第30話 うわ、メカ幼女つよい

 ウチのアイアンゴーレムは、メフティのゴーレムより一回り小さい。それでも、メフティ以上の出力を出せる。

ズングリムックリ感を残しつつ、ドワーフよりも馬力のあるキャラをイメージした。


「アトキン、いつの間にそんな生産スキルを? 【ゴーレム生成】を取っていたのは、メフティの遠隔操作ゴーレムでわかっていましたが」


「こういうときのために、スキルポイントを貯めとったんっ、よっ! っと」


 ウチは、ゴーレムの斧をスイスイかわす。


 うん、動力も悪くない。リアクターもちゃんと機能しているから、重さも平気である。



 ゴーレムを自分のボディとして扱う【ゴーレム操縦】は、かなりの高いレベルと、大量のスキルポイントが必要だ。それでも、取る価値はある。ドワーフと共闘するか敵対する可能性が高かったためだ。

 ドワーフが敵になるなら、こちらも相当の武装で挑まなければならない。ドワーフの鍛冶屋は、魔法を遮断する装備を作れるからだ。


 魔法を無効化するが、武装は重くなる。

 そのデメリットを払拭するには、こちらが筋力アップするしかない。


 とはいえ、純魔のウチでは筋肉量に限界がある。

 

 なので、触手の出番だ。

 触手に腕力ポイントを振って、ある程度重い武装を持ち上げられるようにした。

 あとはリアクターで魔力補強をして、ムリヤリ重いものを持ち上げている。最初はきついが、徐々に慣れていけばいい。

 こんな重武装ボスを相手にすることなど、めったにないだろうし。


 

 初の実戦投与だったが、これなら!


「どつきあいかって、受け立つで!」


 ウチは、爪を真正面から受け止める。


 反撃で、カニのハサミで殴った。


 あちらの攻撃は防ぎつつ、的確に相手へダメージを与えていく。


「あーい! あーい! あーい!」


 掛け声とともに、殴っては殴られ、蹴られては蹴り返した。


 これが、やりたかったんだろ? ドワーフよ。正面からの殴り合いを。


 ウチもだ。

 やっぱりケンカの華は、足を踏ん張りながらの殴り合いだろうが。

 スパスパ避けてこっちだけ一方的に当てていくとか、そんなことは考えない。

 

 当たることを前提にして、機体がボロボロになっても殴り続ける。

 

 案の定、ウチの作った鋼鉄のボディは徐々に崩れていった。脇腹には爪によるヒビが入り、両足もズタズタになっている。人工筋肉の役割を果たしているツインテも、千切れそうだ。


 それでいい。ハナッから五体満足で勝利なんて考えていない。それだけの相手だ。

 

「あーい!」


 最後の力を振り絞って、相手の足を無力化した。


 こちらだって、やみくもに殴っていたわけじゃない。

 単に、相手の関節を打ち負かしただけ。

 どうにか、せめぎ合いには勝ったようだ。


「とはいえ、こちらもボロッボロやな」


 追撃をしようにも、足が動かない。


 それでも、ウチは魔力を絞り出してドワーフにトドメを刺す。


「アンタとのドツキ合い、悪くなかったで!」


 最後は、きっちりと脳を潰させてもらった。


 相手の攻撃をすべて受けきって、そこからの急所攻撃だ。ボスも、納得してくれるだろう。


[戦闘終了。【荒野】エリアが開放されました。今後、このエリアの支配権は、【邪神:アトキン・ネドログ】となります]


 脳内に、アナウンスが流れた。


 ボスや遺跡に刻まれた文字が、徐々に消えていく。フロアボスの支配から、資材が解放されたのだ。


「はあああ……」


 ウチは、着ているゴーレムを解体した。

 あーあ。すっかり、ボロ雑巾みたいになっている。

 こんな状態まで、よく持ちこたえてくれたものだ。

 それだけ、ドワーフの攻撃は凄まじかった。ウチの価値観がバグるほどに。

  

「終わりましたね。アトキン」


「どっちかっていうと、これからやな」

 

 この資源を、どうやって活用するか。今から、楽しみで仕方がない。

 

「それにしても、元々ここを支配していたボスは、何者やったんやろう?」


「ドワーフでしょう?」

 

 ドワーフがフロアボスになったなら、テネブライの支配権はドワーフに移っていただろう。テネブライは浄化されて、人が住める場所になったはず。

 しかし、そうはなっていない。


「やっぱり、ここにあのドワーフゴーレムを配置したやつがおるんや」


「そのボスを倒さない限り、本当の意味でテネブライは手に入らないと」


「せや。とにかくひとまずは、勝利を祝おうやないか」


 まずは、勝利報酬のチェックである。


【遺跡】自体を、手に入れた。これは調べた結果、やはり移動要塞だと思われる。これを修理すれば、今後はこれに乗ってあちこちのエリアを探索可能になるだろう。ひとまず最優先で、修復する。


【鍛冶】と【機械文明】のスキルが、手に入った。これがあれば、鉱石の良し悪しを分析できる。また、機械文明の技術さえあれば、移動遺跡の修理も成功に近くなるはずだ。

 

 これは、様子を見てグレードアップしていくか。

 

 しばらく、荒野に滞在をすることになる。荒野用の拠点が必要だ。

 移動要塞を手に入れたので、ウチは拠点を移すことにした。


「カニエ、ベヤム! 仮拠点を、そのまま荒野に移してんか?」


『承知しました。ベヤムさん、お願いします』


 カニエが合図をして、ベヤムが『OKだ』と返答をする。


 数分後、仮拠点である移動馬車が遺跡前に到着した。


「おっしゃ。あんたらを待っている間に、井戸は掘れた。これでしばらく、仮拠点や」

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