第13話 目的のもの
ヴァルセリア近くの大森林にそびえるまだほとんどの人間が存在を知らないとある遺跡。
そこに2人の男が潜入していた。
片方の大柄の男はスーツケースを持ち、もう片方の小柄で筋肉質な男は手ぶらだ。
「物々しい雰囲気だな」
「この遺跡、元々は監獄として使われてたらしいぜ」
金属でできた部分は錆びきっていて未だに形を保っているのが奇跡と言えるほどだ。
「こんなとこ探索してなんになるってんだよ」
「だがこの仕事だけで金貨40枚だぜ。笑っちまほうど金払いのいい組織だよな」
「世界終焉の回避とかいうよく分からん理由で今の組織を作ったリーダーは一体何者なんだろうな」
「下っ端程度の俺たちが知ることは未来永劫無いだろうな」
「この階段を降りていけば目的のものが見つかるんだったよな?」
「おう、それを回収して俺たちの仕事は終わりだ」
2人は無限に続いているのかと錯覚するほどの螺旋階段を下っていく。
「マジでどこまで続いてんだよこれ」
「黙って降りろ。今俺はそれを考えないようにしてんだよ」
それからは終わりが見えるまで2人とも無言で降り続けた。
「お、やっとこの階段も終わりか」
「ここの設計者はこんな地下深くに一体何を作ったんだ?」
階段が終わりだとぬか喜びした2人を待ち受けていたのはライトで照らしても終わりが見えないほと長い廊下だった。
「……帰るか?」
「流石にここまで来て引き返すのは無いだろ。それに今回は直線の廊下だぜ? 身体強化して走れば一瞬だ」
2人は体に魔力を流し、身体強化を行った。
ここからはライトで前方を照らしながら走る。
「はあっ、はあっ」
「ふぅーー。随分長かったな」
「突き当たりが、はあっ、見えたと思えば曲がり角だし、はあっ、ホントに、キレそうだったぜ……」
今度こそ目的地に到着した2人は衝撃の光景を目にする。
「……お、おい、牢の中を見てみろ」
「あ? どうしたんだよそんなにビビり散らかして」
螺旋階段を下り、長い廊下を走りきった先にあったのは1つの牢屋だった。
だが問題はそこではない。
なんとその牢屋の中には少女が拘束された状態で倒れていたのだった。
「この女まさか生きてんのか?」
「肌を見てみろ」
向こうを向いている上、紫の長い髪に阻まれ顔は一切見えないが、血色のいい肌が髪の隙間から微かに見えていた。
「多分、回収しろって言われた物、これだよな。……今度こそマジで帰るか?」
「いや、よく考えろ。金貨40枚だぞ? 2人で40枚じゃない。1人40枚ずつだ。1ヶ月は余裕でニート生活満喫できるぜ?」
「あー、やればいいんだろ? だったらさっさとやっちまおうぜ」
「よしその意気だ」
牢を魔法で破壊し、中の少女へ恐る恐る手を伸ばす。
片方の男が背中をつついてみる。
何も反応は無かった。
今度はもう1人の男が声をかける。
何も反応は無かった。
「結構顔は良いな」
「そこじゃねえだろ。首のリング見てみろよ」
少女の首に嵌められた銀色のリングは着用者の魔法及び魔力の操作の一切を封じる効果が込められたものだ。
今でも魔法を使う犯罪者などを拘束する際に利用されている。
その上、全身を覆う白い拘束衣が少女の体の自由さえも剥奪している。
「ここまで厳重に管理されてるってことはこの女、ただ者じゃねえよな」
「……まあ、金のためだ。よし、そいつをスーツケースに詰めろ」
「……おう」
その後2人は先ほどの道を戻り遺跡から脱出した。
「よし、あとはそれを指定の場所まで運んで仕事は終わりだな」
「結局、この女は一体何なんだろうな」
「知らねえし知る必要もねえな。組織は目的のものが手に入る。俺たちは大金もらってWin-Win。それでいいだろ」
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