第15話
“フィンリ・エイト・アッシュ”
それは、校内最強の魔獣使いという二つ名を持つ1組最強パーティーのメンバー…
魔獣使いと契約しているモンスターは何度殺されても魔獣使いの手によって生き返ることが可能。そのため、魔獣使いと戦うときは操っている人間を狙うのが賢明だそうだ。
そして、このフィンリという魔獣使いが最強な理由が…
“降伏することを条件に大きくて柔らかい胸を触らせてくれる”
というものだ。
「なかなか卑怯な手口を使うな」と思ったが、男性冒険者はそれを知った上で喜んで触るだろう。
というか不可抗力だ。
なるべく会わないようにしよう。
とはいえ、周りをモンスターに囲まれたこの状況ではどうすることもできない。
相手からこっちに向かってくるかもしれない。
そしたら俺は詰みだ。
どうにかして早くこの状況を脱しなければ…
考えろ…考えろ…
親父ならきっとすぐに解決策が出るのだろう。
「や、初めまして、私はフィンリ・エイト・アッシュ、知ってるとは思うけど魔獣使いだよ。」
俺が悩む中、いつの間にか背後をとられていた。
「君の事はよく知ってるよ。勇者の息子、ヤマダ・リンタロー君。突然だけど、私と契約してくれない?私の胸を触らせてあげるから…」
俺はこの数秒の間に対処法を編み出す。
それは………
「煙幕魔法〈スモーク〉!!」
1対1かつ対人かつ不意打ちでないと効果を発揮しない煙幕魔法。
濃霧魔法というどんな状況でも効果を発揮する魔法もあるが、煙幕魔法は魔力消費量が少なく、魔力がほぼゼロの俺でも使用することができる。
その魔法を発動すると同時に俺は全力で走った。
「め、目が見えない!?え!?ちょ、ちょっと、む、む、胸、触らなくていいの!?せっかく揉めるかもしれないんだよ?」
「あーーー!!うるさいうるさい!!何も聞こえないねーーーーー!!」
魔獣使いが操る魔獣は基本的に主人の命令が来ない限り自分から行動することはない。
まあ、目を塞いだとしても魔獣に命令を出すことはできるのかもしれないが…
「もし、この先君に彼女ができたとして、その人が君の好きなように揉ませてくれる保証はないんだよ!?なんなら触らせてくれないかもしれないじゃん!!」
頑張れ俺えええええ!!
彼女は全力で逃げる俺に聞こえるぐらいの大声で語りかけてくる。
俺の煙幕魔法は意外と持続時間が長いらしい。
いつもの俺なら30秒程度で無くなる煙幕が今は1分保てている。
「ほら!!私だったら自由にしていいから!!なんなら、これで○○○゛○してあげてもいいんだよ!?」
刹那、俺の心は大きく揺らいでしまった。
魔法は心の状態によって発動不能になることがある。
「あ…」
「魔法、切れちゃったね…」
俺は恐怖で背筋が凍る感覚を覚えた。
「スキル発動【
「「「「グルルルルルルル…………バウッ!!」」」」
フィンリの魔獣使いのスキルが発動し、複数体のフェンリルが走ってくる。
しかし、俺が全力で逃げていたおかげでフェンリルが来るまでに数秒かかった。
俺はその数秒で
「地盤魔法〈グラウンド〉!!」
走ってきた狼を泥の沼に嵌めて魔法を解く方法を思いついた。
「バウッバウッ……キャンキャン!!」
「魔法解除!!」
見事俺の作戦に引っ掛かり、その場から動けなくなったフェンリルはその場で吠える以外に何もできない。
あとは本体をどう倒すかだが…
「うちの子たちが怖がっちゃったじゃない!!大丈夫よ~、地盤魔法〈グラウンド〉」
………!?
「あんた、地盤魔法持ってたのか!?」
「まあね、魔獣使いにとっては結構有能な魔法だよ?さて、もう一度…」
やばい、ここでさっきのスキルを発動されたら確実に俺は死ぬ。
ここで俺が死んだらせっかく稼いだパーティーのポイントが全部消えちまう!!
「スキル発動……」
考えろ、考えろ!!
どうしてさっき俺が逃げている時にスキルを使用しなかった?
魔獣使いのスキルには魔獣と視界を共有できるものもあったはずだ。
もしかして魔獣使いのスキルには発動不可能条件が存在する?
まさか視界を塞がれることが発動不可能条件なのか?
一か八か、やるしかない!!
「【従順…」
「氷結魔法〈ブリザード〉!!」
人間の眼は99%が水でできていると言われている。
そう、人間の他のどの部位よりも凍らせやすい部分なのだ。
目が凍れば、激痛で目を開くことができなくなる。
「あああああああああああ!!」
俺は目を凍らされ、悶絶しているフィンリにダガーでとどめを刺した。
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