選抜戦第1回戦・置き去りの記憶

第33話

 覇王決定戦選抜戦当日


「やばいやばいやばい!!緊張するうううう!!」


「落ち着けヴァン、ってか、お前が緊張するの意外だな。」


「わ、わわわわわ、わら、わたしは…つつつつつ強い…です。勝てる、ハズ…」


「お前も落ち着け。大丈夫だ。」


「へっ、今更緊張かよ。」


「お前足震えてるぞ?」


「黙れ。石投げるぞ。」


 みんな緊張している。


 実は俺も緊張している。


「やあ、おはよう!!リンタローパーティー!!はい!差し入れ!!」


 そんな俺達のもとに生徒会長シーズがやってきた。


「お互い、全力を尽くそう!!君たちは…第6試合か!!僕は第9試合!!それまで一緒に試合観戦してようぜ!!」


 なんというか…


 明るい。


 いや眩しい。


「何このめっちゃ喋る人…」


「変人か?お前、あんなのと知り合いだったのか?」


「聞こえてるよー。」


「ばか!!あいつは生徒会長だよ!!」


「………あー!!あの生徒会選挙で購買呼ぶとか言って何もできなかったあの…」


「悪かったね。こっちにだって事情があるんだ。」


 生徒会長の表情が少し暗くなった。


「ほら、始まる。」


 決闘結界の外にある観客席


 結界内の様子は直接は見ることはできないが、記憶魔法の結晶を使った魔導機械によって中の様子を覗くことができる。


 ちなみに、この魔導機械はうちの父が開発したものらしく、“魔導VR”とかそんな名前だったと思う。


「〔今年も始まりました!!覇王決定戦大陸西部選抜戦!〕」


 実況の声が会場内に響き、観客の歓喜の声が会場を支配する。


「〔前年度の覇王の称号獲得者はこの西部選抜戦優勝者ですが、今年はグルメにハマりすぎたため出場できないとのことです!!〕」


 前年度の優勝者何やってんだよ。


「〔さて、では早速始めていきましょう!!記念すべき第1回戦第1試合、北の方角、冒険者養成学校より、ケンザキパーティー!!人数は4人です!!〕」


「「「「うおおおおおおお!!」」」」


「〔南の方角、西部魔導士学校より、エレメンタルズ!!こちらは5人、しかし人数だけが場を制するわけではないのがこの大会、第1試合の行方はどうなるのか!?運命のゴングが今、打ち鳴らされる!!〕」


__カーン!!




「これは…凄いな…」


 時は過ぎ第4試合も終盤に差し掛かろうという頃…


「サイダー、スポドリ、コーラはいかがですか~?」


 父が変なものを売っていた。


「親父、いい加減変な飲み物を売るのをやめてくれよ…」


「おい、変な飲み物とは聞き捨てならんな。ここにあるジュースは全て俺の故郷で重宝されてた飲み物だぞ?何とかこの味を再現しようとこれまでずっと研究してたんだ!王宮に持っていったら好評だったんだぞ?」


「ちなみにその研究費は?」


「もちろん勇者権限で…」


 そんなことに勇者権限使うなよ…


「そうだ、お前たちはもうそろそろ準備だろ?このスポドリ持ってけよ。喉乾いたときに飲むと最高にうまいぞ?」


「いや、要らない…」


「私欲しい!!」


 “すぽどり”とか言う謎の飲み物を欲しがったのはヴァンだった。


「サイダーとかコーラとか炭酸系は運動前に飲むのは良くないからな。あ、炭酸抜きコーラなら運動前に良いけど飲むか?」


「いやだから飲まんて…」


 “さいだー?”、“こーら?”、“たんさんけい?”何言ってんだこの人は…


「まあ、スポドリは水筒ごと持っておけ。お前ら4人には無料でやる。絶対役に立つから。」


「………分かった。」


「飲み終わったコップは?」


「あぁ、こっちで処理するよ。頂戴?………【魔力変換】!!」


 なんというかこの人は…


 自分の能力を色々無駄遣いしてるような気がする。


「次、養成学校:リンタローパーティーの皆さん準備お願いします!!」


「さて、行くか。」

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