第22話
大陸西部選抜戦、校内外関係なく大陸西側の冒険者パーティーが参加する武闘大会。パーティーの人数は1人以上5人以下の範囲までとなっており、この学校では先日の合同実習の結果から参加パーティー5組が決められる。このイベントで3位以内にランクインすれば冬に行われる“覇王決定戦国王杯”という大会に出場する権利を与えられるそうだ。
もちろん、出場権は破棄することができ、もしそうなった場合は4位だったパーティーが出場権を得ることになる。
「えーでは、皆さん、この箱の中から紙を一枚、見ずに引いてください。」
今日はその準備として大会に出場するパーティーのリーダーたちが第1回戦の対戦相手を決めるくじ引きをしていた。
「弱いチームと当たりますように、弱いチームと当たりますように…………」
このくじ引きは、養成学校のパーティーだけでなく、一般ギルドの冒険者パーティー、他校の冒険者パーティーも参加しており、突然優勝候補と当たってしまうこともしばしば…
「リンタローさん、しっかり、手の感触を信じて…」
くじ引きにおいて、下の方に溜まっているものにハズレはない、俺はそれを信じてこれまでおみくじで大吉を当ててきた。
「これだああああああ!!」
この感触、アタリだな。
早速くじを広げるとしよう。
“⑫”
「⑫?じゃあ⑪のパーティーと当たるのか。えぇっと、⑪のパーティーは…」
“冒険者養成学校3年1組:ルイ・ルージュ・ホーリーソードのパーティー”
大外れだ。
以前の交流実習で危うく全滅させられるところだったあのパーティーだ。
前回は偶然洞窟があったからそこに隠れ続けて事なきを得たが、選抜戦の会場はそうもいかない。
選抜戦の会場は大陸西端の魔法使いの村に存在する5大決闘結界の一つ、“ザウベラー”
この決闘結界は一流の魔法使い達が丁寧に作り上げたため、どこの決闘結界よりも正々堂々と戦えるような仕様となっている。
隠れられる場所は木の上や草の茂みだけだ。
正直、勝てるビジョンが浮かばない。
「リンタローさん………」
これ、詰んだな。
まあ、元々激戦区と呼ばれる大陸西部での試合だ、どっちみち強いパーティーと当たって終わってただろう。
そんなことを考えているのが分かってか、ジェナが俺の横に来て声をかける。
「リンタローさん、大丈夫ですよきっと!!そ、その、私たちのパーティーは弱いですが、1人1人の持っている才能は最強クラスじゃないですか!!た、ただそれをうまく使いこなせないだけで、自信を持ってください!!」
「そう、だよな。聖剣を守る一族の娘と、3種の魔法を習得している魔法戦士、勇者の息子に………勇者の友人の息子……だもんな!!」
「そうですよ!!じ、自信をもって挑みましょう!!」
——————
「で、あいつらと戦うことになったと……」
「「はい……」」
ビルトは絶望の眼で俺とジェナを見つめる。
そんな目で見ないでください。つらいです。
「くじだし仕方ないんじゃない?何てったって激戦区だよ?あそこと当たってなくてもまた別の強いパーティーと当たってたよ。」
「ヴァン………」
「わ、私は、大会までの6日間、誰かに修行をつけてもらうのがいいのではないかと………」
え?
「あ、いいね!!私賛成!!」
「「俺反対。」」
さすが昔からの友だ。気分が合う。
「な、なんでですか?だって、このままじゃ………」
「そうだよ!!少しは強くなったほうが身のためだよ!!」
「とは言ってもね………」
「俺らのレベルってそんな簡単に上がるモノじゃないと思うんだ。」
俺達の意見を聞き、ヴァンが口角を上げ言う。
「昨日親から手紙が届いてそこに書いてあったんだけど、私の祖父の弟子が今この町に来てるそうなんだ。その人に修行をつけてもらうのはどう?」
「「絶対ヤダ。」」
「言ったね?どうぞ入ってください!!」
え、いるの!?
刹那、教室のドアが開き、大男が入ってきた。
顔は文科系だが、それ以外の場所の筋肉が恐ろしく発達している。
「あれ?リンタロー君にジェナじゃないか。」
その男は………
「いやあ、こんな運命ってあり得るんだな。」
その男は………ッ!!
「一応、自己紹介をしておこう。」
その男はッッッッッッッッッッッッッッッッ!!
「俺はボブ・ジュート・ジェット、勇者の右腕にして第1回大会から第3回大会まで覇王の座を守り続け、国王より覇王殿堂の称号を貰い、大会を出禁になった男だ。」
「これでも、修行はやらないって言える?」
「「と、とととんでもない!!よ、よよよよよよよ喜んで修行を受けさせてもらいますゥッ!!!!」」
あまりの威圧感に気圧され、俺とビルトは修行を受けることになった。
これはずるいよ………
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