第42話 王女と幼女、共闘する

「やっぱり、トルネルやったんか」


 カニエに調べさせたのは、正解だった。あの子は王族に嫁入りしたので、ある程度の国家責任者と面識があると思ったのだ。それで探らせてみたら、ビンゴもビンゴという。


 第七王女が、テネブライを調査していたとは。

 

「飛空艇で、わたくしに声をかけてくださいましたよね? アティ様と声が似ていらしたので、もしやと思ったのですが」


「ウチは、ひと目見てわかったで」


 たとえカニエからあらかじめ教えられていなかったとしても、ウチはミネルヴァ第七王女がトルネルだと見抜く自信がある。


「さすがです。アティさんに、隠し事はできませんね」


「これで、お互い隠し事はナシやな」


「はい」


 それはそうと、どうして雑誌編集者に変装までして、自分でテネブライを調査しようとしたのか?


「我々は、ずっと戦ってきました。その突破口がテネブライ本土にあると踏んだのです」


 第七王女ともなれば、そんなに世間からは顔を知られていない。邪神の存在を調査するため、トルネルことミネルヴァはフットワークの軽さを武器にした。


「アンタのオトンって、国王やろ? 反対されんかったん?」


「国王には反対されましたが、やはり気になってしまって。テネブライを人の住める土地にした神の存在を、我々は見過ごすことはできず」


 テネブライは、まだ未知な部分が多い。

 そんな土地を、人間が開拓している。

 どんな人物なのか。開拓した方法は?

 ミネルヴァ王女は、どうしても気になった。

 

「で、初めて見た印象はどない? やっぱり幻滅したんかな?」


「幻滅なんて! あなたがテネブライを人の住める土地にしたと、身を持ってわかりました。ありがとうございます」


「いやいや。それほどでも。とはいえ、トルネル……王女?」


「トルネルで、結構ですよ。幼名なので。プライベートだと、きょうだいにはそう呼ばれています」


「ほんならトルネル。ここから先は、ウチだけで行くで」


「しかし!」


「あんたがテネブライの【海洋エリア】と戦ってるんは、承知した。ウチも襲われたからな。せやけど、あんなんは人の手には負えん」


 今回の敵は、本格的な強さで向かっている。殺意の本気度が高かった。ひとまず撤退してもらったが、アイツが万全な状態で向かってくるなら、こちらも全力を出す必要がある。


「わたくしは、足手まといでしょうか?」


「そうやない。あんたには、あんたにしかできへんことがあるやろ。そういうこと!」

 

 ポーレリアの安全確保や、街の発展。

 海洋エリアが開放されたときの、他国との交流。

 やるべきことは、たくさんある。


「あんたには、テネブライとの連携もお願いしたいねん。いけるか?」


「ポーレリアを代表して、あなた方との外交をお約束します」


「王様に断りいれんでも、ええの?」


「ねじふせてさしあげますわ」


 ウチは、トルネルと笑い合う。


「ほな。地上は頼むで。クゥハ! メフティ! 帰ったら準備するで! カニエは、王女様と外交のお話を固めていってや! 場合によっては、セルバンデス王の許可もいるさかい」


「承知しました。では、お気をつけて」


 とにかくウチは、海洋エリアに向かうための準備をしに戻った。



(第五章 おしまい)

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