第64話

「ふぅ、ふぅ…まあ、君たちの歳にしてはよく頑張ったよ。」


 なんで…


 こんな時に限って…


 罠スキルで出たのがたらい落としだったんだよ…


「流石にもう面倒くさい。全員、ここで死んでもらう。」


 ダメだ、俺は、まだジェナとの関係をはっきりさせていない。


 みんなで海にも行ってない。


 誰かの誕生日も祝っていない。


 学校を卒業できていない。


 卒業後の旅にも出ていない。


 ジェナと、子供を作って家庭を築いていない…


 まだ、死ねない…!!


「魔剣:デュランダル【呪いの…」


「ビルト!!」


「うぐぐぐぐ…【スリングショット】!!」


__コツン…


 条件を変えてもう一度、これに賭ける!!


『スキルの発動条件が満たされました。』


スキル発動!!」


 瞬間、リンネの体は大きく爆ぜる。


 爆風で自分たちまで吹き飛びそうなぐらいに…


 リンネの体は再生中ではあるが、両手両足が無い状態、攻撃するなら、今!!


「おっと、総督、危機的状況ですね。俺が助太刀しますよ。この、四天王最強、鋼天:スタルリッターがね。」


 四天王最強?


 鋼天…?


 もうダメかも…


「錬金魔法〈フルメタル・グレートソード〉」


 スタルリッターは自分の身長の2倍はある大剣を俺に振りかざして…


「フン!!」


__ガン!!


「ルル!!リンネに手錠を!!ベル!!リンタローパーティーメンバーとケンタローの傷を治してくれ!!こいつは俺がやる!!」


「私はどうすれば!!」


「リリルはケンタローに寄り添ってやれ!!」


 あぁ、神様…


 こんなことってあるんですね。


「七代目勇者パーティー、現着!!」


——————————————


「治癒魔法〈ヒール〉」


 凄い、笛を吹くだけでが消えた…


 普通のプリーストとは比べ物にならない速度と精度だ。


__ガガッ!!バキ!!


 ボブとスタルリッターが先ほどから互いに一歩も譲らない熱い戦いを繰り広げている。


「よし、これで全員ね。」


「ケンタロー、立てますか?」


「厳しいかも、義足がバッキバキに折られてる。」


「では、私の松葉杖片方使ってください。」


 父親と母親のあんな絡み始めて見た…


「みんな若い頃を取り戻してるわ。まあ、ケンタローとリリルの容姿は諸事情で変化ないけど…」


 諸事情って何だろう。


「リンネはうちのルルが確保した、スタルリッターはボブが本気を出せば瞬殺、安心しなさい、戦いは終わったわ。よく頑張ったわn………」


 ベルがそういった瞬間…異様な空気が場を包む。


「この手錠、攻撃ができない呪いが掛けられている…この体では手詰まりか…」


「“この体”では?何を言っているのだ。お前はもう…」


 ルルが言ったその時…


「ルル!!鋼天倒したぞ!!」


「ありがたい…」


 リンネは何故かボブに感謝をし、右手を差し出す。


 スタルリッターはボブに気絶させられているだけだった。


 リンネは手の甲の↻の紋章を輝かせ、


「〈即死の呪い〉、そして[魂]は【輪廻】する!!」


 そのまま息絶えた。


「ボブ!!リンネの心臓が止まったぞ!!」


「鋼天の心臓も止まった!!ベル!!こいつに蘇生魔法を!!死なせてしまっては確保の意味が…」


 いや違う、それは死んだんじゃない。


 “離れろ”


 俺はその言葉を言おうと口を開けた瞬間…


 スタルリッターの腕は動き始め、ボブを吹き飛ばした。


「この体は動きやすくていいな。魔力量も悪くない…」


 その場にいた全員がスタルリッターを見て驚く。


 いや、スタルリッターじゃない。


 父が言っていた


『リンネの固有スキルは“リンネ”だ。』


 俺はこの言葉の意味が解らなかった。


 だが、やっと解った。


 輪廻という単語は、本来「廻るもの・循環するもの」を意味している。


 つまり、こいつの固有スキル輪廻は「輪廻するものを操る」能力なんだ。


 奴が大気やらエネルギーやらを操っていたのはどちらも「循環するもの」だから…


 人の宗教観によっては魂も輪廻するものに入ることがある。


 つまりこいつは今、スタルリッターではなく…


「私はリンネ、多少性格は肉体に引っ張られてしまうが、スタルリッターの肉体は今、私のものになった。」


 スタルリッター…いや、輪廻の手の甲には↻の紋章が刻まれていた。

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