第7話
「っというわけで、今日から制限が解除されるまでジェナを家に泊めたいんだけど…」
「ジェナ?あぁ!ボブの弟子の!!そういえば今年リンタローと同じクラスだったな!」
現在、家に帰り、両親とジェナの件について交渉しているのだが…
「わ、私のこと知ってるんですか!?」
「あぁ、もちろんだ。ボブとは20年近く文通してるからな。お前のことはよく聞いていたぞ。遅くなった、自己紹介をしよう!俺はヤマダ・ケンタロー、元冒険者で今は勇者と鍛冶屋を兼業している!」
親父は、俺と似た顔立ちで左足に義足を装着し、右眼に眼帯をつけている。
本人曰はく、魔王との戦いで欠損したそうだ。
続いて、母が自己紹介を始める。
「初めまして、私はヤマダ・リリル、元史上最強のウィザードで、今はお父さん(ケンタロー)と一緒に鍛冶屋をやっています。」
母は父とは反対の眼に眼帯をしており、右足が使えないため松葉杖をついている。
理由としては魔界を滅ぼした魔法を放った時、魔力の大量使用で魔法眼がバクを起こし、魔法眼が宿っていた左眼の視力を失い、右足は動かなくなってしまったということだそうだ。
「ちなみに、母ちゃんの年齢は3はt…むぐう!!」
「私が魔界を破滅させる時に放った魔法、使いますよ?」
「ハイ、スイマセンデシタ…」
俺の両親はジェナの事を知っていた。
そりゃそうか、かつての冒険仲間の弟子だもんな。
「ちなみに、ジェナとリンタローの関係は…」
「母ちゃん!変なこと訊くなよ!」
「り、リンタローさんとは、お、同じパーティーのメンバーで、特別な仲だったりとかでは無いですね。」
「そうですか…ちょっと期待してしまいました。」
……俺の母とジェナの口調が似ているから文字にするとどっちが喋ってるのかが分かりづらい。
「泊めてほしいってことだったな。俺と母さんからはもちろんOKだ。リンタローもOKしていることだし、遠慮せず泊まってくれ!あ、一応先客がいるけど、気にしないでくれ。」
「待って、今先客って言った?」
「俺と母さんは勇者パーティーとして今日の午後から数日間出張でいなくなるけど、自由にしてもらって構わない。」
「おい無視するなよ。先客って言わなかったか?」
「何か問題が起きたら玄関の赤いボタンを押すこと。いいな?じゃあ、行ってきます。」
「おい先客について詳しく!!」
行ってしまった。
先客って誰だ?
そもそもここはホテルじゃないぞ。なんで泊まる人が他にいるんだ。
「ええと、わ、私はどの部屋に行けば……」
俺の家はダンジョンを改装したものだから使ってない部屋が10部屋以上ある。
「俺個人的には奥から2番目の部屋がおすすめだな。年中気温があまり変わらなくて快適なんだ。」
説明しながらその部屋の扉を開ける。
「あれ?帰ってきたのか!しばらく居候させてもらうけど、よろしくな!」
扉を開けると、布団の上で大の字になってゴロゴロしている男の姿が…
「先客ってお前か。ビルト。」
「あぁ、せっかく学校休みなんだし、遊べなくなるのが嫌で来ちまった。」
そんな理由なら帰れよ…
「あのなあ、この家はホテルじゃねーんだよ。家に泊まれなくなったジェナはまだしも、お前、普通に家で生活できるだろ。」
「まあな、でも、ここにいれば遊びには困らねえし、勇者の家だぞ?これほどまでに安心できる場所があるか?いや、無い!!」
「あるだろ!」
「ちなみに、もう1人泊まることになったやつがいるんだが…」
「まさか、俺の知ってる人だよな?」
「あぁ、同じ実習パーティーメンバー、ヴァンだ!!」
その女は、勢い良く人様の家の部屋のドアを蹴り開け、明るい口調で言った。
「どうも~お邪魔してま~す!」
「お邪魔すんな。そもそもお前、俺とそこまで交流ないだろ!」
すると今度はヴァンの部屋の隣から姉が…
まさか
「私が呼んできました~!!」
呼んでくんなよ………
姉は俺の後ろに隠れたジェナを見るや否や
「あれあれあれ?ジェナちゃんじゃ~ん!!もしかして泊まるの!?いいねぇ~今夜私とヴァンちゃんと3人でシようよ!」
「いいねえリリン姉!!ジェナのおっp」
「え、えええ、遠慮しますうううううう…」
ジェナは姉とは一番離れた部屋を選んでそこに駆け込んでいった。
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