10年ぶりに再会した幼馴染が変態お嬢様になっていたらどうすりゃいいですか
「い、いきなり何をするんですか⁉ 下着で人の顔面を隠すだなんて何を考えているんですか⁉ というか何を考えていたらそんな非常識な事をするんですか⁉ 常識がないんですか先輩は⁉」
「フ。今の行いの所為で今の私はノーブラよ? こんなにもエロくて血の繋がっていない年上の妹に甘えられるだなんて……フ。普通の人間なら喜んで当然」
「喜――っ⁉ う、うぅ……こんなの、嬉しくなんか、ない……ですからっ……!」
「フ。愛しい私の唯お姉様。たかが女性の下着を顔面に当てられたからってそんなに取り乱してくれると唯お姉様が私の事を性的に意識していると思って興奮させてしまうのをご存知ない? そのつれない態度の所為で私の女性器はもう濡れ濡れの濡れ。いつでも性行為OKよ?」
「私は先輩の奇妙な習性をまだ知らないんですよっ⁉」
「フ。あらやだそれは大問題。早急に確かめ合う必要があるわね……お互いの女性器の濡れ具合をね! 貝合わせしましょ貝合わせ! 分かりやすく言えば百合セックス! コミュニケーションは互いを理解する上で必要不可欠! 互いに分かり合いましょう! S! E! X! セックス! 子作りしましょ子作り!」
「どうして貴女は会う度にこうも精神的に疲れさせるんですかっ⁉」
「フ。今日の私は唯お姉様で頭がいっぱいで今も苦しい! だからこそ唯お姉様も私の事を意識したが為に苦しんでくれて本当に嬉しい! やはり愛は苦しいものじゃないといけないものね! そう! キツキツの女性器のように男性器を挿入した時みたいに! そういう訳で私は貴女が本当に大好きだからそれを証明する為にさっさと処女膜を出して。秒で破くわ」
「因みにっすけど、お嬢はあんな事を平気で言っていますけれど処女っす。初めては初恋の男の子に捧げるんだってうるさいっす」
「葛城」
「お嬢が何か言ってるけど聞こえないっすね。ともあれ使用人の愚痴を聞いてくださいっすよ。おかげ様でお嬢は暇さえあればエロ小説を嗜むどうしようもない美人さんになりやがったっす。顔で選んだら一生後悔するタイプの女がお嬢っす。お嬢は身体だけしか取り柄がないんでセフレ辺りで妥協した方が個人的にはオススメっすよ」
「フ。黙って聞いていれば言ってくれるわね葛城。そんなノリでもっと私を罵って! 私は唯お姉様から直々にメス豚認定されたエリートメス豚だからそんな罵詈雑言はご褒美でしかないもの!」
「そういう訳っす。10年の時を経て悲劇のヒロインからメス豚になったお嬢には何を言っても無駄っす。メス豚の耳に念仏っす。件の銀髪美少年にはとても見せられないっす」
「……なるほど」
葛城さんは壁に無断で穴を開ける人ではあるけれども、こうして個性豊かが過ぎる主従関係をまじまじと見せられると彼女は間違いなく常識人寄りの人間であった。
とはいえ、夢中になって下冷泉霧香の過去話を聞いていた私のすぐ後ろに変態がいた事を教えてくれなかったのは性格が悪いとしか言いようがなかった。
「フ。ところで葛城は私の過去を勝手に話していたようだけど?」
「したっすね」
「フ。減給の覚悟は出来てるみたいね」
「独断で話したおかげで天使さんがお嬢へ向ける好感度は上がったみたいっすけどね」
「フ。葛城は有能ね。今月はボーナスを支給してあげるわ」
「あざっす」
……もしかすると、葛城さんは私に情報提供をする為ではなく自分へのボーナス欲しさでこんな話をしたのかもしれない。
そう分析していると、下冷泉霧香は当然の権利と言わんばかりに私の隣の席に座っては私の腕に絡みついては、自身の両胸で私の腕を挟んできた。
「………………」
巨乳。
彼女は見た目通りの巨乳だった。
すっごく気持ちいい。
嫌々されている筈なのに、ずっとして欲しいまである。
「フ。唯お姉様が私の胸を堪能してくれて非常に嬉しい。とはいえ、今の唯お姉様が望んでいるのは私の身体ではなく私の言葉なのだろうけれど」
「え、えっと、それって、どういう……⁉」
「私が初恋の男の子の名前を覚えているかどうか、よ」
そう口にした彼女はそのままとても悲しそうな表情を浮かべてみせては、まるでそれが幻だったと言わんばかりにすぐさまその笑みをかき消してしまう。
「フ。こういうのって覚えていて当然っていう空気感とお約束があるけれども、流石に昔の事だから覚えていない」
「……本当に?」
「フ。本当。歴史ある下冷泉家の一員になる為の勉強がハード過ぎて、色々と忘れてしまったというのが実の所。それに10年以上も前の話だし、彼は素敵な良い子だからきっと里親に拾われて苗字も変わっているだろうから」
「……お嬢。命令すれば私がその男の子の事を調べるっすよ?」
