第25話 セレナの悩み
今日はパーティーでの活動は休みだがセレナにギルドまで来てほしいと言われている。
「少し遅くなってしまったな」
「ううん、あたしが早かっただけ」
何も言わず先を歩くセレナにひたすらついてギルドを歩いていく。
「トレーニングか?」
「半分正解。ちょっと……相談したいこともあるのよね」
「相談?」
「着いてから話す」
前にヴィオラと来た剣術トレーニングではなく魔法のトレーニングをするところまで移動してきた。
そろそろセレナも相談の内容を明かしてくれるだろう。
「じゃあさっき言った相談、乗ってくれるかしら?」
「ここまで来て乗らない方がおかしいだろ」
「ダリウスは薄々気づいてるかもしれないけど、私のエーテルマギアである引力と斥力って同時に発動できないのよ」
「2種類だけなら許容範囲じゃないのか?」
人間の脳の構造上、別々の魔法を同時に発動できるのは2種類までとなっている。
引力と斥力で2種類に収まっているから使えないはずはないのだが、なぜだろうか。
「私もなんで同時に使えないのか分からないよね。それで仕方なくあんたを頼ることにしたの」
「……これはただの予想なんだが、真逆の効果を持つ2つの魔法を同時に発動するからイメージが難しい……とかじゃないか?」
魔法の発動に必要なのは本人の技量、そして魔法を発動する強いイメージ。
どちらかが欠けると魔法は成立しない。
「イメージね。試してみるわ」
「俺も手伝おう。セレナが納得するまでいくらでもサポートする」
「あんたってやつはほんと……」
「ほら始めるぞ」
セレナの少し前に俺のエーテルマギアの影を出し引力と斥力の影響が目に見えるようにした。
引力が起こればこの影が引っ張られ、斥力が起これば影は弾かれる。
それからは時間が過ぎていくことも忘れ、セレナが明確なイメージを持てるようにサポートを続けた。
そうして1時間以上が経過したその時。
「あっ、できた! 今できたわ!」
確実にセレナの前方で引力と斥力が同時に発生し、影が2つの真逆の力を2方向から受けたことによりバラバラに消滅した。
「やったなセレナ」
「ありがとう。おかげで悩みが消えたわ」
ギルドから出てやっと家に帰る時間がやってきた。
「また今度お礼するわね」
「必要ない。仲間の悩みを解決するのはパーティリーダーとして、それ以前に仲間として当然のことだからな」
「あんたって冷酷そうなのに優しいところあるわよね」
「冷酷そうに見えていたのか」
「……ごめん」
「それにしても、セレナは色々努力していて素晴らしいな」
「素晴らしい……!? ……も、もうっ、あんたはすぐそういうこと言う! わたしはこっちだからまた明日!」
「……? ああ、また明日」
セレナは顔を真っ赤にしたまま勢いで走っていった。
俺が何か気にさわるようなことでもしたのだろうか。
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