第43話
昔、養成学校で生徒会に入った時、一番最初に仲良くなったのはセードだった。
「よろしく!」
「おう!」
僕が副会長、頭がいいセードは会計だった。
お前はいつも明るくて、良い奴だった。
リーダーシップもあったからみんなから「会長」って呼ばれてた。
もちろん、生徒会選挙も会長になることをアピールしていた。
お前が変わったのはその1年後、生徒会長を決めることになった日のこと。
「俺が会長になれないビジョンが浮かばない。」
セードはみんなにそう言ってた。
もちろん会長を狙ってた僕は、少し不穏な空気を読み取っていた。
養成学校の役職の決め方は特殊で、最初に役職なく役員を選挙で決め、その後に話し合って役職を振る。
そんなシステムだった。
「よし、じゃあ会長になりたい奴挙手。」
手をあげたのは僕とセードだった。
それから先生方との面接、直接の話し合い、何をやっても決まらなかった。
「お前たち2人は、ちょっと実力が拮抗していてどっちを会長にするかどうか決めるのが難しい。そこで提案がある。全教師の前でプレゼンをするか、成績とかいろいろ合わせた総合点で決めるか…」
僕はプレゼンが得意だったからチャンスと思い、“プレゼン”と言おうとした。
だが…
「プレ…」
「総合点がいいと思います!やっぱり、信頼している先生方に決めてもらうのが1番納得いく方法なので!」
先を越された。
ここで意見をはっきり言えなかった僕にはリーダーの才は無かったのかもしれない。
結局、総合点で決められることになった。
テストの点数はいつもセードが上だったし、通知表も、セードが上だった。
唯一僕が勝てるのはボランティアと先生の補佐だけだった。
お前の勝ち誇った表情は、きっとこれからも忘れることはできない。
その日の昼、先生から結果を聞かされた。
「生徒会長は、シーズに決定しました。」
「…………。」
僕は素直に喜ぶことはできなかった。
「おぉ、お前どうだった!?」
友達に結果を聞かれた際も…
「会長になったよ。でも…」
あの自信に満ちたお前の表情が、僕に対する嫉妬の表情に変わった瞬間を、僕は見逃さなかった。
それからお前は僕の行動に何かと意見するようになった。
僕へのあたりが強くなった。
生徒会役員の集まりの時、勝手に後輩を家に帰らせたりもしていた。
気に食わないことがあるとグチグチ言うようになった。
まあ、僕もこうして心の中でグチグチ言ってるわけだけど…
「ねえねえ、話に混ぜてよ!!」
「お前がこの話に入ってこれると思ってる?」
「え……?」
きっと自覚はしてないだろう。でも、明らかに、変わってしまった。
きっと、仲が良かった頃のお前には、戻らないよな。
だから今日、お前に勝って、あの頃のお前を取り戻す!!
「もう一度、仲良くしよう!!」
僕は渦輪の中に5本の矢を射る。
本当は、あの日の言葉を謝ってくれれば、あの時、仲間はずれにしたことを謝ってくれればそれでいい。
「こんな冷戦やめよう!!」
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