「不要よ、葛城。下冷泉家の私に自由な恋愛はきっと許されない。だから、知ろうとは思わない。知っても悲しくなるだけだから……フ。本当に残念。そういう訳で代役の唯お姉様で性欲を発散するわ! 今日入寮したら唯お姉様に処女膜を捧げる! さぁ! 慰めックスしましょう!」
拝啓、天国の
私と貴女の昔馴染みと再会してしまった所為で、元々ヤバい私の生活が更にヤバくなりそうです。
「でも、お嬢が落ち込んだ時っていつもいつも1人でティラミスを食べてますっすよね? 未練ありまくりじゃないっすか。好きなのに嫌々別れた元カノみたいな行動しないでくれっす」
「葛城。それはちょっと恥ずかしいから流石に黙って」
「事実を言われたらコレっすよ。パワハラで訴えてやるっす」
「折角こうして泣ける猥談を話して唯お姉様への好感度を稼いでいたというのに葛城の横やりの所為で台無しね。悲しい……悲しいからティラミスが食べたい。ねぇ、唯お姉様。今日の入寮記念デザートはティラミスをお願いしてもいい? 用意できなかったら唯お姉様の処女膜を頂くわ」
「あ、あの……えっと、実は私、ティラミスを作った事が無くてですね……?」
「フ。あらそれは残念、じゃあ今日の食後のデザートは唯お姉様の処女膜ね」
「はいはいお嬢もセクハラはそれぐらいにしてくださいっす。お2方、コーヒーが出来たっす。さっさと飲めっす」
そんなこんなで私たち3人は暫くの間、無断で持ち込まれたコーヒーに茶菓子で舌鼓を打ちながら昼休みが終わるのを待っていた訳なのだが、実は幼馴染という可能性が急浮上してきた下冷泉霧香と同じ空間に居るという事実からか全くリラックスが出来なかったというのが実のところ。
そして、何よりも――。
「……心配してるかなぁ……」
「フ。茉奈さんの心配? この美少女にして美人先輩にしてエロも大好きな処女というお得でしかないこの下冷泉霧香が目の前にいるのに他の女の事を考えるだなんて……それでこそ唯お姉様! 素敵! 結婚しましょう!」
「お嬢は空気を読んで黙ってくださいっす。とはいえその心配は至極当然っすね。何せクラスメイトの9割近くが目の色を変えて天使さんに詰めかかった訳っすから」
「フ。唯お姉様を前にしてそういう反応をするのは正常としか言いようがない。唯お姉様を見ていたら性欲がムラムラしてきて発情期のメス猿あるいはメス豚にさせられるもの。こうして話しているだけでも自慰行為を必死になって我慢できる私の鋼鉄の理性を褒めて欲しい」
「一応、言っておくっすけど、私は天使さんをそういう目で見てないっすからね」
私、男の子の筈なんだけどなぁ。
そんな吐き出してはならない言葉とため息を零さない為にも、コーヒーと一緒に飲み流す事にした。
「あ、報告し忘れてたっす。百合園さんには既に自分が連絡しましたんで安心して貰っていいっすよ」
「え、そうなんですか? それは助かります」
「そんなにかしこまらないでくださいっす。私はそこのお嬢に言われたからやっただけっす」
「あの、本当に下冷泉先輩がそんな指示を……?」
「疑う気持ちも当然っすけど、そうやれと命令されたっすからね。とはいえ、お嬢が私の手柄を自分の手柄にするべく『そう命令されたと言え』と命令された可能性を無きにしも非ずっすけど」
「フ」
コーヒーを啜りながらそんな飄々とした物言いをしてみせる葛城さんではあるけれども、そんな彼女の言動に特に思う事がないのか、全く気にしたような素振りを見せずに無言のまま不敵な笑みを浮かべている下冷泉霧香は実に不気味だった。
「とはいえ、同情するっす。常日頃からお嬢の聞きたくもない変態発言を聞かされるのは大変っすよね」
「フ。この私から唯お姉様への愛情から織りなす言葉を抜いたら、それこそ只の正統派黒髪長髪清楚系大和撫子美少女でしかない。それに変態発言を合わせる事によって奇跡的なマリアージュを引き起こす! 鬼に
「お嬢。足し算と掛け算をやらないでくださいっす。お嬢がやるべき事は引き算っす。お嬢は黙っていれば美人なんすっから本当に黙ってくださいっす。お嬢の良さは見た目だけなんですから本当に黙ってくださいっす。できれば永遠にっす」
「フ。お望み通り私を黙らせたいのであれば、唯お姉様の口付けで黙らせて欲しい」
本当にこの先輩は活発的が過ぎるというか、自分の欲望に素直というか、隙あれば性的アプローチを取ってくる始末である。
彼女がそんな事をせずに正々堂々と常識的な女の子のフリをして近づいていれば、私は間違いなく容易く攻略されてしまうだろうが……不幸中の幸いと言うべきか、下冷泉霧香は常識の真反対に位置するような存在だった。
一応、私個人としては性的な女の子は嫌いではないけれども、性的が過ぎる女の子はかなり苦手なので本当に助かる。
