第49話 幼女の一撃、巨大戦艦を断つ
見える。クジラの魔力砲の威力が。その砲塔が、もうボロボロなのを。
「さあ、究極の一発、ウチにブチかましてこいや! あんたの渾身の一撃、受け止めたる!」
腰に刀を構えて、抜刀の姿勢に。
クジラ戦艦の巨大砲が、ウチに向かって放たれた。
「すりゃあああ!」
刀を引き抜いた瞬間、ウチは「気」を放つ。魔法使いであるウチの場合、「魔力」に当たるが。
鞘の中で練り込まれた、強固な魔力を、抜刀とともに撃ち出した。
クジラから撃ち出された魔力砲は、ウチの刀によって両断される。左右に広がって、ウチには当たらない。
刀身が伸びていき、クジラの顔面にめり込む。
居合の要領で、ウチは戦艦ごと魔力砲を切り捨てる。
もちろん、動かしていたヒュドラも、両断された。
ヒュドラはクジラ型戦艦ごと、爆発して吹っ飛ぶ。
* * * * * * * *
――クゥハ視点――
クゥハたちは、ポーレリアに設置した簡易アジトで、アトキンの様子を伺っていた。カニエのフェアリーを通じて。
「マッジか! アトキン、勝っちゃった!」
クゥハの側で、メフティが飛び跳ねながら喜ぶ。
「まったく、ヒヤヒヤさせるぜ、あの邪神様にはよお」
妖刀を作ったベヤムが、ハンカチで汗を拭う。
「それにしても、オレが作った妖刀が、あんなバケモノ相手に通用するとはな。恐れ入ったよ」
「あなたの鍛冶技術は、テネブライの魔物にも通用するのです。もっとも、テネブライの鉱石があればの話ですが」
「だよな。素材の力だよな、あれは」
「いいえ。テネブライにあそこまで武器を作成できる技術者はいません」
テネブライに眠るたいていの武具は、誰かが作ったものではない。魔力が自然界の鉱石や樹木に触れて、変質したものだったりだ。中には、魔物の死骸が武器になったりもするが。
「テネブライの魔物は、それだけで強いですからね。道具が必要ないんですよ」
「だから、鍛冶が発達しなかったわけか」
「はい。丹念に磨き上げた武具は、そこいらのレアアイテムなんかより、遥かに価値がありますよ~」
だから、ベヤムは誇っていい。
「ともあれ、先生が無事でよかったです」
「いえいえ。むしろ、これからかも知れませんねぇ」
クゥハは、アジトから外に出る。
「みなさんは、外に出ないでくださいね~」
外出を控えるように、クゥハはアジトにいるメンバーに声をかけた。
直後、ダゴンの群れがアジトに向かって襲いかかってくる。
「やっぱり、ガマンできませんでしたか~」
アトキンの言ったとおりだ。
ボスは聞き分けがよくても、手下までがそうとは限らない。親玉が倒されたとあっては、自分たちの種の存続に関わる。こちらを撃退して地上を手にしようとするのは、当然の道理だろう。
だからアトキンは、クゥハに地上の留守を任せた。
「任されましたので、安心して帰ってきてくださいね~」
軽く大剣をふるっただけで、クゥハは無数のダゴンを壊滅させる。
なにも出でこなかったかのように。
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