第8話
「おーい、男は全員風呂出たぞー、まあ、親父がいないから全員じゃないんだけどな。」
「いやぁ、お前の家の風呂、いい湯心地だったわ~!あれお前の親父さんが作ったってマジ?」
「らしいな。昔、モンスターの討伐報酬で作ったらしい。」
「冒険者やって職人やって、お前の親父さんすげえな。」
「でも、親父、俺とステータスほぼ同じだぞ?それどころか、俺のほうが数値高かったりするし…」
「まじか…じゃあ、親父さんから戦い方を教えてもらえば親父さんよりも………」
「残念ながら、戦い方訊いても教えてもらったことない。どうやって敵と渡り合ってきたのかも話してもらえた記憶がない。唯一教えてもらったのは“銃”の扱い方だけだよ。」
「なにか理由があるんだろうか?」
「知らね、実の息子にも言えないような姑息な手段で戦ってきたんじゃないかと俺は予想してる。」
俺たちがそんな会話をしていると、家の中からヴァンとリリンが飛び出してきた。
「「おっ風呂♪おっ風呂♪露天風呂ーー♪」」
どうやらこの2人は馬が合うらしい。
ジェナがいないのは少し疑問だが……
胸が小さいのを気にしているのだろうか?
胸が小さいのはリリンも同じなんだから気にしなくていいと思う。
俺はジェナの部屋に向かった。
「おーい、男はもう風呂出たぞー。」
ジェナの部屋の前でコンコンとノックをしながらそんなことを言ってみる。
………反応ナシ…
「おい、大丈夫か?生きてるか?」
ノックの音を強くしてもう一度…
………反応ナシ
「リンタロー、これって…」
となりのビルトは何かに気付いたらしい。
「おい!ジェナ!!開けるぞ!!!」
勢い良くドアを開けるとそこには暗い部屋の隅にうずくまって何かをぶつぶつ言っているジェナの姿…
「ダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖いダンジョン怖い」
「トラウマか…」
「リンタロー、なんかあったのか?」
ジェナは先日のダンジョンのクエストでトラウマを植え付けられていたらしい。
俺は魔導照明のスイッチを入れ、部屋を明るくする。
それと同時にジェナは顔を上げ、俺のほうを見る。
「あの、ジェナ、さん?風呂………入って………くださいませんか………?」
思わず敬語で話してしまった。
「リン、タロー、さん?」
声を掛けるとジェナの眼からは涙が…
「私、助かったんですか?」
これは重傷だ。
「助かるも何も、最初からなんもねーよ。」
「わ、私、お嫁に行けない………」
俺はこの一言で大体何があったのかを察した。
あいつら、何やってくれてんだ。
「おいお前ら、話を聴こうじゃないか。」
俺は脱衣所から出てきたリリンとヴァンを問い詰めていた。
「いや違うんだよ?私たちはただ、ジェナちゃんの部屋に入って、一緒にお風呂入ろうって言っただけで…」
ここだけ聴くと特に問題が無いように思えるが…
「続きは?」
「えっと、その…女同士だから良かれと思って、服に手を突っ込んで…2人でジェナちゃんの胸の感触を…」
…………
何と言えばいいのか…
少し気になるが、これ以上聴くと俺が変態ってことになってしまう。
「いやその、ジェナは結構心に傷を負ってたし、一応、謝ったほうがいいんじゃないッすかね…」
多様性とは言うが…
「「はい」」
情報が多くて処理が追い付かない…
翌日
今日は珍しく早く起きた。
まだ日は昇っていない。
「朝風呂でもしてみるか…」
俺は以前からしてみたかったことをすることにした。
——朝風呂、それは、朝、起きた後に入浴するとこと。これをすることによって体が温まり、血液の循環が良くなるという。
血液の循環が良くなると免疫力は向上し、新陳代謝が良くなり、美肌効果、体のむくみが解消されるという。
以前から朝風呂に興味はあったが、俺が起きるのが遅いせいでその夢は叶わなかった。
だが、17年間努力し(嘘)早起きに成功した今、俺は自由なのだ!!
今、まさに太陽が地面から顔を出そうというタイミングで露天風呂に入り、朝日と乾杯をして今日を始めるのだ。
今の俺の朝を邪魔できる奴は存在しない!!
グレープジュースをワイングラスに注ぎ、脱衣所にて服を脱ぐ。
脱いだ服は棚のかごに入れ…
刹那、俺の視界にそれが目に入る。
「な、なんだこれ?」
女性モノのタンクトップが隣のかごに入っていた。
リリンか?
違う、姉はタンクトップを着なくても胸は小さいしこのサイズのタンクトップはぶかぶかで着れないだろう。
ヴァン?
それはない、あいつはタンクトップなんか着てない。着ても効果がない。
ジェナか?
いや、申し訳ないがジェナには隠すほどの胸のサイズが…
ビルトのいたずらか?
あいつならやりかねない。
そうだ、きっとそうだ。
俺はもうすぐ頭が見えそうな太陽に向かってタオルで隠しもせず思いきり露天風呂のドアを開けた。
「な、なな、ななな、なななななんでですかあああああ!?」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
俺の目に映った人物は紛れもなく…
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