第38話 幼女、海なしの国を観光

 ウチは、ポーレリアを観光をすることに。


「アティさん、ガイドの必要性はありますか?」


 トルネルが、提案してきた。


「おおきに、でも、別にいいかな? 初見は、自分で回ってみたい」


「わかりました。では、編集社の方にいますので」


 トルネルとは一旦、別れることに。

 

 商業ギルドの隣に、編集社がちゃんとある。


「名刺の住所で、間違いありません」


 カニエが、名刺を確認した。

 

「ほんなら、急遽作ったのかもしれんな」


「ですね。その可能性が高いです」


「そこまでの経済力が、あるっていうことは……」


 あの子って結構、地位が高いのでは?


「誰か一人、トルネルにくっついといて」


「私が行きます」

 

 カニエが、トルネルの尾行に名乗り出た。


「ムリしなや」


「大丈夫です。追いかけっ子は、娘の世話で慣れていますので」


「ほな、ええかな? 気をつけて」


「はい。アトキン先生も」


 カニエとは、別行動をする。


「アトキン、スイーツの屋台があるので行きたいです」


「オイラも!」


 食いしん坊な二人が、ウチを引っ張り回す。


「はいはい。かまへんよ」


 他にも雑貨屋やアイテムショップなどがあるが、クゥハもメフティもそっちには目もくれない。ひたすら、色気より食い気である。


 まあこの二人は、マジックアイテムなんてなくても強いからなあ。


「ところでアトキンは、拾ったダゴンの欠片はどうしたんです?」


「たこ焼きにして食べた分以外の、か?」


「はい」


「もう取り込んだで」


 培養液の残量も心もとなかったので、仕方なく体内に同化させた。

 

「気が早いですね。変化はありませんでしたか?」

 

「今のところは、ないかな? せやけど、めちゃレベルアップしたで」


 気持ち三〇%ほど、レベルが上っている。


 というか、そういう個人的な話題を振るくらい、この街は特になにもない。


「農作物は、たしかにウマい」


「はい。露天のモモとか、最高でした」


「でも、それだけやな」


「ですねえ」


 マジックアイテムのショップも見てきたが、いたって普通の品ばかりである。


 とはいえ、それはテネブライを拠点にしているウチの視点からすればの話だ。

 王都よりは、アイテムの種類が多い。ダゴンの手下などの戦闘が、あったからだろう。ドロップアイテムの質は高そうだ。


「あと、やたら海沿いに兵隊が多いな」


 よく見ると、テネブライの【海洋エリア】沿いに、冒険者ギルドが設けられていた。

 騎士団の兵舎まである。

 共同で、襲撃の対策をしているのだろう。


 今はなんの被害もないようだが、油断はできない。


「アトキン、大変! 敵が襲ってきた!」


 ポーレリアに、大量の魚人が上がった来たという。


「ウチらも、加勢するでっ!」


 ギルドと共同して、海から上がってくる魔物たちを蹴散らしていく。


 しかし、多勢に無勢。どんどん戦線が押し込まれた。


 このままでは、街にモンスターが入り込んでしまう。


「ウチがオトリになって、一網打尽にしたらぁ!」


「ムチャですよ。これだけの数!」


「あんたは城壁を守っててや! ウチはやるといったら……?」


ウチの上空で、なにかが光る。

 かと思えば、海に特大魔法が飛来してきた。


 爆音を上げて、カニやヒトデ型の大型魔獣が吹っ飛ぶ。


「なんや? 空爆か?」

 

 空爆が発生し、海辺にいた魔物たちが壊滅した。

 

「アトキン、アレを!」

 

 どうやら街から、戦闘型の飛空艇が飛んできたようである。

 あの旗は、ポーレリア騎士団のものだ。

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