「フ! さぁ! さぁさぁ! キスをしましょう唯お姉様! お互いの唇をこうして重ね合わせるのは初めてだから、取り敢えずディープキス10分からやってみましょう! お互いの肺を私たちの二酸化炭素でいっぱいにしましょう! そして股の下の女性器から愛液をドバドバ出しましょう! ドバーっと! 因みに私はもう出てる! 出してないのは唯お姉様だけ! どうしてよ! 出しなさいよ愛液! 出せるでしょう愛液! それともそんなに私を焦らせるつもりなの⁉ 悔しい……! そんな鬼畜が過ぎる放置プレイをするだなんて……! 私、唯お姉様の事が更に大好きになっちゃう……!」
「……この人、気持ち悪い……」
「大変っすね。そんな天使さんに朗報っす。ここに演劇部部品のガムテープがあるっす。これであの綺麗な顔面にガムテープ貼り付けて黙らせてやるっす」
「フ。束縛プレイ? 興奮してきた。常識が欠けている葛城にしてはナイスアイデアと言わざるを得な――え? えっ、唯お姉様が私の頬に手を添えっ……⁉ ちょ、ちょっと……⁉ ちょっと待って唯お姉様……⁉ キス、だなんて……! そんな、ま、待って……! 心の準備が、まだ、出来てなくて……! あ、え、あ、あ、あぁ……! これ絶対に性行んんんんんんんんほぉぉぉぉ~~~~~~ッ!」
取り敢えず、危険人物が過ぎる下冷泉先輩をガムテープで口と両目に両腕に両足を縛ってみた。
こうして人をガムテープで縛ってみて気づいたのだが、意外と楽しいなコレ。
「黙らない人を力づくで黙らせるのって案外楽しいですね」
「これでもお嬢はいい子なんすよ……言っても誰も信じてくれないんすけどいい子なんすよ……やれば
「それはもう色々とフォローが出来ない人に言う台詞では?」
「違いないっすね」
ガムテープで縛られている下冷泉霧香を地面に転がして放置したまま、仲良く談笑していると、長い長い昼休みの終わりが近づいてきた頃を意味する予鈴が鳴り響く。
「っと、もうこんな時間っすか。天使さんと料理関係の話をしていたら時間が過ぎるのがあっという間っすね」
「えぇ、本当に。それにしても葛城さんは周辺のスーパーの情報をたくさんご存知なんですね……!」
「これでもあそこで嬉しそうに芋虫みたいに身体をくねらせているお嬢の面倒を見ないといけなくて。私とお嬢の実家は京都の方なんで、都内の高層マンションで2人暮らしをしてるっす。とはいえ、月に渡されるお小遣いにはもちろん限度がありますんで、上手くやり取りをするのが腕の見せ所ってヤツっす」
「なるほど、それで」
「ですが今日のお嬢が寮生活をしたいとうるさくて……お嬢の面倒を見る為にも何だかんだで私も女子寮にお世話になるかもしれないっす」
「そ、そうですよね……」
安全安心であった筈の女子寮に次々と利用者が増えてきている事実は、女装生活をしている以上、素直に喜べない。
とはいえ、あくまでもそれは私の事情であって、葛城さんには葛城さんなりの事情があるのは重々承知。
とはいえ、危険度に関しては地面に転がっている下冷泉霧香……とてもアグレッシブで、私に対して病的なまでの愛情を一方的に向けている先輩の方が俄然として高いまま。
あんなイロモノに比べたら――いや比べる事自体が葛城さんへの侮辱に値するかもしれないけれども――葛城さんはかわいいものだ。
「じゃあ、私は後片付けをしてから教室に戻るっす。天使さんは気にせず先に帰ってくださいっすね?」
「分かりました、じゃあ私はこれで。美味しいコーヒー、本当にありがとうございました」
かくして、長い長い昼休みが、色々と情報を得過ぎた昼休みは何とか無事に終わりを迎えたのであった。
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「分かりました、じゃあ私はこれで。美味しいコーヒー、本当にありがとうございました」
そう言った天使唯が部屋から退室したのを見届けて――。
「霧香お嬢様に負けず劣らず嘘が上手な人ですね、アレは」
色々と思う事はあるけれども、その言葉たちをぐっと飲み込んだ私は細心の注意を払いながら、地面に落ちてしまった数本の銀色の髪をガムテープで貼り付けて回収し、念のために常日頃から持ち歩いているピンセットでも数本回収しておく。
昨今の技術には目を瞠るものがある。
まさかこれだけで様々な情報が会得できるだなんて、昔の自分に言っても絶対に信じないでしょう。
血液型、血縁関係、遺伝情報。
そして、本当の性別までもが赤裸々になってしまうだなんて、まるで夢のようだとは思いませんでしょうか――天使唯くん?
「ふ」
何はともあれ。
絶対に逃がしはしませんよ、天使唯。
貴方の事情はどうあれ霧香お嬢様に近づいた以上、そういう覚悟はして貰わないと……ね?
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