第9話
「う、うぅ、この時間なら誰も入ってこないだろうと踏んで、露天風呂に入っていたのに…男の人にこの体を見られるなんて…私、もうお嫁に行けません…」
予想外だ。
いや待て、本当に待ってくれ…
「なあ、あんた本当にジェナか?」
ジェナ・エール・アルクは、
「そ、そんなマジマジと見ないでください…コンプレックスなんですよ…この体…」
今までこれを隠していたのか…
器用にタオルを巻いて胸を隠してはいるが、それでも分かる体型
「こ、この胸を見て、何か言いたそうな顔ですね。」
昔、父から教わったのだが、先人の残した言葉にこんなものがあるらしい。
“早起きは三文の徳”
これは「朝、早く起きれば何かしらいいことがあるよ」という意味のことわざだ。
「い、言いたいことがあるなら、言ってください!!」
ついに昇った朝日によって体についた水が反射し、彼女の体は光っているように見えた。
「美しい………」
俺の口からとっさに出た言葉は彼女に刺さったらしく、これまで見たこともないほどに燃えるような紅を纏っていた顔は、一瞬で生気を失い、鼻血を出して気絶してしまった。
「……あっぶな…」
気絶し、湯船に沈もうとしていた体を持ち上げ、風呂場の床に引き上げる。
ジェナは、隠れ巨乳だった。
しかもめっちゃ腹筋割れてた。
「あ、あれ、ここは…」
「よっ、おはよう。」
「リンタロー、さん?どうして私はこんなところに寝転んで…」
「シーッ!!」
ジェナが気絶してから起きるまでの数分間、何があったのかを説明しよう。
「おい!ジェナ!!大丈夫か!?起きろ!!」
ジェナは朝風呂にのぼせて倒れこんだ。
その時、
「魔王再臨軍襲来!!魔王再臨軍襲来!!現在出撃できる冒険者及び王都騎士団の皆様、王族直下の兵士団の皆様は至急、門の外へお集まりください!!」
俺は出撃しない。
いや、できないだろ。普通、この状態で…
目の前には同じクラスの隠れ巨乳で腹筋割れてる女子が風呂でのぼせ、体にタオルを巻いたまま倒れている。
………もしかしてこの布めくれば、巨乳を拝めるのか?
あれ?もしかして思いっきり触っても起きないのでは?
ここで好き勝手しても、起きなければ……
ダメだ、これずっと見てたら俺も鼻血出して倒れそうだ…
…じゃなくて、このままこの人を放置していたらなんやかんやいろいろあって死んでしまうかもしれない!!
「リンタローとジェナは?」
運の悪いことにギルドのアナウンスに反応したリリンとビルト、ヴァンが外に出てきた。
「あいつらきっと先に行きやがったんですよ!誰よりも先に金が欲しいから。」
「なるほど、じゃああの2人は今頃先に門の前に集合しているってことだね!!私の狂戦士スキルが火を噴くぞぉ!!」
だが、その後、俺達は門の前にいなかったことがバレたらしく…
「おーい!!お前ら!!出てきやがれ!!」
「ちょっと!!早く出てこないと賞金は私たち2人のものだからね!!」
そして、今に至る。
「なるほど。で、どうして私はお風呂場で倒れたのに脱衣所にいるのですか?」
ぐったりと脱衣所に倒れたままで質問をするジェナ。
寝起きなせいか無防備な状態で俺に話しかけている。
「それは…ほら、濡れたところで寝転ぶのは、気持ち悪いだろ?それに、溺れて死なれても困るし。」
いま、ジェナが寝ているところにはタオルが3枚重ねで敷かれている。
そしてジェナの体には一枚のタオル巻かれている。
「確かにそうですね。ありがとうございます。」
やはり恥ずかしかったのか、ジェナはいつも以上に顔を赤くした。
外からは魔王再臨軍との戦闘中だからか爆発音が鳴り響いている。
周りが敵と戦っているのに俺達だけがこの空間でのんびりしている。
あぁ、なんか、ずっとこのまま時間が止まってくれたらいいのに…
でもきっと、俺達は今、とんでもない罪を犯している。
周りに恨まれないためにも…
「大丈夫か?ジェナ、立てるか?」
「はい、立てま…」
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