第6章:夏に廻る
治らない治癒魔法
第51話
ふいーーーーーー!!
「自由だあああああああ!!」
大会が終わって、なんだか体が軽くなったみたいだ!!
今日から1週間、両親は王都での勤務、姉は大陸北端のギルドへ職場体験、つまり家には俺だけしかいないってわけさ!!
「あーっはっはっはっはっは!!」
さらにさらに、明日から学校も夏休みに入る!!
さーいこーうだぜぇ~!!
「ジェナ!!おは…ようございます…」
今日のジェナはテンションが低かった。
俺のテンションが異常に高かったこともあり、ジェナのテンションがこの世の終わりかと思うぐらい低く見える。
「あぁ、リンタローさん、おはようございます…」
「どしたの?」
「いえ、昨日疲れてその疲れが取れてないだけです…」
「あぁ、そう…」
まあ、あれだけ頑張ってたのに負けたってのは…
まあ、ショックだよな…
こんな時、どんなことを言えばテンション戻るんだろうか…
「そうだジェナ、明日からどっか泊まりで旅行に行こうぜ。ほら、明日から夏休みだし…」
俺は…何を言ってるのだろうか?
「!?!?」
ジェナは目を丸くして俺を見てきた。
うん。絶対言う言葉間違えた。
よくよく考えたら、年頃の男女がどこかに泊まりに行くってだけで何も起こるはずがないわけで…
「ごめ………」
「行きたいです!!リンタローさんと一緒に!!」
ジェナの表情は元に戻るどころかいつも以上に輝いていた気がした。
放課後、俺達は今夜からどこに行くかを決めるために学校の教室で残って話し合いをしていた。
人は2人増えたが…
「おいリンタロー、俺達を差し置いて2人きりでどっか行くってのは良くないんじゃあないか?」
「そうよ!!私たちはいついかなる時でも固い絆で結ばれているのよ!!」
…………いや空気読めって…
せっかく俺ちょっと責任取る覚悟してたのに…
いや別に下心とかではなく…
「やっぱ、夏の思い出作りと言えば、避暑地、精霊の都、フェアリアだよな~…」
「フェア……リア………」
突然、ジェナの眼から涙があふれてきた。
「馬鹿!おま、ジェナを泣かせるなよ!!」
「そうよ!!」
「えなんで!?なんで俺責められてるの!?」
「あ、そうだ!!湖の都ラークスなんてどうだ?冷たいきれいな水で湖畔浴…素晴らしいと思う、うん!!」
「………慰めようとしてくれたんですね。ありがとうございます。」
ジェナはまだ涙が残っている眼で俺に微笑みかけてそういった。
「きれいな場所で水遊びしたくて夏を楽しみたいなら私の故郷、大陸南端、熱帯雨林の古代都市、ディマリプをお勧めするわ!!四季の概念が無くて、雨季と乾季だけで、今は乾季だからお勧めよ!!エメラルドグリーンの海も広がってて夏の観光にはもってこいの場所だと思うわ!!」
ヴァンはジェナの涙など気にせず、自分の故郷を提案してきた。
うん、普通にいい場所を提案してきたから何とも言えない。
「いいですね、私はディマリプに一票入れます。」
「俺も。」
「俺も…」
「もちろん提案者の私もよ!!」
満場一致でディマリプ観光が決定した。
帰り道、俺達は明日から始まる旅行に心を躍らせていた。
テンションが高すぎて間違えて時間の長い薄暗い畑道から帰っているのがその証拠だ。
「楽しみですね!!リンタローさん!!」
「あぁ、そうだな。」
今はビルトとヴァンと別れ、俺とジェナで帰途に就いていた。
「明日から2週間丸々旅行なんて、夢みたいです!!」
ジェナの無邪気な笑顔が夕日に反射して輝いている。
そんな幸せな時間は、すぐに終わる。
畑道は突然、霧に包まれた。
「初めまして。ヤマダ・リンタローさんと、ジェナ・エール・アルクさんはあなた達の事ですね?」
眼鏡をかけたスーツ姿のスタイル抜群の長髪の女…
身長は俺よりも10cm高い175cmあたりだろうか…
こいつ、確かちょっと前にリンネの体を回収しに来た女だ。
「あんた、再臨軍の輩だろ。」
「…………分かるんですね。」
「言っておくけど、俺達は再臨軍には行かないからな?」
「構いませんよ。今回は勧誘ではなく、死体の回収ですから。」
死体の回収?
まさか、殺すこと前提で話が進んでいる!?
「ちょっと待て、タンマ、もしかして俺達、今から殺される?」
「当り前じゃないですか。治癒魔法〈オーバーヒール〉」
オーバーヒール!?
聞いたことは無いが、なんだかやばい気がする!!
「ジェナ!!構えろ!!こいつ、ヤバイ!!」
「私は再臨軍四天王:医天アーツト、私の主な魔法は身体破壊の治癒魔法です。」
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