第2話 気多大社防衛戦2

 なんでこんなことになっているのか。


 神様は何か自分に恨みでもあるのか――と光鳴は天に向かって呪いの言葉を吐きかけたくなった。


 高校三年生。


 大学受験を控えて必死で勉強していたこの夏休み。


 ふと光鳴は考えた。


(あ、カノジョいない)


 生きた年数=カノジョいない歴。その残酷な事実に気がつかされた光鳴は、発狂せんばかりの焦燥感に駆られた。


 そして縁結びのパワースポットで有名な、能登の気多大社へとやって来たのである。




 そうしたら武者たちが襲い掛かってきた。




「なんなんだよ、なんなんだよ、なんなんだよー!」


 騎馬武者に追われ、森の中を駆け抜けながら、光鳴は叫んだ。


 ただ単にカノジョができますようにと神頼みしに来ただけなのに、なぜこんな大スペクタクルに巻き込まれないといけないのか。


 このまま自分は能登の地で儚く塵と化すのか。


「そおいやあああ!」

「うわあああ!」


 背後から迫ってきた騎馬武者の槍を、横に転がってかわす。あとちょっと動くのが遅かったら、突き殺されていた。


「ぬうん! ちょこまかと! 大人しく往生せよ!」


 いやです。


 光鳴はブンブンと首を振り、急いで立ち上がると、騎馬武者から離れるようにまた走り出した。


 森の中のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。だけど気にしている余裕はない。


 ここで失敗すれば、自分だって死んでしまう。


「ははは、待ち伏せしていたことは誉めてやろう! だが、所詮は烏合の衆!」


 騎馬武者は、馬首を上げた。


「すでに本殿は制圧した! あとは残党を狩るのみ! この戦、貴様らの負けじゃあ!」


 ヒヒーンといういななきとともに、馬は駈足体勢に入った。


 まずい、と光鳴は冷や汗を流す。次もまた敵の攻撃をかわせる自信はない。


「死ねええええ!」


 気合とともに騎馬武者が再び突進してきた。

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