第7話 『太くて、大きい。それに、硬い』【お風呂/シャンプー】

「ん、じゃあ、ちょっと強めにシャンプーをやっていく」


「せ~の……。ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅぅ~……」




(※強めにシャンプーされる音&吐息)




「ふふ。お兄さん、気持ち良さそうな息、漏れてる。だったら、もうちょっとだけ……」


「ぎゅぅ、ぎゅっ、ぎゅぅぅぅ……」




「チキュウのシャンプーは、本当にすごい。泡立ちも、泡の持続力もコノヨンにある洗髪剤とは段違い」


「それに、良い香り……。匂いを付けるだけで、これだけリラックス効果があるとは思わなかった」


「本当に、チキュウは未知にあふれている。楽しい」


(※強めにシャンプーされる音&疲れて徐々に荒くなっていくリエステの吐息)




(※不意に耳元で)


「はぁ、はぁ……。お兄さん。どう? 気持ち、良い?」




「ふふ、人にシャンプーをするのって、意外と力仕事。体力を使う」


「だけど、お兄さんが気持ち良さそうだと、しんどさも忘れられる。不思議」




(※シャンプーされる音&ちょっと荒い吐息)




「はぁ、はぁ、はぁ……。ふふっ、じゃあ洗い忘れしやすい耳の裏、行くね。まずは右耳から……」


(※泡で右耳をマッサージされる音)


「裏すじをなぞるようにして……あっ、お兄さん、ビクッてなった」


(※右の耳元で)


「やっぱりお兄さん、お耳、弱いんだ?」


(※リエステが離れる)


「敏感な場所。だから、指のお腹で丁寧に、優しく……こす、こす」


(※泡で右耳をマッサージされる音)




「出来た。じゃあ、今度は左耳……」


(※泡で左耳をマッサージされる音)


「洗い残しが無いように、こす、こす……」


(※泡で左耳をマッサージされる音&吐息)


「ん、しょ……っと」


「ふぅ……。じゃあ念のために、最後に両耳を……こし、こし」


(※両耳同時に泡でマッサージされる音)




「ふぅ~……。それじゃあ泡を洗い流すんだけど、その前に……」


「お兄さん。耳を澄ましてみて? 多分、泡が弾ける音がすると思う」


(※耳元で小さな泡がいくつも弾ける音)


「その音も、リラックスできるって書いてあった」


「ん。私もその音、好き。コノヨンだとこんなに泡立ちが良くないから、初体験だった」


(※耳元で小さな泡がいくつも弾ける音)


「泡の音。名残惜しいかもしれないけど、湯冷めしたらダメだから、そろそろ流すね?」


(※蛇口をひねってシャワーが流れる音)


「…………。うん、お湯も、良い感じ」


(※耳元で)


「目、つぶっててね?」


(※シャワーで頭を洗う音)


「はぁ、はぁ……。ここも、シャンプーの、洗い残しが、無いように……」




(※シャワーの音)




(※蛇口をひねってシャワーが止まる)


「ふぅ、ふぅ……。これでシャンプーはお終い。ふふふ、見事、やり切ってみせたよ、お兄さん。どや」


「確かに。息も絶え絶え。もう、シャワーヘッドを持つことすら、しんどい。恩返しは、やっぱり難しい」


「だけど……うん、良かった。お兄さん、すっきりした顔してくれてる。それだけで、私も頑張った甲斐を感じられた」


「ただ、背中を流すのは少し待ってほしい。今は腕も上がらない。もう少し、体力を回復させたい」


「……え? お兄さんが私の髪を洗ってくれる?」


「いや、それだと折角の恩返しが無くなってしま……あっ、ちょっと待って」


(※主人公がリエステを無理やり座らせる)


(※以降、リエステの声は前から聞こえる)


「むぅ、お兄さん、強引。……だけど、なぜか少し興奮してしまった」


「それに、お兄さんの力に私は逆らえない」


「そう、されるがまま。襲われたらひとたまりもない」


「ふふっ、知ってる。お兄さんはそんなことしない」


「……けど、してくれても、良いよ? 私に、抵抗の意思は無い。お兄さんにはお世話になりっぱなしだから」


「……そっか。ふふ、フラれちゃった。けど、そんな硬派なところも、好き……わぷっ」


(※蛇口をひねってシャワーを出す音)


「急にシャワーをかけるの、良くない。……あっ、もしかしてお兄さん照れてる?」


「あ、はい。黙ってシャンプーされることにします」


(※蛇口をひねってシャワーを止める)


(※リエステにシャンプーをする音)




「髪を腰まで伸ばしている理由?」


「ん、それは、お手伝いさんが喜んでくれたから。遊びがいがあるらしい」


「いろんな髪型で遊ばれた。けど、嫌じゃなかったよ? お風呂の時はみんなリラックスして見えたから」


「それに、私の髪は両親の形見の1つでもある」


「……こうしてみると、この髪には沢山の思い出が詰まっている気がする。大切にしないとね?」




(※リエステにシャンプーをする音&気持ち良さそうなリエステの声)




「ふふっ、お兄さんの……太くて、大きい。それに、硬い」


「うん? 手の話。むしろそれ以外に何もない気がするけど……」


「ふふ、急に慌てて。変なお兄さん♪」


「うん? あっ、待って。怖い顔でシャワーヘッドをこっちに向けて何を……わぷっ」


(※蛇口をひねってシャワーが出る音)


(※リエステ、溺れる声で)


「ふふふっ、ごめんなさい、お兄さん。怒らないで」


(※蛇口をひねってシャワーを止める)




「プルプルプル……。ふぅ、危うく溺れるところだった。それに、目と口にちょっとだけシャンプーが入った。目は痛いし、口は苦い」


「ふふ、謝らなくていい。煽ったのは私。お兄さんは私の期待に応えてくれただけ。むしろご褒美」


「その冷たい視線は私に効く。弱った私に追い打ちするなんて、さすがお兄さん……って、あれ……?」




「お兄さんが、分身してる……?」




「それに、ろれつが、回らない」




「あ、これは、本当に……ダメな、やつ……」




(※リエステが椅子から転げ落ちる音)


(※慌てたような、主人公の足音)




「ふふ、お兄さん、必死。かわ、いい……きゅう」




(※風呂場の戸を開ける音)

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