第12話 羽咋市内撤退戦8
金属の、弾ける音が聞こえた。
綱連の槍の先端が切断されて、回転しながら宙を飛んでゆく。
驚愕のあまり目を大きく開く綱連。
「あ……」
光鳴は息を呑んだ。
自分と綱連の間に、金色に輝く長髪をなびかせ、軽鎧をまとった戦乙女が身を低くして構えている。
手には両刃のブロードソード。
スリットの入ったドレスから覗く太ももの、滑らかな肌に、思わず目をやる。
その腿肉に、ミキッ、と筋肉の線が走った。
「ひ――」
綱連は恐怖の声を上げ、先っぽのない槍を構えて、攻撃を防ごうとする。
電光石火。金髪の戦乙女は馬上の相手に飛びかかり、瞬速の刺突を放つ。綱連は、その槍の柄ごと、ブロードソードに貫かれる。
「げはっ!」
たちまち煙とともに綱連の姿は掻き消え、一枚のカードと化した。
戦乙女はサッと髪をかき上げてから、腰を抜かしている光鳴に、目を向けた。
「マスター、お怪我はございませんか?」
「ま、ま、マスター⁉ いや、だ、大丈夫だけど」
いきなりの「ご主人様」呼びに仰天する。
そういえばクロガネは、カードを実体化すると、そのカードの人物は実体化させた人間に従うようになると説明していた。
つまり、いま、彼女は自分が指示を出せば、その通りに動いてくれる。
とりあえず、この状況で出す指示なんて、ひとつしかない。
「と、とにかく、周りの敵を全部倒して!」
「かしこまりました、マスター」
戦乙女はあたりの敵を睥睨すると、凛とした大音声を上げた。
「私は全宇宙の秩序と平和を司る戦士アストライア! 我がマスターへの度を越した数々の狼藉、許すわけにはいかない! 貴様ら全員一人残らず駆逐する! 覚悟しろ!」
言い終わると同時に、アストライアは、足軽軍団の合間を縫うように駆け出した。
たちまち足軽たちは次々とカード化してゆく。縦横無尽に駆け巡る、その動きに合わせて、紋様を描くように足軽軍団の陣形が崩れてゆく。大将を失ったため統制が取れていないとはいえ、
「す、すごい……」
アストライアの強さは、あまりにも、圧倒的だった。
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