる。


「なんの!」


 ドリル状に殺到するヒレカッターを、ウチはスイスイと泳いで退けた。


「おいたするやつには、こうや!」


 抜刀して、妖刀でヒレカッターの軌道を変える。


 両断されたヒレカッターの欠片が、ランダムに動いて他のヒレを攻撃した。


 無軌道になったヒレのカッターが、他のヒレに激突する。


 クジラの頭部にいるヒュドラが、腕を回す。生き残ったヒレカッターを、再度集結させた。


 さっきの倍以上の数が、ウチに迫る。


「なら、ホンマの力を見せたるで!」


 ウチは、妖刀を振り回した。


「ウチがお前を、切り捨てる!」

 

 妖刀が、蛇腹状に伸びる。


 新体操のリボンのように、ウチは蛇腹刀をくるくると回した。


 ヒレの渦より、遥かに大きなドリルを形成する。


「おおおおお!」


 そのまま妖刀でドリルを作り続けて、ウチも突撃した。


 ヒレの渦を、妖刀の回転で弾き飛ばす。


 行き場を失ったヒレが、力なく海水に浮く。ヒュドラの操作も、受け付けない。

 

「どないや! バケモン! これが【妖刀:丹亀尼タンキニ】、真の姿や!」

 

 ヒレカッターを失ったとしても、まだ魔力砲台が生きている。ちょうど、チャージが終わったようだ。


 クジラが、口を開ける。その大口は、最初の一撃ですっかり焼け焦げていた。まだ、開発段階だったか。もし、ウチの突入が遅かったら、完全体で地上に上がっていただろう。

 今までのコイツは、まだメンテ中だったのかもしれない。


「全力で来いや。ぶった切ったる!」



『ムチャですよ、先生! さっきの威力、見ましたよね!? 人間が抵抗できるような出力じゃありませんよ!』


「だからや! だからこそ、付け入るスキがある!」


 大艦巨砲主義とは、その大仰な発想自体が弱点だ。

「出力の維持」、「大型ジェネレータ開発費用」、「それに見合う費用対効果」、「そもそもの威力」など、大艦巨砲主義にはリスクが伴う。

 

 ぶっちゃけ、ミサイルを一発作ったほうが、よっぽどマシだ。

 この世界に、精密なミサイルなんて到底できそうにないが。

 ウチなら、そうする。


 だが、コイツらはその発想すらない。


 それゆえ、ウチが抵抗することに意味がある。

 

 最初からヒュドラを量産していれば、勝ち目は合ったろうに。


「残念や。戦艦なんかに執着した親玉を呪えや!」


 ウチは、刀を鞘に収めた。居合の構えを取る。


 この鞘は、ウチの内なる魔力を増幅してくれるのだ。


 お互い、これが最後の一撃となる。

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