第35話

__ガガガガガガガガ!


 ルイと遭遇した瞬間、魔法が降り注ぐ音が結界の反対側から聞こえてくる。


 リンタローさんは大丈夫だろうか?


「身の程をわきまえない人間は嫌いなんでね。ここで死んでもらおうか。まあ、外で生き返れるんだけども…」


「〈アーク・イグニッション〉!!〈フレイム・ボンバ〉!!」


「!?」


 斧に火をつけ、火炎魔法の魔力を大量に流し一気に爆破する。


__ドガァン!!


「なんだ、今のは…斧の斬撃が爆ぜた!?いや、昔からの魔法暴走体質がたまたま当たっただけか…お前の火炎魔法は暴走時以外は人肌レベルの温度しか出ないはず…」


「〈フレイム・スラッシュ〉!!」


 やっぱり、一度着火して少量の魔力を流し続けば炎は消えない。


「やってくれたな!!いいだろう、俺の剣術をもってお前に引導を渡してやる。」


「望むところです。」


 ルイは刀の柄に手を置き、抜刀の構えを見せる。


「強化斬撃抜刀〈鎌居太刀〉!!」


「〈アーク・アックス〉!!」


 互いに不発…


「忘れたか?俺の特技、呪文斬撃〈スラッシュ・ニードル〉!!」


 不意打ち、針状の斬撃が飛んでくる。


「〈刺突〉!!」


 まずい、近距離戦に持ち込まれた!


 近距離で戦いながら斬撃魔法を詠唱で飛ばされる。


 避けながらの近距離戦、圧倒的に私が不利。


 どうすれば、どうすれば!!


「火炎魔法〈ウェアー・フレイム〉!!」


 私は炎を纏い、斧を振りかざす。


「熱っ!!なるほど、お前、初撃の時の炎をずっと斧に纏わせ続けてるのは火炎魔法の温度を下げないためか!!なら、弱点は!!」


 刹那、水が斬撃となって飛んでくる。


 斧で斬撃を受け止めたが、水の斬撃は形を崩し、私は思い切り水をかぶった。


 水流魔法?いや、ルイは斬撃魔法しか習得していないはず。


「俺が他の魔法を使ってるの、びっくりしただろ?テング村の腕のいい職人に作らせた魔法がこもった刀の鍔、これを自分の刀につけるだけで様々な魔法が撃てるって仕組みだ。」


 そういって自慢げに十束の剣ではない刀の鍔を青いものから緑の鍔に変える。


「これで火炎を出すときはまた着火からだ。」


 おそらく、青い鍔は水、そして今つけている緑の鍔は…


「〈疾風斬撃〉!!」


 疾風魔法…


「やっぱ風が一番斬撃と相性が良いな。水は繊細な魔力操作が必要だから嫌いだ。」


「〈アーク・イグニッション〉!!………火が!」


 点かない…


「さて、ここからどうするのかな?火炎魔法は水のせいで使えない。電撃魔法という手もあるが、さっきの火炎魔法に魔力を使い過ぎたな。斧に乗せるほどの電撃を放てない。あれ?お前、もう詰んでるじゃないか!!」


 そんな…


「あーあ、正直、もう少し遊べると思ったんだが…」


 負けられない、わがままを聞いてもらったんだ。負けてしまったらパーティーメンバーのみんなに合わせる顔がない!!


「電撃魔法〈エレキ…」


__バチバチバチ!!


 魔法が自分に帰ってくる!?


「あー、真水は絶縁体だからな。電撃魔法、斧に乗せるどころか完全に封じられたのか。さあどうする?」


 私には第3の魔法、疾風魔法がある。


 どうやってコントロールすればいいのか分からないけど…


 暴走してもいい、ただ、私に力を貸して!!


『それは無理だよ。』

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