第5話 幼女レベルアップで効率アップ
どうやらエンドコンテンツにも、レベル概念はあるらしい。
ウチのレベルは現在、【五四】である。これだけでも、もう世界の半分を敵に回しても指一本で勝ててしまう。それくらい、強くなっていた。
第一、ラスボス級の【魔王】でさえ、四〇台で倒せてしまったのである。
おそらく、この世界の魔物はそこまで強くない。エンドコンテンツであるこの【テネブライ】の森に比べたら。
テネブライに入ってからが、本番ってわけか。
「まずは、ステータスのポイントを割り振ってと」
『ステータス・オープン』と、頭の中で念じた。
ウチの能力値が、虚空に表示される。
*
名前:アトキン・ネドログ
称号:【
職業:魔法使い。上級職【ウィザード】
*
「なんや、この【邪神?】って……?」
ウチは、首をかしげる。
なんか新しい称号が、手に入ったのだが?
特に、ハテナの意味がわからん。
邪神なんか、邪神じゃないんか、自分でもわからんとか。
「まあ、ええわ」
おいおい、わかってくることだろう。
謎の美少女ってことで、大目に見ておいてもらうか。
「ポイント振りや」
レベルは五四。所得スキルは、攻撃魔法が色々。治癒魔法が必要最低限。ここは省略っと。
ステータスポイントは、五ポイント手に入った。
「魔力に三、腕力に一、敏捷性に一、足しておく、と」
スキル熟練度は、一三二だ。内訳は以下のとおり。
*
各種属性魔法:七二
治癒能力:三〇
錬成能力:三〇
残りポイント:一六
*
とはいえ、レベルの上がり方も鈍化しているようだ。生まれ変わったからって、一からレベルの上げ直しってわけではないらしい。
別に、アトキン・ネドログにふさわしいスキルとかは、考えなかった。
今回のテーマは、リスタートである。
世界を救った【葡萄酒の魔女】としてではなく、一体の魔物として生活をするのだ。ちょっと変わったことがしたい。
以前は知識や戦闘力に、効率よく振り過ぎていた気がする。
違った色を出すのも、いいかもしれない。
「メシでも食べながら、スキルやビルドは考えよか。ほな、調理開始や」
昼食のウサギ肉とイノシシ肉を、フライパンでジューっと焼く。
ジビエ知識がないため、適当に魔法で臭みを消して、塩を振ってガブリ。
旅先でもこうやって食っていたが、まあまあの味である。
もっと本格的に薬草などを使って臭み対策をしたほうが、うまいのだろう。
でも、異世界のメシなんて雑でいい。こだわるなら、別の世界へ行けばいいのだ。
さてさて、どのスキルを取りましょうかねー。
「まずは、【テネブライの知識】は必須やろ」
さっそく、知識スキルを取得した。一ポイント入れるだけでも、効果があるらしい。これは便利だ。
【テネブライの知識:未踏の世界に生息する魔物や、動植物の知識を得られる】
「まずは、このムカデ。それとウサギとイノシシ」
[【ネテブライセンチピード】闇の森テネブライに棲む、オオムカデ。地面に棲んでいたが、闇の瘴気を浴びて巨大化した。岩もチーズのように切り裂くアゴを持つ]
[【テネブライラビット】:暗黒の森テネブライに生息する、ウサギ。元々魔物ではない。黒い森の瘴気を吸って、魔物化した生物。後ろ足でのケリは、岩をも砕く]
[【テネブライボア】:テネブライに生息するイノシシ。元々魔物ではなかったが、テネブライの闇の瘴気に吸い寄せられて棲み着いた。空気圧を足場にして、跳躍できる]
おっかねえ。
割と、ヤバい相手と戦っていたようだ。
あともうこいつらは、巨大ムカデ、巨大ウサギ、巨大イノシシでいいや。「テネブライなんとか」って、名前の前にテネブライがつくだけなら、覚える必要がない。
他に、食べられるものがないか、森を見回す。
「よっしゃ。キノコ系以外の大抵の魔物は、食えるみたいやな。ほとんどの草木も、種さえあれば育つっぽい」
