第57話

「ジェナちゃん、どうだった!?」


 思いは伝えた。


 届いたかは分からないけど…


 勢いでキスをしてしまった。


 リンタローさんは私のこと好きじゃないかもしれないのに…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 翌朝、俺は早めに起きて朝ご飯を食べに食堂がある車両に向かった。


 どの料理も最高においしい!!うん!!


 特にこのスクランブルエッグ、卵がプルプルしていておいしい!!


 …………。


 どんなにおいしい物を食べても、昨日の夜の記憶が消えないのはよく分かった。


「リンタロー、ちょっといい?」


 俺が考え事をしているとヴァンが隣の席に座ってきた。


「おう、いいけど…」


「部屋の件について話があるわ。」


「部屋?」


「リンタロー、私と部屋を交換してくれない?」


 こいつは一体何を言っているのだろうか?


「あぁ、じゃあ、今日はお前達がいた部屋で俺とビルトが寝て、俺達がいた部屋でジェナとヴァンが寝るってことか?」


「違うわ。」


「?」


「今日は私とビルトを同じ部屋にしてほしいの。」


「!?!?なんで!?それだと俺ジェナと寝ることになるけど、ジェナとは今気まずい感じに…」


「ジェナには話を通してあるから、お願いね!!それじゃ!!」


「ちょ!おま!勝手に話を済ませるなああ!!」


 なんてこった…


 俺は一体どんな顔してジェナと過ごせばいいんだ?


 気まずい…絶対気まずい…返事ってやつを今考えないといけないってことか?


 俺、こういう経験ないから全く分からないんだけど…


 世の中のカップル、夫婦はみんなこれをうまくやってるんだよな?


 俺は返事は「俺も好き」って言いたいけど、その「俺も好き」をどうやって言えばいいのか分からない。


 そもそも話の切り出し方が分からない。


「もうどうすれば…スクランブルエッグうま…」




 絶対本気で俺とヴァンの部屋を交換なんて言ってないはず。


 だってビルトとヴァンは昨日、ケンカしてたんだし、あっちだって気まずくて同じ部屋にいれないだろう。


__ドン!!


「キャ…」


「す、すいま…せ…ん…」


 ぼーっとしながら歩いてたら部屋から出てくるジェナにぶつかった。


「いえ、こちらこそ、すいません…リンタローさん?そっちのドアは開けないほうが…」


「何言ってんだ、俺の荷物がまだこの部屋の中に…」


 部屋のドアを開けた瞬間、俺の眼に入ったのは…


「「「あ」」」


「……ごゆっくり~…」


 あの2人、いつからこんな関係になったんだ?


「ジェナ、今日はよろしくな!!」


「は、はい、よろしく、お願いします…」


 このドアの先の光景をジェナと見てしまい、気まずさが増したことは言うまでもないだろう。

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