第7章:起きたこと、起きること、起きていること

第68話

「輪廻の消滅確認。さすが、君の息子だ。」


「まあな、何せあいつは俺よりも魔力値が高いんだ。まだまだ成長する。」


 うちの息子が輪廻を倒してから1週間、奇跡的に町には傷跡が残らず、綺麗なものに戻っていた。


「四天王以外の輪廻の器にされていた人の身元も特定できた。彼は “タカハシ・タカシ(22歳)”転生者だ。固有スキルはアギト、フェアリア護衛兵団に所属していたが、3年前に疾走、以来姿を現していないんだとか…」


「だから輪廻はあの体で魔法の宝庫であるフェアリアに行かなかったのか…」


「で、今回盗まれた禁断魔法の書は大丈夫だったのかい?君の奥様の作った魔法“彗星魔法”だろ?」


「大丈夫だ。あの魔法は固有スキル“魔法眼”がないと扱えないし、魔法眼があっても失明して使えなくなる。リリルの圧倒的な魔力量と魔法眼あってこその魔法。輪廻がうちの息子の肉体を乗っ取ろうとしてたのも、魔法眼を使って彗星魔法を発動させるためだろうな。」


「じゃあ、あの場にリンタロー君を行かしちゃダメだったんじゃ?」


「勝手に入ってきたんだよ。俺は「来るな」って意味で手紙を送ったのに、逆に来ちゃうんだから…どんだけこの町が好きなんだよって話だ。」


「でも、君だって、この町が危機にさらされたら駆けつけるだろう?」


「……まあな、勇者パーティー全員そうだ。なんせこの町には、俺達の冒険の全てと、命の恩人の墓があるからな。」


「……素晴らしいね。ところで、君の息子は?」


「残念だったな、今は彼女と別のカップルとダブルデートだよ。会いたいなら今、ディマリプに行けばいい。」


「そうか………」


「あ、ごめん、そういえばお前、恋人探してたんだよな……。」


「気にしないで。この世界には随分と長いこといてしまった。そろそろ次の世界に行こうと思う。この世界には僕の探し人はいない。ここからは僕が死ぬための旅になる。それじゃあ、またいつ会えるか分からないけど、お元気で。」


「じゃあな!!世話になった!!ミズナギ・タクミ!!」


「こちらこそ、ヤマダ・ケンタロー!!」


 一体俺の息子たちは、今何をしているのだろう…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「なあジェナ、夕日がきれいだな。」


「そうですね、今エッグタウンはお昼ごろですよ。この後どうしましょうか…」


 戦いは終わった。


 俺はテロリストとはいえ、人を殺してしまったわけだ。


 あれから4日間、ひどいうつ病になってしまって、現在は記憶の悪魔ガルドとの契約で記憶に罪悪感を抱かないよう改変してもらった。


 契約する前、あいつが「人を殺して罪悪感を抱き、死にたくなってしまっているのだな!!フハハハハハ!!」とか言ったせいでかなり悪化したのだが…


 まあ、今は罪悪感を感じないことだし、許してやろうと思う。


「やっぱり、まだ気にしてるんですか?」


「あぁ、まあ罪悪感は感じないけど、時々…」


「ダメですよ、こういう時は楽しまないと!!」


「ほら2人とも!!記念写真撮るわよ!!」


「そんなとこでイチャイチャしてんじゃねえよ!!」


「羨ましいの?キスしてあげようか?」


「あとで…」


 お前らもイチャイチャしてんじゃねーか。


 この青春が、いつまでも続きますように…


「リンタローさん、今日の夜、一緒にあそこの岩場に行きませんか?色々恋愛に関する有名なスポットなんですって!!」


「いいな。ちょうど人に見えない場所だし…」


 この幸せが、終わりませんように。


「じゃあ、決まりですね!!」


 この恋が…


「ジェナ…あの…」


 俺は嬉しそうにみんなのもとへ走っていくジェナを呼び止めて言った。


「どうしたんですか?」


 ジェナは満更でもない表情を見せておきながら、いつも赤い顔を真っ赤に染めて振り向く。


 こういうところが俺は…


「ジェナ、その、もう既にやることやってるから今これ言うのおかしいと思うんだけど…」


「そうですね。」


「お、俺と、正式に…」


 空気を呼んでいるのか、ヴァンとビルトが静かだ。


「俺と正式に、付き合ってください!!」


 ジェナは俺に飛び掛かり、抱きしめ、白い砂浜に倒した。


「喜んで!!」


 彼女は手で俺の視界を塞ぎ、キスをしてきた。


「ちゅーした!!あいつら、ちゅーした!!」


 この恋が、愛が、無限でありますように。

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