第4話 『お耳、気持ち良くさせて?』【お耳マッサージ/お耳かき】

(※蛇口をひねって水を止める)


(※手を拭いた主人公が歩く音)




「ふふ、洗い物、お疲れさま。私も座卓をどけてお耳掃除の準備、しておいた」


「怖がらなくても良い。確かに私は貧弱だけど、器用さと頭の良さは自慢できる」


「疑うようなお兄さんの目、たまらない。……でも、お願い。お兄さんのお耳、気持ち良くさせて?」




(※主人公がしゃがむ、衣擦れの音)




「……ふふ、渋々だけど私のわがままに付き合ってくれるお兄さん、良い子♪」


「じゃあそのまま向こうを向いて、右耳を上にして?」


(※リエステの膝枕に、頭を乗せる。以下、リエステの声が主に右耳から聞こえる)


「ん。それじゃあ、右耳から始めていく。でも、耳かきをする前に、耳のマッサージもしてあげたい。……良い?」


(※主人公が頷く衣擦れの音)


「ふふ、頷き方がやけくそ。信頼の無さが伝わって来る」


「そんなお兄さんからの私の評価を、これから変えて見せる。というわけで、じゃじゃん。今回はこのクリームを使う」


「いつ、どこで買ったのかって……。お兄さんから借りたお古のスマホを使って、お耳のマッサージと耳かきについて知ったのが一昨日。それから徒歩1分にあるコンビニで買ってきた」


「ふふ、最初のコンビニが往復で1時間くらい。前回も45分はかかった。距離にして100mくらい。毎度、倒れそうになるし、死にそうになる。……生きるって、大変」


「そう。コンビニ通い。それが、連日の筋肉痛の正体。さすがに、訳もなく筋肉痛になったりはしない」


「え? 普通は100mのお使いで筋肉痛にはならない? ……ふふ、つまり私は、地球の歴史上初めて、お使いで筋肉痛になった女かも知れない」


「至近距離からのあわれみの視線……。たまらない」


「あ、はい、ごめんなさい。それじゃあ、マッサージ、始めるね。こうやってクリームをたっぷり手に取って……」


「右耳、失礼します」


(※水分を含んだ、右耳を揉まれる音)


「優しく、丁寧に……揉み、揉み」




(※リエステが主人公の右耳を優しく揉む)




「ふふ。お兄さんのお耳、よく見ると可愛い形してる」


「お兄さんは知ってる? お耳って指紋と一緒で、全く同じ形は存在しないんだって。マッサージについて調べてる時に私も初めて知った」


「いつか指紋と一緒で、耳紋じもんも取られちゃう日が来るかもね」




(※水分を含んだ、右耳を揉まれる音)




「揉み、揉み……。揉み、揉み……」


「そうそう。確か耳の上の方……。くぼんだところによく洗い残しがあるって書いてあった。だからちょっと強めに……」


(※右耳を強めにさする音)


「あ、ビクッってなった。気持ち良かったんだ? ふふ、お兄さん、可愛い♪」


「それから、耳の裏も……。揉み、揉み」




(※右耳を揉まれる音)




「どう、気持ちいい? 私、ちゃんとお兄さんを気持ちよく出来てる?」


「……ふふ、それなら、良かった」


「揉み、揉み……。揉み、揉みぃ……」




(※水分を含んだ、右耳を揉まれる音)




「ふぅ……。マッサージはこれくらいにしておく。じゃないと、私の体力が持たない可能性が出て来た。右前腕がちょっとつりそう」


「ふふ、まだ大丈夫。最後までやり遂げてみせるから、お兄さんは安心して私に身を任せていればいい」


「あとはクリームをタオルで拭って……」




(※耳をタオルで丁寧に拭う音)




「ん、これでマッサージはお終い。次は本命。耳かきをしていく」


「使う耳かきは、これ。竹製で、ちゃんとモフモフがついてるやつ。梵天ぼんてんっていうらしい。クリームと一緒に、コンビニで買ってきた」


「一応、イメージトレーニングだけはしてある。だから、完ぺき」


「最悪、何かあっても1年後くらいに回復魔法をかけて治す。……その分、コノヨンに帰るのが遅れるけど、お兄さんのためだったら問題ない」


「それじゃあ耳かき、始めていく。最初は、入り口の方から。慎重に……」




(※耳かきの音)




「お~……。取れた。これが、お兄さんの耳垢……」


(※主人公が身をよじる衣擦れの音)


「ふふ、恥ずかしがることじゃない。耳垢は誰にでもある。もちろん、私にも」


「続けるね?」




(※耳かきの音)




「かき、かき……」




(※耳かきの音&リエステの吐息)




「結構、溜まってる。忙しそうなのは知ってたけど、お兄さん、最後に耳かきしたの、いつ?」


「思い出せないくらい前なんだ?」


「ふふん。だったら今日、私が隅々まできれいにする。任せてほしい」




(※耳かき&吐息)




「お兄さんには、耳かきをしてくれる人……恋人さんはいないの?」


「……そっか。私からしたら不思議。お兄さんは、優しくて、良い人。だから、こういうことをしてくれる人がたくさん居てもおかしくない」


「顔が良くない……? チキュウだと、人は外見を重視するんだ?」


「コノヨンだと、魔力だったり、家柄だったり。外見よりも人としての性能? が重視されることが多い」


「魔力も、家柄も。努力でどうこうなるものじゃない。そういう意味では、外見を重視するチキュウは、きっと良い場所。外見は、努力次第でどうにでも変えられるから」




(※耳かき&吐息)




「それに私は、お兄さんの外見、悪くないと思う」


「性格も、さっき言った通り優しい。私が欲しい言葉と態度をくれる。きっと恋人ができるのも時間の問題。だから、自信を持ってほしい」




(※耳かき&吐息)




「ふぅ……。浅い所は無事、やり切った」


「これから深いところをしていく。集中しないといけないから、ちょっと黙るね?」


「ん。それじゃあ、失礼します」




(※耳かきの音&吐息)




「ん……、む……」




「ふ、む、ん……」




「お? ん、ふふ♪」




(※耳かき&リエステのやや荒めの吐息)




(※リエステの汗が滴る音)


「あ、ごめん、汗……。私、汗っかきだから……」


「さ、さすがにちょっと恥ずかしい……。いま拭うから、じっとしてて」


(※タオルで拭う音)




「はぁ、はぁ……ん」




(※耳かき&やや疲れたリエステの吐息)




「ふぅ……。ん、お疲れさま、お兄さん。耳かき、無事に終わった」


「うん。とってもきれいになった。お耳の奥まで丸見え」


「あっ、忘れるところだった。耳掃除の後はこの梵天ぼんてんで……」


(※梵天で耳をこする音)


「ふふ、くすぐったい? でも、まだ。もう少し我慢して」




(※梵天で耳をこする音)




「はい、お終い。最後に……」




(※耳に息を吹きかける音)




「あ、ビクッてした。気持ち良さそうなお兄さん、可愛い♪」


「ふふふっ、だったら、もう一回」




(※耳に息を吹きかける音)




「はい、今度こそ、お終い。それじゃあお兄さん。ちょっと休憩を挟んで、次は反対……左耳をするね」




(→左耳に続く)

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