第65話

「素晴らしい、私の本の魂と相性が良いのか、先ほどまでの肉体より動きやすいぞ。」


 ボブが飛ばされた…


 いや、違う、飛ばされたんじゃなく、衝撃を吸収するために自ら飛んだんだ。


「〈フレイム・ブロー〉!!」


 ボブは輪廻の背後から燃える拳をぶつける。


「錬金魔法〈フルメタル・アックス〉」


__ズドン!


 ボブの攻撃がまるで効いていない…


「ルル!!」


「〈天光斬〉!!」


 ルルの一撃すら簡単に斧で受け止められてしまう。


「[エネルギー]は【輪廻】する!!」


 輪廻がつくり出した斧は爆発的な威力でルルに向けられ……


「させない!!」


__ダン!!


 その時、魔王との戦いでも欠損することのなかったボブの腕が…


 宙を舞う。


「この魔法、この筋肉、今まで使ってきたパワー系の肉体ではかなり上位に入る部類の性能だ。ここで、ボブ、貴様の肉体を乗っ取れば、私は最強となる。」


 輪廻の固有スキルは“輪廻”


 肉体から肉体へ乗り移る際、おそらく魔法は次の肉体に入っても使える。


「さらばだ、暫定世界最強。ここからは、私がその称号を、その肉体で受け次ごう。」


 何か、何かないか…


 ボブは腕を失ってバランスが取れず、立つことができない…


 俺達はここで見ることしかできないのか!?


 もう何もできることがない。


 そう思った時だった。


__ズドドドドドド!!


 7本の矢が輪廻に突き刺さる。


「なんだ?金属の鎧を突き抜けて…反応できなかった…」


 輪廻はその矢を体から抜き、治癒魔法で治す。


 矢を飛ばしたのは…


「助けに来たぞ!!」


「「「「会長!!」」」」


 生徒会長は遠くから走りながら矢を射っていた。


「リンタロー君!!もう一度矢を射る!!あのスキルを使え!!【ショット】〈ボルテックス・リング〉!!」


 俺の脳は一瞬で会長の言葉の意味を理解する。


__ドドドス!!


『スキルの発動条件が…』


スキル発動ぉぉぉぉ!!」


 輪廻に刺さった矢は光り、輪廻の足元から巨大なミミックが顔を出す。


 ミミックはそのまま輪廻の足を食いちぎり、消えた。


「再生魔法〈リプロダクション〉……所詮は連携技だ。」


 輪廻の姿が…


「ガハァッ!!」


 会長は輪廻に殴られ、吐血し、倒れた。


「矢の速度を上げるだけに疾風魔法を派生させたのか…………つまらない技だ。疾風魔法を使うなら風を矢にするぐらいのことをしてみせろ。「相手と直接ぶつかりたくない」そんな弱い意志が見て取れるな。」


 輪廻の表情は無だった。


 いや、違う、自分が喰らった一撃が自分の理想とはかけ離れていたことに怒りを感じているのか…


「今の一撃であの矢の男の内臓はぐちゃぐちゃだろう。死ぬのも時間の問題だ。」


 輪廻は再びボブのもとへ…


「ボブの体がない…まさか…」


 生徒会長の一撃によってできたスキをついて父が町のプリーストのもとへ転送したのか…


「してやられた……ガッ!!」


 刹那、背中の胴をジェナが斧で切りつける。


「私の師匠は、渡しません!!ヴァンさん!!息を合わせて、〈プラズマ・アックス〉!!」


「【龍爪】!!」


 ジェナとヴァンが前と後ろから挟むように輪廻を斬った。

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