第20話 オブリビオン
「ねえねえダリウス。今日はどんなクエストにする?」
先ほど飛び級でBランクに上がったので受けられるクエストも一気に増えた。
戦闘系のクエストが増えるのを喜んでいるのはヴィオラだけではない、俺も同意見だ。
「あのー、ダリウスさんのパーティーですか?」
「ん、何か用ですか?」
話しかけてきたのは少し癖のついたラベンダーの長髪を後ろでまとめた女性。服装からしてフィーナと同じ受付嬢なのだろう。
「私はマーニィ。いつもお世話になってるフィーナの先輩的な立ち位置です」
確かに立ち姿や雰囲気でフィーナよりも大人びたイメージを感じる。
「中央魔法協会からあなた方へ伝えたいことがあるそうなので後でギルド奥の本部に寄ってみてくださいね」
このタイミングということはその伝えたいことはランクアップしたことによってのものなのだろう。
少し期待が湧いてくる。
「伝えたいことってなんだろうね」
「さあな、全く見当がつかない」
「極秘任務とか?」
「Bランクなりたてのあたしたちにそんなことわざわざ呼び出してまで依頼するかしら」
「どうせ俺たちで答えはでない。今から行ってみるか」
「だね」
ギルド内の魔法協会本部は司令塔のような役割を果たしているギルドの
「ダリウスさん御一行ですね。お待ちしておりました」
俺たちを迎えたのは厳格なイメージを感じさせる眼鏡とスーツを身につけた女性だった。
「どのような用件で呼んだのか説明していただけますか?」
「私の口からはできません。それについては中で話をしましょう」
女性に案内され会議室のような場所に通された。
そこには3人の男女が待ち受けていた。
「それでは私はこれで」
「はい、案内ありがとうございました」
さっきの案内をしてくれた女性は一礼して部屋を出て行った。
「どうぞお座りください」
緊張した雰囲気がこの部屋に漂っている。
これから伝えられるのは相当重要なことなのだろう。
「では今回来てもらった理由を話そう」
「はい、お願いします」
話し始めたのはガタイのいい髭を生やしたおじさん。
真ん中の知的な印象を持つ男が話すと思っていたのでいやお前が話すんかい! と心のなかでツッコミを入れておく。
「オブリビオンという組織の壊滅に協力してもらいたい」
「オブリビオン?」
初めて聞く組織の名前だ。3人からも反応が無いのでおそらく3人も初耳なのだろう。
「水面下で少しずつ勢力を拡大している謎の多い組織だ。既にこのアルカディアの市民にもその構成員が紛れ込んでいることが予想されている」
「……恐ろしいね、ダリウス」
「構成員の数や戦力など、分かっていることはあるんですか?」
ヴィオラが俺も疑問に思っていたことを質問してくれた。
「それもほとんど掴めていない。だからこそBランクの君たちにこの話を伝えるんだ」
「ん? 今日Bランクになったばかりですが」
「Sランクからの推薦を受けて異例の飛び級でBランクになった君たちの優秀さを買ってのことだ」
「なるほど」
「それで、君たちはこの話を受けてくれるか?」
「……」
3人の方をチラリと確認すると3人とも覚悟を決めた表情で頷いた。
ならば迷う必要は無い。
「分かりました。その話、受けましょう」
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