第六章 海底神殿! 幼女は魔族の親玉と勝負する!(そこら中で派手にやったる

第43話 幼女のポリシー

「アトキンとあろう人が、随分と慈悲深いですね。敵を逃がすなんて。横着なのは知っていますが」


 大剣を磨きながら、クゥハがウチをそう評価する。


 まあ、横着なのはウチも認めるけど。


「手負いのヤツなんてシバいても、ウチの強さは広まらんさかい。相手の強さが万全で、なおかつ罠だらけの相手側ホームをぶち壊して、初めてウチの恐怖が伝わるんよ」


 ウチの最強理論を耳にして、クゥハが唖然としている。


 あのダゴンは、エネルギー切れだった。やはり地上に上がる際に、ムリをしているのだろう。

 テネブライの魔物は、燃料である瘴気を浴びないと活動ができない。パワーを供給できないため、地上での行動が制限されるのだ。


「カニエ、アトキンってこんな人なんですか?」


「そういう人です。先生は相手の土俵に踏み込んで、土俵を叩き割って肥料にする人なので」


 一番弟子のカニエは、ウチをバケモンのように語った。

 また、クゥハがポカーンとしている。


「だってウチは、【純魔】やで。純粋な魔法使い、略して純魔。相手の技を一つも受けずに、完封かて可能や。その気になればな。そんな勝ち方、おもろいんか?」


「面白い・そうじゃないで戦闘を楽しんでいるのは、先生だけですよ。相手に何もさせずに倒すのは、むしろ本来は合理的な戦闘術です。それをあなたは、面白くないという理由だけで逃がした」


 そうだ。


 これで、もう一度街を襲う機会を与えてしまった。

 なので、ウチは大急ぎでダンジョンを攻略する必要がある。


「せやけど、ウチかてただ帰したわけやない。ほれ」


 ウチは、手鏡型のセンサーを見せる。


「それは?」


「探知機の信号を知らせる、センサーや」


 ダゴンが帰っていく際に、小型の探知機をアイツの体に取り付けたのだ。

 その結果、ダゴンは海底洞窟らしき地点に潜んでいるとわかった。

 さらに、海の底には神殿もあるらしい。

 まさに、ボスのネグラと思しき場所ではないか。


「で、海底神殿に向かう方法を探しているところねんか。ベヤム、調子は?」


「ダメだな。崖の側面から叩けるかと思ったが、思いの外、底が深い」


 海底神殿に入れる抜け道なども、ベヤムに探してもらった。しかし、空振りに終わっている。


「アトキーン。お客さーん」


 メフティが、新聞記者風の女性を連れてきた。

 女性は、仰々しいヨロイを着た老騎士を引き連れている。


「昨日ぶりですね、アティさん。トルネルです」


「おお、せやけど、なんのおもてなしもできへんで。堪忍やで」


「いえ、結構です。街を救っていただけたのに、こちらこそなにもせず」


「ただ」と、トルネルが切り出す。

 

「海底神殿に入る方法でしたら、ございます」

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