第27話
「リンタロー、俺が来るまで、よく耐えた。ここからは俺に任せろ。」
火災旋風のごとく素早い動きでボブはやってきた。
「ボブさん!ジェナが…死の呪いをかけられて…」
「……死の呪いは俺の聖火魔法ではどうにもならない。知り合いに、というか旧勇者パーティーのメンバーで、腕利きの聖癒士がいる。」
「あなた、7代目勇者パーティーのボブね。」
「ちょっと静かに。そいつは王都の“セレスティア・ハーモニア聖堂”に常駐してるからそこまで転送魔法で送ってもらえ。あと、万が一ジェナが死んだ場合、すぐにその死体から離れろ。お前も呪われるぞ。」
「はい。」
「走れ!!」
「行かせないわ!!」
「〈フレイム・インフェルノ〉!!速く!!」
俺は走って商店街の転送魔法業者のもとへ行った。
「すいません!!急用で、王都のセレスティア・ハーモニア聖堂まで飛ばしてもらえませんか!!」
しかし、転送魔法業者は眉間にしわを寄せ…
「お前、何歳だ?こんな夜遅くに傷まみれのガキが女担いで聖堂まで飛ばせだぁ?そんなこと…」
「今、この町には再臨軍の幹部と思しき女が来てるんです!!その女にこの人が呪われて…」
「再臨軍!?お前知ってるか?」
「知らねえよ…少年、寝ぼけてるんじゃねえのか?もしくは、その傷から見るに喧嘩して頭ぶつけて来たとか…」
「寝ぼけてません!!早く!!一刻を争う事態なんです!!お代は後で払います!!」
「とはいってもねえ、転送業者は後払いさせられないんだよ。転送しちゃったらもう帰ってこないかもしれないし…」
「頼みます!!」
「おいガキ、いい加減にしろ。こっちはあとちょっとで定時なんだ。早く帰らせろ。」
「お願いです!!」
業者はいっこうに俺の話を信じてくれない。
と、その時だった。
「うちの息子が悪いな。だが、ここは俺の願いで通してくれねえか?」
「親父!?何でここに!?」
「あぁ、このガキの親ですか?あなたが何者かは知りませんけど、こっちはもう終業時刻なんで…」
「そうか、これを見せないと分からないか…」
そして父親はおもむろにポッケから青いペンダントを出す。
「そ、それは!?」
ペンダントの表面には青いクリスタルに王家の家紋が彫られており、裏には“7代目勇者:ヤマダ・ケンタロー”と書かれている。
「勇者様!!勇者様が来られた!!急いで、魔法の準備をしろ!!場所は王都のセレスティア・ハーモニア聖堂だ!!」
そのペンダントを見るや否や業者は慌てふためいて転送魔法陣を描く。
「親父、なんで分かったんだ!?」
「ボブだよ。さっき、ボブから気絶した四天王の体を警察に届けるよう頼まれてな、ついでにお前の息子が転送業者に行くだろうから手伝ってやれって伝えられたんだ。」
「伝えられた?」
「デカい炎を文字の形にして空に打ち上げるんだ。それで大体のことは伝わる。」
レべちだ…
「準備完了しました!!」
「よし、リンタロー、行ってこい!!」
「あぁ、行ってくる!!」
「では、お気をつけて!!〈トランスファー〉!!」
俺の視界は白い光に飲まれ、光が消えるとそこは王都の聖堂の目の前だった。
時差のせいでこの辺はまだ夕方だ。
俺はとにかく急いで聖堂のドアを叩いた。
「どうされまし…リンタロー!?と、その彼女!?」
眠そうにドアを開けた女は、俺の姿を見ると驚いた顔でそう言ってきた。
「違います!!ってか、なんで俺の名前…」
「そりゃだって、元同じパーティーメンバーの息子なんだから分かるに決まってるでしょ。で、ここに来たってことは結構やばい状態ってことよね?」
「そうなんです!!俺が担いでるジェナっていう女の子が死の呪いをかけられて…」
「ジェナ!?ボブの弟子じゃない!!死の呪いって、今すぐ準備するわね!!みんな急患!!特大の解呪魔法をかける準備をして!!」
この人が腕利きの聖癒士なのだろうか?
「リンタロー、私はベル・ジリリ・ノイズ、王都楽団の教育係にしてあなたの父親の元パーティーメンバー。今から治療を始めるからそこの椅子で待ってて?」
「はい。」
するとジェナを数人の女性が担いでいき、勢いよく聖堂の門の扉が閉められる。
「心配だ…」
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