第4話
あれから数時間後、俺達は最後のゴーレムを捕まえ、学校帰りにジェナと商店街を歩いていた。
「ほ、本当に奢ってくれるんですか?」
「あぁ、まあ、これからパーティーメンバーとしてジェナの魔力の体質について知っておきたいし、っていうか、知っておかないと後々面倒な気がしてな…」
本人曰はくジェナの魔力はいまだに制御できないらしく、それには彼女の特殊な体質が関係しているという
そんな話を実習中に暴露されたもんだから帰りにビルトとヴァンも含めた4人で何か食いながら詳しく聞こうと思ったのだが…
ヴァンは俺の撃った麻酔針でずっと寝ており、そのまま家に運ばれていった。
ビルトは帰りに商店街のパン屋に用事があるからと言って颯爽と帰ってしまった。
実習時間中に割引券を渡したからだろうか…
ちなみに、そのパン屋は美男美女の姉弟が経営しているそうな…
そして今、パン屋の前を通っているのだが…
「ふふっ、さすがだね○○君!」
ビルトがいると思ったパン屋から聞き覚えのある女の声がする。
しかも話し相手はイケメンときた。
俺はそのパン屋に入り、聞き覚えのある声の主の背後をとった。
「姉ちゃん、何やってんの?逆ナン?」
「ひああああああああ!!なんでリンタローがここに!?今日は実習でしょ!?しかも達成するまで帰れないってパターンの!!」
声の主は俺の姉、リリンだった。
姉とはいえ、双子だから学年は同じなんだけども…
「姉ちゃん、今何時だと思ってんの?」
「え、さっき学校を出てきたから夕方4時…」
「夜9時だよ。」
「5時間経ってんの!?ごめんね!○○君!!また明日!!パン買いに行くからね!!」
「は、はい、また、明日…」
姉と話していた自分に自信なさげなイケメンは頬を赤らめて手を振っていた。
………姉はイケメンに目がない。
店内を見渡してみるが、ビルトの姿はない。
さすがに帰ったか…
俺はそれだけ確認するとジェナの方を向いて…
「ひゃぁ!!な、ななな、なんですか!?」
「あれ?君、可愛いね!!リンタローの彼女さん?いやぁ~うちの弟もついにか~!!」
「あ、いえッ…その…わたっ、私は…」
俺が振り向いた瞬間に姉はジェナから一歩下がり、手を後ろに組む。
お前今何やったんだよ…
………姉は美少女にも目がない。
「いやあ、こんな夜遅くにリンタローと帰ってるってことは~、もしかしてリンタローと体を…」
「んなことしねえよ姉ちゃん!そもそも彼女でもないし、ただのパーティーメンバー、パーティーメンバーだから互いの事もよく知らないとだろ?」
「でも、他のパーティーメンバーが…」
「1人は実習中に気絶(俺の麻酔銃で眠ら)してそのまま家に直帰、もう1人は逃げた。」
「ふーん、で、こんな夜遅くに2人きりで、遊びに行くと」
「違う、飯食いに行くだけ。」
相変わらず面倒くせえ…
「なんだ、恋愛系じゃないのか…リンタロー、耳貸しなさい。」
姉は俺の耳に直接…
「いつも言ってるけど、女の子とヤるときはちゃんと避妊魔法のかかった魔導機械を…」
「だから俺はまだやらねえよ!!童貞だし、彼女もいない人間にそんなこと毎日言ってくんな!」
「はいはい、じゃ、楽しんでね。」
…………。
「ご、ごめんな…あいつ、顔が良い人を見るといつもああなるんだよ…」
「お、お嫁に行けない…」
………リリンはジェナに一体ナニをしたんだか…
その後、俺とリリンは商店街の飲食店に入り、食事を始めた。
「じゃあ早速、ジェナの魔力について教えてもらおうか。」
俺はカウンター席でジェナの隣に座って話を聴くことにした。
「はい、まず、この世界の住人は通常、リンタローさんのように固有スキルが絡まない限り自身の体で習得できる魔法は1つに限られるということは知っていますね?」
この世界の魔法学の基本だ。
「ですが、稀に固有スキルを持たず、複数の魔法を習得できる特異体質を持つ人間が生まれるって、ご存知ですか?」
「あぁ、まあ、そのくらいは…」
「私はその体質を持っているんです。」
「え、そうなの!?」
「はい。ただその体質にはデメリットがあって、魔力の制御が非常に難しいんです。」
なるほど、初耳だ…
「自己紹介の時に私の職業について話しましたよね?」
確か、この人の職業って…
「私の職業は魔法戦士です。ですが、ほとんど魔法は使えません。なので私は、今から5年ほど前、ボブさんという戦士に弟子として体術を教わりに行きました。」
ボブ…ボブって確か勇者の相棒の戦士だよな?俺の父親の相棒、弟子いたんか…
「ですが結局、どれだけ強くなっても、私が臆病なばかりにその体術を活かせる日は来ませんでした。」
「それでその体術を活かせるようになるためにこの学校に入ったと…」
「まあ、何も変わりませんでしたが…」
ジェナは複数の魔法を習得できる体質のせいで魔力操作が常人の数倍難しく、魔法が出たり出なかったりする。
だが、その体質を克服すれば膨大な魔力量と3つの魔法を操れる最強の魔法使いになれる。
彼女はその夢をあきらめきれず、勇者の相棒に弟子入りして完璧な体術を身に着け、魔法使いと戦士の中間職と呼ばれる魔法戦士になった。
「師匠曰はく、魔法だけを極めても体術は上達しないけど、体術を極めれば魔力操作技術も比例して上達するらしいんです。」
彼女は静かに俺を見つめ、口を開く。
「私は必ず、卒業までに体術の極みの域に達して自由に魔力を操作できるようになります。なので、それまで、その…戦闘中は、わ、わた、私を、守ってくれませんか?…………す、すいません、私なんかがこんなお願いしちゃって…戦えない戦士なんて、守ろうって気になれませんよね…ごめんなさい…」
………なんだろう、この感じ…
「ごめんな、俺も守られる側の人間だからジェナを守ることはできない。でも一緒に強くなることならできるだろ?俺達、才能持ってるけど戦えない者同士、頑張ろうぜ!」
気が付けば俺は、柄にもないことを口走っていた。
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