これがわかっただけでも、めっけもんだ。
「あとは、この木の実の名前やねんけど」
ウチは、手に持っている赤い実を、【テネブライの知識】で鑑定してみた。
[【活力の実:赤】。赤い【活力の実】。魔法の使用で減少した魔力を回復できる]
ふーん。
赤があるってことは、他の色をした実もあるわけか。今回は魔力しか使っていないため、傷を負っていない。体力回復の果実があるなら、ゲットしておきたいところだ。そこまでピンチになればの話だが。
このスキルは、人に伝達させることも可能らしい。言葉を話せない相手・話が通じない相手と、コミュニケーションを取れるとか。
まあ、やる相手なんていないけど。
で、スキルの確認に戻る。
もう、戦闘系はいいや。どちらかというと、ステータスを上昇させたい。今ある戦闘スキルを、有効活用するために。だいたい戦闘スキルってのは、本人の地力が滞ると威力が頭打ちになりがちだ。
それに今は、生活力アップスキルが必要だろう。
「ふむ。いっちょ、取ったことのないスキルでも取ろうかね」
まず気になったのが、【ミニオン】である。これの有無次第で、作業効率が段違いになるはずだ。
とはいえ、ウチには弟子のカニエがいた。
「彼女の仕事を奪うのでは」と考えて、ウチはミニオンスキルを取っていない。
だが、今は全部の作業を一人でこなすことになるだろう。ミニオンスキルは必須だ。
さっそく、スキル【ミニオン】を取った。
モンスターの死体を、スケルトンに変化させる。木を切る、畑を耕すなど、簡単な命令を下す。人外でも、ガイコツに変形させられるのは、便利だな。
整地と畑の水やりは、彼らに任せよう。
面倒だった整地作業が、ウソみたいに捗っている。爆弾も、もう必要ない。なにより、会話不要というのがよかった。使役対象に感情があると、ご機嫌取りが必要になってくる。
そのうちペットビルドも取る予定だし、ミニオンは無感情のままでいい。
「岩山の滝から、水を引っ張ったろ」
割れた岩山の端から、滝が流れていた。調べてみたら、ろ過しなくてもきれいなまま飲める。瘴気まみれの森なのに、水はキレイとか。
スケルトンに指示を送り、岩石を集めてもらう。ミニオンに手伝ってもらい、人工的な河川を作り出した。
あとは、貯水用の地下水脈を作る。井戸も作って、これで飲水、生活用水は確保。
「ほな、あとは麦を植えてもらおうかな」
スケルトンたちに、麦を植えるように指示を出す。
後は生き残った培養液を用いて、成長を促進させる。
瘴気まみれの土で育つのかよと思ったが、大丈夫のようだ。すくすくと育っている。
ひとまず今は、これでいいか。
後はじっくり考えて、取っていくとしよう。まだまだ、スキルポイントには余裕がある。
改めて、岩山に目を通す。
割れた岩の間から、ダンジョンが見えた。未開の地テネブライの、天然洞窟か。いつか、あの中に入ってみるのもいいな。どんな魔物やお宝がいるのか、今から楽しみで仕方がない。
岩山の崖を見てわかったが、これは人工的な崖だ。天然で、こんな割れ方はしない。
つまり、この岩山を叩き割った何者かがいる。
すごいな。この岩を斬るやつがいるとは。
触ってみたところ、かなり頑丈な岩である。ツルハシで小突いてみたが、金属が通らなかった。魔法で溶かそうかな? そう考えるくらい、加工が難しい。
それを、ズバッと切ってしまうのだから。
葡萄酒の魔女さえ凌ぐ相手が、この森に生息していることになる。
となれば、一刻も早くステータスを上げたい。
今の自分は、ちょい非力すぎる。腕っぷしのいい物理系が相手になると、さらなる魔力ブッパが必要だろう。
腕っぷしのいい敵。たとえば、そう。あんな感じの……ん?
一体の、ヨロイを着た魔物がこちらに向かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます