第10話
「遅いじゃない。今まで何してたのよ。あら、二人とも顔が紅い…」
「あ、紅くなんてねーし!!」
「そ、そそそそそうですよ!!」
ビルトとヴァンの監視の眼をかいくぐり、何とか門の外に出たのだが…
目の前で起こっている戦いを見て俺は思う。
「これ、俺とジェナじゃ無理だ。」
「私もそう思います。」
…………
「逃げる?」
「はい。」
だが、その場から離れようとした瞬間、1人の男がジェナの腕をつかんだ…
「おい!!ここに良い女いるじゃねーか!!」
「えっ?いや、その…」
「おい、こいつ、恥ずかしくて赤面してやらぁ!!」
「処女ですねこれは!」
「や、やぁ、ちょっと!?」
敵はその場でジェナの服に手をかけ、服を破こうと…
「おい、その子から離れろ。」
近くにいた俺の姉が魔法の杖を敵の頭に突きつける。
「10秒以内に離れないと魔法をあなたの頭蓋に向けて撃つ。10、9、」
「わ、分かった、今すぐに…」
「離してください!!電撃魔法〈エレキ〉」
__バリィ!!
その魔法を撃ったのは誰か…
俺?違う
リリン?違う
遠くにいただれか?違う
「で、できた…できました!!私の第二習得魔法、電撃魔法!!〈エレキ〉!!」
__バリバリバリィ!!
彼女は覚醒した。
ドカン、バリバリ、ドカン…
俺の目の前にいるのは電撃魔法を使いこなした魔法戦士…
圧倒的魔力量、7代目勇者パーティーの戦士の男によって鍛え上げられた筋力…
電撃魔法を使えるようになった彼女はまさに雷神そのもの…
俺は彼女が戦っているのをぼーっと見ているほかなかった。
そして数分後、彼女は見事に魔王再臨軍の兵士20人を全員気絶させ、確保したことで今回の騒動はいったん収まるに至る。
あ、あっけなかったな~。
あれ?こういうイベントって、俺に回ってくるものでは?
「あなた様が確保した再臨軍の兵士の情報によって、この町に仕掛けられた全爆弾の解除が完了致しました。よって、ジェナ・エール・アルク様は通常報酬に特別報酬を上乗せして、20万ネイツを差し上げます。ご協力、ありがとうございました。」
翌日、学校は再開し、朝に臨時集会が開かれた。
その集会でジェナは表彰され、学校中で一躍有名になった。
彼女の話によると、今回は偶然第二習得魔法の電撃魔法が覚醒しただけで、第一習得魔法の火炎魔法と第三習得魔法はまだ覚醒していないらしい。
火炎魔法に関しては温度の低い炎しか作れないそうだ。
だが、複数の魔法を習得できる体質の特徴は、コントロールが難しいという点。
魔法の呪文の詠唱はあくまで魔力を安定させるための行為に過ぎない。
魔法の発動自体は呪文を唱えなくてもできてしまう。
「ジェナちゃん凄いね!!ねえねえ、私と文通しようよ!!」
「あ、えぇっと…」
「えー、私も文通したーい!!」
「そ、その…」
「あれ?ジェナちゃんいつもよりも顔が赤くなってる!」
「あ、紅くなってないですよ!!」
__バチバチバチバチ!!
「痛っ!!」
「あ、す、すいません!!私、電撃魔法がまだうまく使えなくて…」
「ううん、大丈夫だよ!気にしないで!」
ジェナは電撃魔法が暴発してしまう体になってしまった。
しかも今朝より悪化してる…
今朝、登校するときはまだ静電気程度の放電しかなかったが、今はもう小さな落雷だ…
このままではジェナがまた孤立するのも時間の問題だろう。
結局、昨日あんなことがあったのに俺とジェナの関係はどちらかがどちらかを意識し始めることもなく、そのまま下校となった。
「今日は大変でした…」
「今日一日、ずっと話しかけられてたもんな。」
「コミュ障の私にはちょっと地獄でした…それに…」
ジェナは少し悲しそうな顔で言った。
「今日はたくさんの人を傷つけてしまいました。」
いつも通りの下校ルートが復活し、商店街も爆破されたところ以外は元通りになっていた。
「ジェナ、ちょっと寄りたいところがあるんだけど。」
「いいですよ。」
商店街のちょうど真ん中あたりにあるお店。
「いらっしゃ…リンタローにジェナじゃないか!!なんか買っていくのか?」
そこは俺の父親が経営している鍛冶屋。
「いや、魔道具を買いに来たんじゃない、一つ、ジェナにスキルを教えてあげてほしいんだ。」
「え!?聞いてないですよ!!」
「確か、親父【魔力効率上昇】ってスキル持ってただろ?」
「あぁ、魔王を倒した後に暇だったから覚えたスキルか。」
スキルの名前を聞いてジェナは質問する。
「あの、そのスキルの効果ってどんなものなのですか?」
「魔法の威力はそのままに、魔力の消費を極限まで抑えるスキルだ。たしか魔法の暴発とかを防げたはず…」
それを聴いた瞬間、ジェナは目を輝かせて言った。
「そ、そのスキルを…わ、私に…教えていただけませんか?」
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