第10話 羽咋市内撤退戦6
(もうダメだ)
全てを諦めた、そのとき。
遠くに見える山の向こうから、一個の光球が飛び出してきた。
「星……?」
流れ星かと思ったが、どうもそうではない。下に落ちるのではなく、天に向かって上がってきた。しかも姿を見せた後は、段々とこちらへ近づいてくる。
「あれ、は⁉」
クロガネが驚きの声を上げる。
光鳴もまた、光の正体に気が付いて、ギョッとした。
それは、昔から騒がれてはいるものの、いまだ実在を証明されていない存在。多くの人が幻覚か悪戯かと一笑に付す未確認飛行物体。
UFO、だ。
お椀を逆さにしたような、いわゆるアダムスキー型と呼ばれるフォルム。冗談かと思うようなものが、ヒュンヒュンと音を立て、光鳴たちの頭上へと滑空してきた。
底部から砲頭が突き出る。
ギャンッ! と鋭い出力音とともに、熱光線が地上に襲いかかった。たちまち足軽たちは光線にやられ、一気に十数名、蒸発と同時にカード化してしまった。
「た、大将! あ、あれは!?」
「怯むな! あれはこことは異なる世界よりやってきた妖魔が使役する、古の戦車よ! その名も『
宙を自在に飛び回るUFOを相手に、足軽たちは逃げ惑いつつも、地面に掘った穴の中から大砲を引きずり出してくる。
「くっ、止めるぞ!」
あのUFOが自分たちにとって味方となりうると判断したのだろう、クロガネはライフルを構えて、足軽たちを邪魔しようとする。
が、その胸を、綱連の槍が貫いた。
ボフンッ、と煙を立てて、クロガネはカードになってしまった。
「隊長ぉ――!」
女性隊員は悲痛な叫び声を上げたが、同じく槍で胸を貫かれ、あえなくカード化した。
「うぬはまだ生かしておいてやる。頼みの加勢が散るところを大人しく見ているといい」
槍の穂先を、光鳴の眼前に突きつけて、綱連はニヤリと笑うと――片手を振り上げた。
準備の整った大砲が火を噴く。
連射の機能などない、単発式の大砲だが、それでもUFOがまっすぐこちらへ向かってくるタイミングに合わせて撃ったため、一発で命中した。
轟音とともにUFOは爆発し、機体を四散させる。
その様を、光鳴は呆然と見守るしかなかった。
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