第36話
私には第3の魔法、疾風魔法がある。
どうやってコントロールすればいいのか分からないけど…
暴走してもいい、ただ、私に力を貸して!!
『それは無理だよ。』
7歳ぐらいの血だらけの少女がそんな言葉を口にした瞬間、私の体は忘れもしない、両親が血を流して死んでいるところにあった。
目の前には潰れた馬車、原形をとどめていない父と潰れて引き延ばされた母の死体が転がっている。
「はっ…うっ、オエ…」
「駄目だよちゃんと見て。君はずっと私から目を背けてきたんだから。」
突然の出来事に吐きそうになると、その少女は私の口を塞いでそんなセリフを吐く。
「あなたは誰?」
「ひどいな。私は君の記憶、心の奥底に忘れ去られてた、君の記憶そのものだ。」
忘れてた?いや、私はこの記憶を思い出さなかった日はない。忘れてはいなかったはず。
「違うよ。私はこの事件が起きる前までの君の記憶。この事件が起きた後、君は無意識に私を見なくなった。火炎魔法、電撃魔法、疾風魔法、全部私が持ってるし、私だけが使いこなせる。」
「でも私は、電撃魔法も火炎魔法も使えて…」
「スキルで無理やり押さえつけてるけど電撃魔法は暴走、火炎魔法は通常とは違う方法で着火してるでしょ?どっちも、私を“
「そんな…」
「君はお父さんとお母さんの事故の日より前の細かい記憶を持っていない。きっと、“貧しいながらも楽しい家庭だった”ってことぐらいしか覚えていないんじゃないかな?」
この子が言っていることは正しい。
私は、両親の鮮明な記憶をほとんど持っていない。
「ひどいよね。君は私の中の一番幸せだった記憶だけを持って新しい部屋に記憶を入れ始めた。どうしてその部屋に私を連れて行ってくれなかったの?ねえ、答えてよ。私はずっと、1人でこの草原で過ごしてきたんだよ!!」
「ごめん…」
私は私の記憶を抱きしめた。
「ごめんね、寂しかったよね…私は、あなたを忘れたことすら忘れて、私だけで幸せになろうとした。きっと許されることじゃない。あなたを今に連れてこれなくてごめん。」
「私を連れて、今を生きてくれる?」
「うん。約束する。」
「今は楽しい?」
「うん。楽しいよ。最近はリンタローさんって人がすごくカッコよくてね……」
私の記憶は涙を残して微笑んだ。
「良かった。未来の私が幸せそうで。私を持って行って。そうすれば…」
『私の持っている3つの魔法、全部使いこなせるから。』
ありがとう。
「お、まだ立ち上がるか。せっかく倒れたから楽にしてやろうと思ったのに…」
これまで私は私を閉じ込めて、無意識に記憶を過去に置き去りにしてきた。
私はもう、
「疾風魔法…」
『ジェナ、疾風魔法の強みは魔力効率の良さだ。お父さんぐらいの魔力でもほら、ジェナを持ち上げるぐらいの風をつくり出せる。凄いだろ!!』
『お父さん凄い!!』
私を忘れたりしない!!
「〈ハリケーン〉!!」
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