第16話 グリム・ディザスター

 今日はセレナと2人でカフェにいる。

今日も午後からの活動ということでこれから1時間後の3時に集合だ。


「ダリウスはなんで魔導師になろうと思ったわけ?」

「志望動機か。まあ、なんというか、単純に魔法が好きだったからだ」

「ふーん」

「何か高尚こうしょうな理由があると期待していたのか?」

「予想通りだなって思って」


「そういうセレナの動機は何なんだ?」

「あたし? あたしはエーテルマギアに恵まれてたからね」

「天職ということか」

「そういうこと」


 不意に窓の外を見たセレナの表情が凍りついた。

「あれ、見て」

「ん?」

セレナに言われた通り窓の外を見てみると空に大きな次元の裂け目が発生していた。


「もしかしてグリム・ディザスター発生中!?」

「急ぐぞ」


 グリム・ディザスターとはグリムの大群がこちらの世界に押し寄せてくる現象のことを言う。

それがこのアルカディアで発生したとのことだ。


 これほどの規模の裂け目が発生した場合、こちらの世界に流れてくるグリムの数は1万を優に越えるだろう。


「向こうに行けばアリスたちと合流できるだろう。とにかく急ぐぞ」




 疾風で移動を続け、グリムたちが大量に現れている場所に到着した。

「まずいな。ここまで被害が広がっている」


「ダリウス~」


 遠くから俺の名前を呼びながら移動してきたのはアリスとヴィオラだった。


「なんとか合流はできたな。俺たちも戦闘を開始するぞ」


 火属性魔法、火炎を発動し建物を燃やさないように調整しながら放つ。


 俺は転生してから周りへの被害に気をつけて魔法を使う機会が増えたことで魔法の精密性が大幅に向上した。


 ヴィオラは火炎を纏わせた刀、アリスは規模を抑えた火属性魔法、爆発と風属性魔法、鎌鼬かまいたち、セレナはエーテルマギアの引力と斥力とそれぞれの得意を最大限活かしてグリムの大群に応戦している。




「これ、全然数減ってなくない?」


 アリスの言う通りどれだけ倒しても裂け目からまた新たなグリムたちが降ってくる。


 現状、次元の裂け目を閉じる手段は確立されていない。

通常の小さな裂け目は5分ほどで消滅するがこの規模は消滅に1~2時間はかかるだろう。




 無限に沸いて出ては絶え間なく攻撃してくるグリムの大群と20分ほど戦い続け、ヴィオラにはまだ余裕があるようだがアリスとセレナにはもうそろそろ限界がやってくる。


 グリムの影響はかなり広範囲に広がっており他のパーティーによる援護も望み薄。


 ならば、俺がやる他無いということだな。


 


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