第28話
「あなたがここにいるってことは、シュワールは死んだのね?」
「いや死んでない、気絶させた。」
「なんでもいいわ。あいつは所詮、四天王の中でも最弱…戦力にならないわ。」
「そうか。」
俺は呪いが嫌いだ。なぜなら俺の家族は呪いで死んだからだ。
「あなた、強いわね。単純な肉弾戦では誰も勝てないでしょう?でも、私のようなタイプとは相性悪いんじゃないかしら?」
「さあな、呪いというのも所詮は魔力の塊をぶつける作業に過ぎない。ならば、それを避けるまで!!」
—————
「なんで…!?ここまで強いの…!?」
「筋肉のおかげだ。」
「ふざけないで…あなた、呪い全く効かなかったじゃない何らかの…」
「うむ、俺は生まれつき呪いが効きにくい体質だからな。あとは毎日の筋トレを怠っていないからか…」
「なん、なの?このバケモノ…」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「リンタロー、一応これ以上呪いが進行しないように処置したけど、解呪はできないわ。」
「そんな…」
ベンチでジェナの治療を待っているとベルが俺に声をかける。
「その、死の呪いみたいな強力な呪いは普通に解呪魔法をかけるだけじゃ解呪できないのよ。」
「じゃあどうすれば!!」
「あなたが頑張るしかないわ。」
ジェナの命のためなら…
「何をすればジェナの命は助かるんだ。」
「起きるまで手を握ってなさい。」
話によると、呪いは肉体に魔力をぶつけることで対象の魔力に異常を起こし、魔力の異常により精神が混乱することで肉体に異常をきたす術らしい。
解呪魔法はもともと精神を落ち着かせる魔法ということで“平安魔法”と呼ばれており、それがたまたま呪いを解く作用があったことから“解呪魔法”として広まっていったんだとか…
「だから解呪魔法で解けない呪いは実際に精神を安定させて解くしかないのよ。」
「一応訊きますが、ベルさんが手を握るのでは…」
俺はジェナの手を握りながら訊いた。
「駄目ね。この子と一番交流のあるリンタローがやらないと精神は落ち着かないわ。ざっと1時間握れば治ると思うわ。」
「まあ、いいですよ。ジェナに死なれると俺も困るし…なんですかその表情は!」
本当に今集中してるんだからふざけないでほしい。
「顔赤いわよ。」
「ちょっと黙って。」
思えば俺、女子の手握るの初めてだ。
ジェナの手、触るとふにゃふにゃしてて、すぐに崩れそう…
でも、指の付け根のところは少し硬くなってる。おそらくマメだろう。努力の証だ。
「女の子の手はそういう触り方しないほうがいいわよ。」
「本当に黙って。」
どうしよう、なんか緊張する。
寝てる女子の手を握るって、なんか、変なことしてる気分だ。
どうしよう、ここに誰もいなかったら一歩踏み出してしまうかもしれない…
刹那、ジェナの指がピクっと動く。
「おいベルさん!!今指動いた!!」
「いい調子ね。そのまま続けて。」
「………さん…」
今度はジェナの口が動く。
「今なんか喋った!!」
「………ローさん…あ#$%&‘………」
なんて?
「精神が安定してきてるわね。そろそろ腕が動く頃よ。私はドアの外で待ってるからね。起きたら教えて。」
何で外…
次の瞬間…
__グイッ!!
「うわっ!!」
ジェナの腕が突然動き出す。
ベルの言っていたことが起きた。
そしてもう一つ、ジェナの腕が動いたことで困ったことになった。
俺の上半身はさっきので引っ張られて現在ジェナに抱きかかえられているような体制になっている。
ベルの行動は正しかったらしい。
こいつ、あのボブの弟子なだけあって抱く力が変に強い…
引き剝がそうにも剥がれない。
「お前、起きてないよな!!」
………………。
寝てる。
顔にジェナの胸が当たって…かつて小さいと思っていた大きなものが顔を覆って…窒息しそう…
けど…俺、これで死んでも後悔しないかもしれない。
ベルのあの反応だともうすぐ起きるのだろうか…
この体制で起きられるといろいろ困るんだが…
「リンタロー、さん?なんで?私は…」
………………。
マジかよ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます