第3話 気多大社防衛戦3

 もうダメだ――。


 観念した光鳴は、目をギュッと閉じる。


 騎馬武者の槍の先端がいままさに顔面を貫かんと迫ってきた。


 パンッ、と銃声。


「ぶほわっ⁉」


 悲鳴を上げて、騎馬武者は馬上から吹っ飛んだ。


 乗り手をなくした馬は、光鳴の横スレスレを駆けて、銃声で興奮したのかヒヒーンとわななきながら、そのまま森の奥へと走り去っていってしまった。


「な、なにやつ!」


 撃たれた肩口を押さえながら、武者は立ち上がる。


 ザッと草を掻き分ける音とともに、迷彩パンツに黒いタンクトップ姿の女性が、茂みの向こうから飛び出してきた。


 武者の顔面に膝蹴りを叩きこむ。


「おぶっ!」


 鼻血を噴き出し、武者は再び地面に倒された。


「おのれ! このわしに対してこのような振る舞い――!」


 怒り狂う武者であったが、みなまで言わせてもらう前に、眼前に銃口を突きつけられた。


「ぬぐっ!?」

「悪いね。戦争だからさ」


 再び銃声。


 武者は頭部を撃ち抜かれた。


 直後、ボフンという音とともに煙が発生し、武者の姿は消えた。代わりに、ヒラヒラと一枚のカードが舞い、地面にポトリと落ちた。


 迷彩パンツの女はカードを拾い上げ、内容を見て、チッと舌打ちする。


「んだよ、ノーマルのコスト3か。使えないな」


 それから光鳴のほうを振り向く。無造作に頭の後ろで束ねた長い黒髪がふわっと宙に流れる。


「こっから先は?」

「え」

「あんたの思惑通り、二段構えの伏兵戦法は成功だ。他んところでも武者をどんどん撃退している。だけど、すぐ次の陣がやってくるぞ。もう他に策はないのか?」

「これは相手の進攻を抑えるためのものだから――次は予定通り逃げるしかないよ」

「やっぱりそれしかないか……」


 迷彩パンツの女は髪をかきむしりながら溜め息をついた。

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